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第43話「そこはまだ人類の枠組みから外れていないのだよ」

 よし、これでしばらく、というか、システムリソースを食いつぶすまで安泰だろう。

 攻略は不可能になったが、なにせイレギュラーだ。第1回バトルロイヤルの時のように運営に調査・公表してもらって、仕切り直しを…ん?


「どうしたの?ケイン」

「不正コードの残照がある。急いでこれを追跡すれば、犯人を突き止めることができるかもしれない」

「え、そんなことわかるの?でも、それは運営に任せれば…」


 ミリーとそんなことを話していると、田中さんからメッセージが入る。


<状況を確認しました。現時点では最良の対応でしょう>

<不正コードの一部が見つかりました。通信ログが大幅に更新される前に追っていけば、不正コードの送信場所がわかるかもしれません>

<いえ、春香さんの方から、招待客を含む中継を見ていた方々に現場の説明をしてほしいのです。リーネのプレイヤーとして、ケインとしての情報も混ぜて>


 あー、運営から中途半端な説明をすると憶測が飛ぶことになるよなあ。特に、ケインによる対応。

 うーん、でもなー。犯人に逃げられて、また同じことやられるかもしれないからなあ。

 うーん。うーん。うーん。


<田中さん、それではこうしましょう。リーネが、いえ、『私』がそちらに行きます>

<『私』?どういう意味ですか?ログアウトでしたら、既に宿以外でログアウトできるよう特別権限を付与しておりますが>

<わかりました。では、また>


 それだけ聞いた私は、時間がないので、そこでメッセージ通信を切る。


「ミリー、私、ログアウトするから。詳しくは、中継を見て。ケイン、後よろしく(・・・・・・・・・)

ああ、わかった(・・・・・・・・・)

「え?ログアウトしちゃうの?」


 そうして、リーネのアバターは戦闘フィールドから、いや、FWO内から消えた。



「ん…」

「は、春香さん?ログアウトしたのですか?」

「…ああ、田中さん。おはよう、っていうのは、変か」


 クルーズ船の、大型スクリーンが設置されている会場。私がフルダイブのため、今まで横たわっていた場所だ。

 私は、ヘッドセットを付けたまま(・・・・・)立ち上がり、姿勢を整える。


「田中さん、あの第3カメラを使って、この会場の様子も、中継に回して下さい。ケイン周辺の映像との、二分割表示で」

「え、ケイン?しかし、ケインも………ええっ!?」


 戦闘フィールドを映し出している大型スクリーン。

 そこには、ボス討伐に参加していた、リーネ以外のアバターがまだ全員残っていた。

 もちろん(・・・・)ケイン(・・・)のアバターも。


「田中さん、早く。通信ログが追跡しにくくなる」

「え、あ…?あ、は、はい、わかりまし…た」


 そう言って、田中さんが手元の携帯端末でなにやら操作すると、大型スクリーンには、私を真ん中に映し出した画面が左に、ケイン周辺の映像を映し出した画面が右に表示された。


「中継を御覧になっているみなさん、佐藤春香です。今回の事件(・・)について、リーネ・フリューゲルとして現場に居合わせた私より、詳しい状況を説明いたします」


 いやあ、素の姿で記者会見に出ることになると知った時に練習した、喋り方とか立居振舞いがまた役に立ったよ。参考にしたのは、ニュースキャスターのお姉さん。…ないすばでぃだったなあ。


「現在、各国関係企業の方々を招いたクルーズ船内の会場よりお送りしています。このため、翻訳システムに(・・・・・・・)つながった(・・・・・)ヘッドセットを付けたままの姿で失礼いたします」


 これは嘘ではない。FWOには簡易翻訳モジュールがあり、喋った内容を、選択した言語に翻訳して文字表示する機能がある。実際、FWOの画面には英語とアラビア語で表示されている。

 もちろん、ヘッドセットを付けたままの本当の理由は、私とケインの両方を動かす(・・・・・・)ためである。いやあ、この組合せは初めてだなあ。リーネのボス攻略中にケインだけログアウトしてトイレに行ったことはあるんだけど。

 さすがの私も、3体同時(・・・・)は無理である。いくら人外認定されても、そこはまだ人類の枠組みから外れていないのだよ。ドヤァ。


 アホなボケツッコミを頭の片隅に追いやってから、話を続ける私。


「FWO内ではケイン・フリューゲルが事後処理を続けております。彼からも、今回の件の詳細を伝えてもらうため、このような中継体制をとりました。ケイン、追跡を始めて」

『了解』



 ケインとしての私は、まだ戦闘フィールドに残っていた不正コード侵入の記録(ログ)をあらためてチェックし、送信元情報を特定する。


「【支援開始(サポート)】レビテート」


 魔法陣で浮遊魔法を発動し、更に複数の魔法陣を用いて方向を定め、移動を始める。毎度お馴染みレベル1だが、簡単な移動だけならこれで十分だろう。


「わ、浮いた!ケイン、あとでそれ教えてね!」


 あれ?ミリーって浮遊魔法を使えなかったっけ?魔導師なんだから、魔法陣を使わなくても発動できるはずなのに。もったいないなあ、戦闘時にあちこちの方向から攻撃魔法打てるようになるのに。

 そんなヒマを与えないほどリーネがいつも瞬殺してただろうが、という自主ツッコミが聞こえた気がしたが、後で特訓メニューをじっくり考えることにした私、ケインは、送信元情報に向かって飛翔していく。



「…そういうわけでして、不正コードの送信元を早くに突き止め、その先にある、警察に引き渡せるだけの犯人の情報をつかむ必要があります。ケインの事後処理は、この対応が中心となります」


 セキュリティ関係のことだからだろうか、招待客の方々は真剣に見聞きしている。いくつか質問が出るかと思ったが、今は状況を把握しているのに精一杯のせいか、みんな黙っている。


「…と、FWOに侵入したポイントが判明したようですね」


 大型スクリーンを見るふり(・・・・)をしながら、解説を続ける私、佐藤春香(さとうはるか)

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