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第13話「魔法剣士:ハルカ」

『ピロン♪』


 また来た…。私はエントリしないって返信したのに。

 第1回バトルロイヤルのエントリは既に締め切られている。メニューやリアル端末を操作してエントリするのではなく、FWO内に特設された受付でエントリする。

 ボス討伐時同様、エントリ場所から既にカメラが撮影していたようだ。そんなに映像素材が欲しいか、運営。


「そもそも、ケイン宛にも催促メッセージ送りつけるってどういうこと…。バトルロイヤルは、いつからスローライフの一貫となったのよ」


 もしかして、高画質PV販売で味をしめたか?なんか、本格的に記録映像を編集して、普通の長編映画を作るとかいう話も出ているらしい。主人公は誰かって?聞かないで。


「今度ばかりは完全無視だ。この手の話で調子に乗って失敗した事例はたくさんあるからね。あれとか、あれとか、あれとか…」


 リアルの自室で数々の黒歴史に思いを馳せ、しばし、うなだれる。

 なんとか気を取り直し、あらためてFWOにログインする。



 会場の建物は、おなじみのコロッセオ型だ。第1エリアに設置しているあたり、急増した初心者プレイヤーの参加も想定しているのだろうか。枯れ木も…いやいやいや。


「ぷはーっ、ビールうめー!ケイン、お前は飲まないのか?」

「あ、ああ。VRでは年齢制限がないとはいえ、お酒は苦手で。リーネもだよね」

「うん」


 とかいうアリバイ工作的な会話をソルトの前で繰り広げるのも忘れない。しかしこの雰囲気、コロッセオというよりは野球場だな。


【全体メッセージ:エントリされたプレイヤーのみなさんを戦闘スペースに転移させます。観客席の皆様は拍手でお迎え下さい】


 公式イベントということで、進行アナウンスが全体メッセージで流れる。観客席には、音声でも響いている。


『わ―――――――――――――――――――!』

『うおおおおお―――――――――――――!』


 拍手よりも歓声の方がすごいな。観客席だけでなく、転移プレイヤー達も雄叫びを上げている。あ、シェリーが杖を振り回している。危ないぞー。


【全体メッセージ:これより第1回、公式バトルロイヤルを始めます。…5、4、3、2、1、スタート!】


「「「「でゃ―――――!!」」」」

「「「「たぁ―――――!!」」」」


 おお、まさしく乱戦状態。剣技ありの魔法ありの道具ありの、なんでもありだ。ひとり、またひとりと、いや、ふたり、三人まとめてもあるか、光の粒になって消えていく。

 そう言えば、リーネとしての私は、対人戦ほとんどやったことないんだよね。ケインにPKしかけたアホは、転移魔法陣で目の前に現れて剣をひと刺し、で終了だったし。


 今回の大会は、単純にバトルロイヤルだけで優勝者まで決めてしまうらしい。プレイヤーが増えたとはいえ、FWOは戦闘職ばかりじゃないからね。参加規模は大きくない。

 生産職は戦闘職と組んで…という、他のゲームではお馴染みの案もあったらしいが、横のつながりはFWOでは少ない。紙装甲のリーネと、低レベル志向のケインのせいで。


 …FWOって、私の活動スタイルに左右されまくってない?

 みんな、あのPVが悪い。まあ、そのうち落ち着くだろう。


「うお、姉貴が十名以上吹き飛ばした!さすが、対人戦に慣れてるヘイト班の姉御、火力とテクニックが違う!」

「「…ヘイト班?」」


 なんか、変な専門用語が出てきた。ヘイトって、魔物とかからの攻撃を受けやすくなるパラメータ値のことだよね?…え、違う?気にしなくていい?うーん。


【全体メッセージ:戦闘プレイヤーが十分の一となりました。これより、スクリーンに残存プレイヤーの一覧を表示します】


 上空に現れた巨大スクリーンにプレイヤー一覧が表示される。時々、主な戦闘シーンも中継される。これは、メニューから選んでも、目の前にウィンドウとして表示できる。

 おお、運営、カメラワークなかなかがんばってるなあ。…やっぱり、そっち方面に金と人材かけてるのだろうか。


「え…な、なんで…!!」


 横にいたソルトが、そんな言葉を発しながら驚愕の顔でスクリーンを見つめ、すぐに、戦闘スペースのとある場所を凝視する。心なしか、手も震えているように見える。


「いきなり、どうし………!?」


 信じられないものを、プレイヤー一覧に、見た。


『魔法剣士:ハルカ』


 そして、ソルトが見ている戦闘スペースの方に顔を向ける。リーネとケイン、ふたりそろって。

 そこには、巫女装束の、凛とした佇まいで日本刀を構えるアバターがいた。


 間違えようがない。最近、とある理由で掘り起こして整理した、私の黒歴史のひとつである『課金女』(by美里)の姿である―――。

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