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第23話「じゃあもしかして、あの主砲の名付け親も田中さん?」

2017/10/17 - 10/15

 長い長い往路を経て、ようやく月に到着。いや、結局は約1日だけだし、睡眠もリアルで数時間寝てるしで、船内VRシステムにフルダイブしていたのは累計半日ちょっとくらい。とはいえ、10倍加速でVR内6日分ほど。


「なんかもう、地球に帰ってもいいくらいだよな」

「戻る時も同じくらいの生活だしねえ。あれ、何しに来たんだっけ」

「あの宿、FWOだといくらぐらいだっけ?たまには使ってみても…」


 このふたりは…。今回もリアル3時間コースに放り込めば良かったかな、学習システム。


「これはいけそうですねえ。課金に慎重な鈴木姉弟をここまで魅了するとは」

「パッケージにすれば、他の宇宙路線にも販売しやすくなるね!あと、飛行機にも!」

「時間加速も調整が必要ですね。客層と移動時間に応じて…」


 んー、ちょーっと熱を入れ過ぎかなあ。仮想世界技術が引きこもり手段ばかりに使われそう。それ、渡辺 凛(わたなべりん)の発想だよ。悪いことばかりじゃないけどさ。



 パスポートとセキュリティのチェックを受けて、月面宇宙港の到着ロビーに向かう私達一行。

 ‎月面には国際条約で設立された暫定行政府があって、出入国相当の管理をしている。一応、後であの(なにがし)の情報がないか確認しに行こう。


「おお…」

「はー…」


 建物の中から見える、開発中の月面クレーター内の様子と、漆黒の空。そして、その空に浮かぶ、地球。

 ‎これまで夜に見ていた月が、青い星に置き換わったような、そんな印象。それが、ここが地球ではないことを感じさせてくれる。


「これは…!そうですね、実際の月面の様子をそのまま仮想世界として提供するのもアリですね」

「それはもうウチが始めてるよー!」

「あ、ああ、そうですね。FWOの1エリアとしてよりも、独立した仮想世界の方がいいですしね。ううむ…」


 宇宙港内の移動は進み、さて、とりあえず宿泊先かなあと考え始めたところで、先に見える到着ロビーに記者達の集団があった。


「春香さん、お願いします」

「そ、そうね!よろしく!」


 あなた達、それでも組織の長ですか。商品開発ばかりじゃなくて、いい加減こういうのにも慣れて下さいよ。


「FWOの田中さん!今回の件でひとことお願いします!」

「え、私!?」

「御存知ないのですか?火星公社の総裁が、この月面に来られています。あなたとの面会を希望しています!」


 リアルでこの月面に!?重力制御って、まだ火星との移動には使われていないよね?数か月も前に火星を出発したってこと?

 あと、田中さん指名?鈴木のお爺様とかじゃなくて?いや、今回は同行してないけど。あ、もしかして、それで鈴木のお爺様に回答できなかったとか?


「それと、佐藤春香さん!あなたにも!」

「私も、ですか?」

「なんでも『謝罪のため』とのことなのですが、お心当りは?」


 ああ…うん、はい、心当たりあり過ぎデス。でも、あの女本人ならともかく、その祖父が?やっぱり、『コアワールド』のオリジナルは火星にあったのかなあ。まあ、何か話してくれるだろうから、それに期待しよう。



 宿泊先が同じとのことなので、一息ついた後、私と田中さんとで火星公社総裁の部屋を訪ねる。とりあえず、まずは非公式に話をしておきたかったのだ。


「ひさしぶりだね、(みのる)くん。わざわざ、済まないね」

「あ、は、はい、御無沙汰しています、フェルンベル総裁」

「総裁、はよしてくれ。君は何十年経っても変わらないね。真面目というか」


 なごやかに?話し始めたふたり。ちなみに、双方共にネイティブではない英語で会話している。日本語が普通に話せるのはお孫さん…渡辺 凛(わたなべりん)の世代からのようだ。


「君が、私達一族の名前を広めてくれたことには感謝しているよ。もう、ほとんど使われてなくてね。リーネ(・・・)も名乗るのをやめてしまったし」

「い、いえ、ゲームの名前などで恐縮ですが…」

「遠き鐘の音…我らの祖先は、開拓した村の中央に時を知らせる鐘の塔を建て、その鐘の音を聞きながら生活し、発展させていったそうだ」

「そう…聞いたことがあります、彼女に」


 なるほど、それで『フェルンベル(遠き鐘の音を)ワークス(聞いて過ごす)・オンライン』かあ。…なんとなく、運営スタッフの人達の姿を思い出す。

 ん?じゃあもしかして、あの主砲の名付け親も田中さん?巨大ピコピコ光線銃として『現界』させてしまったのはまずかったかなあ。あの時は、そんな能力とかに関係なくノリで作っておいただけなんだよー。


「あの娘も、それを承知で…いや、よそう。これも、時代の流れだろう」

「いえ、そんな…。ですが、その、最近、彼女に再会して、びっくりしました。昔の雰囲気が、まるで…」

「そうなのだよ。私も驚いた。数年前にひさしぶりに再会した時はな」


 ん?なんか、雲行きが怪しくなってきたぞ?身内ですら別人に見えた?


「むしろ…」

「そう、だな…」


 ふたりして、私を見る。なんだよう。そんなに私が昔の『リーネ・フェルンベル』に雰囲気が似てるのかよー。不本意だー。

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