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第45話「それ、剣で攻める時の表情と叫びじゃない」

 予定通り、日本に帰国した。が、予定通り帰宅したわけではなかった。FWO本社での事後処理のため、会社近くのホテルに宿をとって一日対応し、帰宅はその翌日となった。


 不正コードの犯人の情報は、それなりに役立った。それなりに、というのは、私が期待したほどではなかったということだ。FWO運営や警察にはバッチリだったようだが。


「前の2件と関連があるはずなんだけど…」


 実行犯を雇った同業他社まではたどることができ、お縄となっている。だがその会社は、あんな不正行為ができるほどのシステムを構築できるほどの余力はないはずだ。

 不正コードを私なりに(・・・・)解読してみても、『ハルカ』アバター(改)のそれとの類似性が見られる。作者が同じなのではないかと思わせるほどに。


「春香さんは、個別の技術もさることながら、戦術の類にも熟練した専門家のようでもありますねえ。私などよりも、よっぽど会社運営に携わるだけの資質がありますよ」

「ケインとしての私の、スローライフの賜物」

「それだけではないはずですが…。やはりあれですね、VRゲームのやりすぎで春香さんの精神年齢は」


 ちゃ、と田中さんに銃を構える。ホテル近くの店で買った、超最新鋭・超高性能の水鉄砲である。いいでしょ。

 む、海水がもう入っていない。編集班の人達と遊び過ぎたか。



 FWO内にある、街の郊外。


「いいかい?」

「…え、ええ、やって」

「【ストレージアウト】ハルカ・フリューゲル」


 ケインのストレージから、遠隔操作用アバター『ハルカ・フリューゲル』が、ミリーの前に現れる。水鉄…マシンガンではなく、オリジナル仕様の日本刀を構えている。

 リーネとしての私とビリーが、少し離れた場所からふたりの様子を見守る。


「僕のアイテム扱いだし、バトルロイヤル時ほどの動きはできないかもしれない。でも、魔法剣士としての動きはそれなりにできると思うよ。刀も魔力強化されている」

「そ、それで構わないわ。あたしも、今は魔導師だけど、剣を使っているし」


 剣は、リーネのものを渡している。小柄なリーネが使っている普段使いのものではなく、少し大きめの…うあああ、リアル私のリアル討伐が今頃フラッシュしてきたあああ!

 そんな私の心の雄叫びは微塵も反映させないよう、ケインとしての私がカウントダウンを始める。


「じゃあ、いくよ。…3、2、1、始め!」


 『ハルカ』とミリーが走り出し、お互いに向かっていく。『ハルカ』はケインとしての私の制御下ということで、あのふざけた魔王口調を含めた言葉は一切発しない。

 ミリーは、


「うあああああああ!」


 ミリー、それ、剣で攻める時の表情と叫びじゃない。憎っくきGを無我夢中でなんとかしようとしている時の私の様子に似ている。まあ、私の場合は心の中だけだけど。


 こんなことをやっているのは、もちろん、ミリーのトラウマ克服のためである。バトルロイヤル時はリーネが瞬殺して私の黒歴史ひゃっほいを和らげただけだったし。

 ちなみに、この間の中継も当然ミリーは観てしまい、やはりというか、錯乱したようだ。街に戻ってから魚屋で観たらしく、ビリーにすがりつきながらそれはもう…らしい。


 キンッ、カン、シャッ


「はあ、はあ、はあ…だああああ!」


 だから、それは…。



【光と】FWO総合スレPart2254【なれ】


332: 名無しの八百屋

姉御が街の郊外で発狂している件


333: 名無しの野武士

>>332

俺も見た

あれはしかたない


334: 名無しの弓使い

>>333

お前もトラウマ持ちか


335: 名無しの野武士

>>334

まあな

俺もケインに克服してもらおうかな…


336: 名無しの剣士

>>335

戦闘職がケインに頼むと、浮遊魔法特訓メニューがもれなく付いてくるらしい

姉御二重の涙目


337: 名無しの野武士

あ、俺宿題あるんだった

部屋に篭もらないと


338: 名無しの神父

>>337

受諾開始(アクセプト)】ファイア


339: 名無しの弓使い

>>338

おい、マジで反応なくなったぞ



 リーネとしての私がレベル上げのため雑魚魔物をざくざくしている頃、ケインとしての私は、図書館で本を読む。我が攻略とスローライフの正しい姿だが、本はひさしぶりだ。

 映画化の件を含めてリアルの私があれやこれやといろんなことがあったせいもあるが、実のところ、図書館の本のほとんどを読んでしまったというのが大きい。


「現実世界の書物を、普段のFWO内の時間加速で簡単に読めればいいんだけど…」


 電子書籍は、たとえ私が現実世界でお金を出して購入しても、VRゲームに持ち込むとそれは『複製』にあたるらしく、権利関係の都合で読めるまでに時間がかかるらしい。

 紙の本は、当然ながら、電子化する必要がある。読めるのは、ネット上の個人Web小説や百科事典、日記サイト、古い学術論文くらいか。なんともうまくいかないものだ。


『ピロン♪』


 ん?ケイン宛にメッセージが届いた。誰だろう…あれ、この差出人情報…へ?


<アバター宛の御連絡失礼いたします。ケイン・フリューゲル様に、個人用のVRローカルサーバを格安でお譲りいたします。つきましては、こちらのネットカフェでの面会を―――>

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