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第13話「我々の手では管理しきれなくなっておりまして…」

2017/10/16 - 2/4

 控室に、高橋さんの声がこだまする。


「春香ちゃああああん、これからVRで特訓してええええ!」

「これは、特訓では、どうにもならない。慣れ」

「なんで春香ちゃんは最初から慣れてるのよおおお!」


 そんなこと言ってもねえ。できてしまうものはしかたがない。

 ロールプレイ厨というのもあるけど、数年前に世界各地のVRゲームを放浪…渡り歩いていた時、いろいろ場数を踏んだのですよ。言語以外にもね。


「うう、田中さんも苦手だって言ってたし…。ねえ、記者会見代わりに」

「『(財)仮想世界総合研究所』はFWOグループ外。私が中心に話すのは変」

「それだって春香ちゃんが中心になって作ったのにー」


 まあ、そうなんだけど。でも、資本というか出資はFWOと電器店チェーン以外にも『ソル・インダストリーズ』からも出してくれたし、立場的にFWOグループの事実上の代表というだけの私はねえ。

 まあ、いいじゃないですか。今回の立ち上げの時だけですよ、『VR研』代表としてのスピーチは。


 というわけで、めでたく高橋さんを財団法人のトップに据えることができた。主に、田中さんの必死のお願いで。残念イケメンの涙目って結構効くよね。まあ、相手が高橋さんだからって話もあるけど。

 財団の主な事業は、『コアワールド』に依存しない汎用ワールドデータの開発および適切な無償配布、そして、仮想世界に関する様々な基礎研究。

 『コアワールド』管理組織が黙ってないんじゃと思うかもだけど、こちらのワールドデータはずっと小規模で、先のダンジョン最下層のような限定的な利用しかできない。


「将来的には、個人VRローカルサーバにデフォルトインストールされて、普及を図る。量産効果でサーバハードウェアが安価になることが期待される…こんな感じ?」

「そうそう」

「『コアワールド』を使った法人システムよりも地味だけど、これはこれでやりがいがあるよね。私がこれまで扱ってきた顧客向けVR関連機器にダイレクトに結びつく感じ?」


 だから起用したんじゃないですか。ケインとしての私との、ワールドデータ共同開発を抜きにしてもね。


「あああ、でも緊張するー。この記者会見が終わっても、しばらくしたら『コアワールド』管理組織との会合もあるんでしょ?ふぐう」


 がんばれ、がんばれ。田中社長と高橋代表のダブルインカムだ!将来安泰だね!



【新展開】FWO総合スレPart4255【財団】


813: 名無しの重騎士

魚屋、美人じゃねえか!


814: 名無しの弓使い

春香様のような整った感じじゃないけど、綺麗だよな

んでもって、ないすばでぃ

田中氏うらやましす


815: 名無しの商人

更にまたひとり、雲の上に…


816: 名無しの魔導師

あたし達はどうすれば…


817: 名無しの八百屋

>>815

>>816

まずはあの辺境エリアなんとかしろよ


818: 名無しの魚屋

みんな、今日は記念に寿司食べ放題にするよ!


819: 名無しの門番

>>818

ありがてえ、ありがてえですあねさん!


820: 名無しの魚屋

>>817

あねさん言うな!



 私と高橋さんとで、『コアワールド』管理組織の幹部陣と会合。管理組織幹部は世界各地に住んでいる研究者の人達だから、VRで会議を進めるしかない。というか、いろんな言語が飛び交うので、独自の翻訳モジュールを併用する必要があるという話が。主に、高橋さんが。

 でまあ、こちらは言ってみれば競合組織を作ったわけだから、あまりいい感情は持たれていないだろう。もちろん、それも織り込み済みだ。適度な棲み分けを模索したいという感じで穏便に進めたい。進められるといいなあ。


 私も高橋さんも、そんな風に覚悟して臨んだんだけど。


「いやあ、そちらから会合を提案していただき感謝しています!当方もぜひ、VR研と密接な関係を築いていきたいものです!」


 アゴがはずれるほど、熱烈な歓迎を受けた。なんだこりゃ。


「え、えっと、こちらとしては、設立早々、あまり談合を疑われたくないのですが…」

「何を仰る。どちらも非営利活動が主体ではないですか。人類にとって有益なら、どんどん協力していくべきでしょう!」

「棲み分けは必要ではないでしょうか?当方で共同開発したワールドデータは、『コアワールド』では賄い切れない、言わば隙間を埋めるような役割を想定しているのですが」


 そして、その棲み分けの中で、『コアワールド』の素性をはっきりさせてもらえれば…と、続けようとしたら、管理組織側がとんでもないことを言い出した。


「…正直に申し上げましょう。当方としては、『コアワールド』管理権限そのものを、VR研にお渡ししても良いほどなのです」


 …なぜ?



 数日後。

 高橋さん涙目の、2度目の記者会見。


「そ、そういう、わけ、でして…こ、『コアワールド』管理組織の代表を、ふ、不肖!はう…私、高橋美樹が、兼任することとなりました…ごふっ」


 静まり返った会見場所で、高橋さんが机に突っ伏す。一拍置いて、記者陣が驚愕のざわめきを奏で続ける。高橋さんの横で哀れみの目を向ける、私、そして、一応出席していた鈴木のお爺様と、電器店チェーンの社長。


 全く、なんてことなの…。

 記者会見では言えない、しかし、受け入れなければならない、あの言葉。


「『コアワールド』は、渡辺 凛(わたなべりん)博士個人より提供されたものだったのです。数々の事件で除名して以降、我々の手では管理しきれなくなっておりまして…」

ちょっとブツ切りな感じですが、これで第三部第一章終了です。本日中に登場人物まとめとSSも投下します。

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