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第47話「『まさか本当に存在したとは…』とか言っていた気が」

 私と高橋さんとで、メッセージに指定されていたネットカフェに入る。

 入口付近にいた店員さんに、声をかけられる。


「あ、いらっしゃいま…」


 まだ慣れないなー、これ。私の顔をよく見た途端、固まり続けるってどうなんだろう。まあ、気絶されるよりはマシだけど。でも、こんなんだったら、高橋さんが会員証見た時の『わーきゃー』の方がよほどいい。

 そういえば、クルーズ船招待客の中で、アラビア語話す人だっけ、初めて会った時に『まさか本当に存在したとは…』とか言っていた気がして、あんまりに失礼な一声だなあ、誤訳かなあ、とマジで悩んだ。


「このメッセージの方に呼ばれてここに来たんですけど。ああ、代理ですけどね」


 憂鬱な過去を思い出しつつ、私が店員さんの様子に戸惑っていると、高橋さんから助けが入った。いい仕事していますね。ちなみに、メッセージはケインである私から転送しておいたものだ。


「…」


 ダメじゃん。

 しかたがないので、見つめ続けられている私から思い切って声をかける。いや、本来そうするべきだったのだが。


「このメッセージの人に会いにきた。私はケインの代理の佐藤春香(さとうはるか)

「…はっ。あ、ああ、はい、はいはい!はいはいはい!ど、どうぞこちらへ!」


 『はい』は1回。



 ネットカフェに併設されている会議スペースに通される。VR会議とは別にリアルでも会議できるようにしたものだ。

 なんだかんだいって、現実で会って話せるなら安心できるということだろう。『上司』さんから田中さんへのチェンジは、会ったその日から不安感が増し続けている気もするが。


 ちなみに、会議スペースまでの間にフルダイブ部屋も見た。FWO本社の設備よりも若干小規模か。

 まあ、ネットカフェとしては比較的大規模で充実していると言えるかな。


 …ん?

 最近、我が黒歴史の筆頭となりつつある『ハルカ』で楽しんでいたVRゲームのポスターがある。

 このネットカフェ、あの運営会社と同じ系列なのだろうか。


「も、申し訳ありません。お待ちの方はだいぶ遅れてこられるそうです」

「どれくらい?」

「一時間、ほどでしょうか」


 うわー、それならFWOで雑魚討伐50匹と読書3冊やって家を出たかったよ。最近ようやく手に入れた、ケインのローブの試着も試したかったのに。一時間ってのは、FWOでは約10時間なんだよ?


「そういえば、クーポンはお持ちですよね?」

「これ?」

「はい。同伴者を含めて5名まで。本日は当店のカプセル型フルダイブ端末が12時間分利用可能です。こちらを御利用になってお待ちいただいては?」


 おお。となれば、やることはただひとつ。カプセル型でFWOをやらせてもらおう。高橋さんも踊り始めた。

 ちなみに、ネットカフェ会員登録は、なんと系列が違うはずのFWOの会員証でも通用した。私のそれは例のダミーだが。

 VRゲーム業界で会員証を共通化しているようだ。ますますギルドっぽい。高橋さんの踊りが勢いを増す。


 しかし、あの本来の会員証兼銀行カード、店頭では出番が皆無に近いな。アレなら支払いから何から含めても1枚で済んで楽なのだが。

 そういえば、『会員証のアバター表示は単なるデザイン』って言ってたな。リーネとしての私の会員証に、相方として知られるケインのアバターも描いていまーす、って設定はダメかな。バカップルかよ。


「じゃあ、2名で1時間、カプセル型で。FWOもできる?」

「はい、利用可能です。それでは、御案内いたします」


 あ、自作ヘッドセットじゃないからどっちかにしかログインできないや。

 万が一ログ見られるとまずいし、リーネだけにするか。あーあ、ケインのローブ姿…。

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