第22話「案内にかこつけたデート中よ。言わせないで恥ずかしい」
「それなら、私達も『ろーるぷれい』した方がいいのかしら?」
「モデルとなる話はあるからな。どうすればいいか、だいたいわかるが…」
いやあ、やめた方がいいんじゃないかなあ。慣れないとボロが出まくるし、そうなると興ざめするのよね。本人も、周囲も。
「無理はなさらずに。さしあたり、リアル…現実世界での素性がわかるような言葉は極力口にしない方が無難ですね。年齢や職業、性別を含めて」
「そうだな。俺達は、まあ、いろいろやらかしてるから今更というか。なあ、姉貴?」
「どういう意味よ。そりゃあ、掲示板とかでも―――」
ガシャーン!!
ガキッ
パリンッ!!
「や、やめて下さい!」
「うるせえ!言われた通りに出すもの出しやがれ!」
姉弟が頼んでもいない愉快な暴露話をしかけた時、店の外から物が壊れた音と悲鳴、野太い怒鳴り声が聞こえてきた。
「なんだなんだ?」
「向かいの店か?うわ、何暴れてるんだ、あいつら」
「ちょっと、誰かGMコール!」
「俺、やり方知らねー!」
この店の中とすぐ外の道路にいるプレイヤー達が騒ぎ出す。
GMコール…ってことは、プレイヤーが暴れてるのか。魔物とかの演出じゃなくて。
しまった、暴力沙汰だとリーネの脳筋発想がまず湧き出る。
「あたしが行ってくる。GMコールはケインが」
「わかった。気をつけてね、リーネは防御パラメータが低いんだから」
「大丈夫、心配しないで」
こんな時でも自作自演を忘れない、ロールプレイ厨の私。
おっと、急がないと。リーネが走り出す。ケインがGM宛、いや、『上司』宛の方がいいか、コールのためにメニューを操作する。
向かいの店に飛び込んだ、リーネとしての私。店はパン屋だった。作りたての、いろいろなパンが散乱している。ああ、もったいない。
女性ふたりが震えながら床に倒れ、剣や槍を持った男性3人が女性達を恫喝したり、店の中の物を破壊していたりする。
頭上に表示されているマーカーから、女性はNPC、男性はプレイヤーのようだ。後者はPK判定の表示が出ている。
NPC相手だからPKではないはずなのだが、それ相当の判定が出ているということは…規約違反行為か。盗賊NPCとかが店で給仕していたら、それはそれで面白いかもだけど。
「なんだ、てめーは…り、リーネ!?」
「な、なんでこいつが街中にいるんだ!?」
リーネは魔物か何かか。まあ、ロールプレイが成功している証拠でもある。褒め言葉として受け取っておこう。
間違っても『初心者案内にかこつけたデート中よ。言わせないで恥ずかしい』などとリーネは言わない。
なので、
「うるさい。消えて」
剣を一閃して、終了。光となれ。
◇
<そうでしたか…。プレイヤーはこちらで特定し、ペナルティを課しておきます>
<そうして下さい。MMOに慣れていない新規プレイヤーが見たら、やめたくなってしまうでしょうから。まあ、彼らもプレイヤーですが>
<しかし、惜しいことをしました。店内にはカメラが―――>
ぷちっとコールのスイッチを切る、ケインとしての私。そろそろ『上司』さんは素材厨と呼ぶことにしようか。
「あのようなプレイヤーも、いるのね…」
「リアルでできないことを仮想世界でしようとすること自体は悪くはないのですが、ああいう行為は、まずいですね」
「『乱暴者』という、ロールプレイか…」
うん、また心がイタくなってきた。
もちろん、暴力的な行為はしてないよ?ただその、ほら、ちょっと悪ぶった口調をするロールプレイってあるじゃない。中学半ば特有のアレとかアレとか。
人のふり見てなんとやら。あらためて、気をつけよう。
「アドバイスの通り、無理をしたロールプレイはやめることにしよう。そもそも、『チート』は使えないしな」
「そうねー、ここでは『聖女』にも『令嬢』にもなれないでしょうし」
なにそのお約束山盛りの設定。
どんな作品だったんだろう…。あとで聞いてみよ。




