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第29話「やっぱり私が『コアワールド』を創ったみたい」

2017/10/18 -- 3/15

「ケインのサインがダメなのはなんで?」

「美樹さん、あなたが春香さんからケインのサインをもらったら、どうします?」

「みんなに自慢する!」


 私が中の人と知っててこれかあ。なんなんだろ。


「だって、ケインは世界最大の謎だから!」

「まあ、そういうわけです。春香さんほどではないにしても、世間的にはかなりの脅威と見られています。そして、その正体は誰も知らない」

「FWO内ではサインもらえないしね!」


 いやいやちょっとまった。ああ、FWO内とかのひとつ前。え、なに、私って脅威なの!?


「何を今更…。ただまあ、春香さんの人徳なんでしょうか。脅威と感じるのは、良からぬことを考えている者達に限られます」

渡辺 凛(わたなべりん)は、良からぬことを考えている者筆頭」

「裏事情を知っているからなんでしょうかねえ…。とにかく、多くの者は歓喜と賞賛しかありません。だって、そうでしょう?理想的な形で夢を現実にしてくれるのですから」


 ああ、うん、まあ。

 なんというか、ほとんど成り行きでこなしているだけなんだけどね。


「そうよねー。これが、えっらそーな天才博士とかがえっらそーにとんでもない技術供与をしたら、普通である私達には困惑と恐怖が先に来ちゃうわ。こいつに世界征服されちゃうんじゃないかって!」

「ますます、渡辺 凛が、該当」

「本当に、何があったんでしょう…。私が知っている昔の彼女は、大人しくも真面目で誠実だったのですが」


 それって、あの女が中学生だった頃までの話でしょ?それから20年以上経っているなら、性格が大きく変わっていても不思議じゃない。良くも悪くも。

 ‎…あ、あれ?あの女の昔の雰囲気って、私にそっくりだったんだよね?えと、そ、そうかな?


「真面目よね?春香ちゃん」

「真面目ですね。思慮深いとでもいいますか」

「頭の中で、あれこれ悩んでいるだけ」

「それが真面目ってことなんじゃない!」


 あー、頭の中のわーわーきゃーきゃーを聞いてもそんなこと言えるかな?全部を口に出すつもりはないけど。


「で、たまに口から漏れるのよね、春香ちゃんの頭の中」

「そうですね、今みたいに」


 げふっ。

 それで黒歴史いくつか作っちゃったよね。ケインのヒモ扱いの発端とか。

 ‎って、ちょっと待って。ケインの話してたんでしょ。戻し戻し。


「ああ、そうですね。ケイン自身もかなりの影響力があるんですよ。そして、そのケインのリアルは全くと言っていいほど知られていない。サインの経路をたどって探られるかもしれません」

「だからむしろ、ケインの正体を、公開しろと?」

「ええ。そうすれば、ケインというアバターのサインではなく、春香さんのサインのひとつ、ということになります。同じインパクトでも、アバター同時接続というインパクトに置き換えられます」


 つまりは、私のロールプレイ厨を広く知らしめろと。

 でもなー、他はともかく、鈴木姉弟がなあ。まあ、いつかは話した方がいいんだろうけど。

 なんにしても、渡辺 凛をとっつかまえてからだ。うん。


「実際のところ、その渡辺女史を含めて、世間一般の捉え方としてはこんな感じでしょうか。ケインがFWOそのものを理論化し、リーネである春香さんが『現界』している」

「重力制御だけじゃなく、転移門も実現しちゃったからねー!転移魔法陣とはイメージ違うけど」


 まあ、間違いではないな。ケインとしての私の経験の多くが理論化に結びついているのは確かだ。


「でも、それとは別に話題よね、春香ちゃんとの関係!」

「私との関係?リーネではなく?」

「ここまでケインの素性がわからないと、恋人やら夫婦やらの関係はあくまでFWOの中だけ、と考えている人が多いようですね。そうすると、中の人と春香さんの関係は?ということに」

「女性説が有力になってるね!性別を含めて公開しないから!」


 ああ、そういう話題が出た記者会見があったね。その辺は、なんかあさっての方向に話が移ったみたいだけど。


「私、サブアバターがケインじゃないかって疑われたことがあった」

「高橋さんが、ケイン?」

「まだ『ルーク』消してないから、他の人にはそれ見せて違うよーって言ってるんだけど」


 ああ、なんとなつかしいアバター名が。

 私自身は、今や【運営No.00】としてFWO内にいくつもアバターを作れるし、複数のヘッドセットを合成せずとも単一機能のヘッドセットで複数アバターを同時接続して動かせる。

 思えば、遠くに来たものだ。あの頃に今のようなことができれば…いや、リーネであることも明かしてなかったから高橋さん代理が必要だったんだっけ。


「ですので、事情を知っている私達にとっては、ケインの正体は今のところ春香さんの最後の秘密として隠すべきもの、ということになります」

「火星公社の総裁さん、早く到着しないかしら」


 え、あの女とっつかまえたら即公開するの!?ちょ、ちょっと、心の準備が…。ハルカのことも公開しなきゃいけなくなるから、結構重いんですけど、私には。


「まあ、それは一連の事件が解決した後にゆっくり考えましょう」

「そうねー。あ、ケインと言えば、『コアワールド』の解析はどうする?春香ちゃんが創造したっていうんなら、春香ちゃんの思考パターンだっけ?それを適用すればいいんじゃない?」

「それは、こないだ、終わった」

「「終わった!?」」

「推測通り、だった。未だ思い出せないけど、やっぱり私が、『コアワールド』を、創ったみたい」


 いや、知らせようと思ってたんだよ。後回しになっていただけで。


「そうすると、『コアワールド』は渡辺女史が理論を確立して、春香さんがその理論に基づいて創り出したことになりそうですね。具体的な状況はわかりませんが」

「あの人は、自分で創り出せなかったのかな?『現界』能力あるんでしょ?」


 彼女の現界能力、私とは異なる種類かもしれないのよねえ。あの国にあった転移門も、不自然なくらい小規模だったし。それとも、注ぎ込む『想像力』の違いかな?


「春香ちゃんの一人芝居ならではの創造だったのねえ…」

「一人芝居って」

「じゃあ、ケインの正体を明かしたら、『コアワールド』の更なる拡張も張り切ってお願いね!」


 あう、高橋さんと私のパワーバランスが逆転しそう。やっぱり、隠し通そうかなあ…。

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