表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
117/150

第12話「ビリーくん、お金をかけるところ間違え過ぎ!」

すみません、急遽予定を変更して、第一章の残り(第12話、第13話、登場人物まとめ、SS)を全て本日中に投稿します。詳細は活動報告で。


2017/10/16 - 1/4

 運営がようやく公式ダンジョンを導入した。ただし、試験運用。

 試験導入先は、ミッキー高橋さんのエリア。初オーナーということもあるけど、


「ほらほら!春香ちゃんが喜んでるんだからちゃっちゃと実装しなさい!」

「きついっすよ、あねさん」

「誰があねさんよ!」


 電器店休職継続中の高橋さんが運営を直接こき使った。もうVR研代表待ったなしじゃないの。


 ダンジョン構成としては、エリアの『コアワールド』データの一部で賄った十数層と、ダンジョンボスのいる最下層。この最下層のみ別のVRサーバで構築し、プレイヤーが転移する仕組みとした。

 なぜかというと、この最下層のみ現実時間進行とし、攻略中継を復活させたいという、『プロモーション』つまりは田中さんの意向があったからだ。気持ちはわかる。FWOならではのCM効果だしね。


「でも、大変だったー。『コアワールド』とは別のワールドデータ作るの。ケインくんと共同でやっても、最下層だけでこんなに手間暇かかるなんて」

「でもそのおかげで、『コアワールド』にはなかった新しい世界構成を簡単に導入できそうですよ。ビリーやミリーが検討していた月面ダンジョンとかね」

「あとは、『コアワールド』と突き合わせての本格解析だっけ?『コアワールド』管理組織との商談が進むね!」


 その仕事は高橋さんにお願いする予定ですよ。田中さんよりよっぽど成果が期待できそう。うふふふ。


「変な悪寒が止まらない…」



 そうしてできた『ミッキーダンジョン(仮)』をリーネパーティで攻略。最下層までの層はさくさくさくっと。


「まあ、あたし達だけじゃなく、ケインもいたらねえ」

「姉貴、俺もいるんだけど…」

「高レベル魔法陣を数個展開しただけで、手持ちがなくなっちゃったじゃないの…」


 ビリーくんがお荷物となってる件。せっかくの高出力魔法陣なんだから、適材適所で使えばいいのに。いくら商人でもさ。これは、ケインとしての私が特訓すべきか?


「なあ、休憩しないか?ダンジョン内セーフエリアでのお茶会というのもオツなもんだぜ!」

「もう、何度も、やった。ビリーくんの、チーズケーキは、もう飽きた」

「先輩、容赦ないっす」


 いや、だって事実だし。こう言ってはなんだけど、ケインとしての私が持ってるクッキーとかマフィンとかの、簡単だけど豊富な種類のラインナップの方がよっぽどお茶会っぽい。飲み物も。

 ビリーくんへの特訓メニューが増加の一途をたどる。もうこうなったら、VR学習を更に1時間追加するべきか。


「しかたがない。今から私が、料理を」

「やめて下さいお願いしますあたしがなんでもしますから」


 さっき討伐したダークウルフ、火あぶりにしたら美味しそうなのに…。



 最下層手前の層にある専用転移魔法陣に到着。ここからいよいよ最下層だ。

 いやー、しかしここまでの討伐で結構稼いだなあ。魔物からの素材だけでなく、お約束の宝箱とかも結構あって。ケインの探知スキルだと、何重もの重ねがけで一通り見つけられるのよね。


「十数層分のお宝がケインによって根こそぎ発見されちまうとは…運営が哀れ」

「ケインが攻略に関わるととんでもないわね…」

「僕としては攻略をしてるつもりはないんだけどねえ。何かを倒しているわけではないし」


 ケインの活動目的はあくまでもスローライフである。情報収集の一環と思ってもらいたいね。


 などと話しながら、最下層に転移されるリーネ&ケインとしての私と、ミリビリ姉弟。


「これは…」

「わあ…」

「地底湖、ですか」 


 高橋さん、あくまで魚屋にこだわったのね。ケインとしての私はワールドデータの作成だけに関わって、最下層自体の設計にはタッチしてなかったのだけれども。


「私は、しばらく釣りをする。ミッキー懇意の釣り師から、いろいろ教えてもらった」

「いつの間に…」


 そりゃあ、釣り師って田中さんでしたから!発覚してからいろいろと付き合ってもらいましたよ!


 という感じで、リーネとしての私は釣り。ひょいと釣り上げて剣でとどめを刺す。

 ケインとしての私は、割と広大な地底湖の調査。ボスがどこから現れてもいいようにね。

 そして、姉弟は、


「姉貴、俺達のところも湖作ろっか。ダンジョンじゃなくて、エリア内に普通にさ」

「いいわねえ。ボートとか浮かべて、そんでもってカップル相手にお金取って」

「観光収入ゲットだぜ!」


 取らぬ狸のなんとかをやっていた。ていうか、月面ダンジョンはどうしたの。今回のミリーの稼ぎだけで両方なんとかするつもりなのかな?それなら、今回のボスは確実に…


「…!」

「来た!」

「あれは!…何?」


 でっかい、サンマかな?なんか、かわいい。かわいいってレベルの大きさじゃないけど。

 あ、サンマの口からなんか出た。


「熱い!熱いよ!エリアボスのドラゴンだってこんなの吐かなかったわよ!」

「燃える!こないだ買った高級ローブが燃えちまう!」


 ビリーくん、お金をかけるところ間違え過ぎ!ていうか、そんなん身に付けてダンジョン潜るな!ケインでさえ、耐性防御バッチリの服飾なんだぞ!リーネとしての私は相変わらずの制服だけど。

 しかたがないから、ケインが魔法陣重ねがけでパーティメンバーみんなを防御。でも、防御ばかりじゃ攻略できない。


「僕が湖の底から魔法陣を遠隔発動させる。わずかな時間だけど水が押しのけられるから、あの魚が地底の上ではねている間に、討伐を!」

「わかった」

「や、やってみる!」


 ビリーくんからは何も反応がない。放置するか。


「【ストレージアウト】全属性魔法陣」


 ひさびさの膨大な魔法陣転移。そんでもって、


「【連鎖発動(イニシエート)】」


 ボスの周囲の水が押しのけられ、サンマさんが地底に…あれ、落ちない?


「う、浮いてる!?」

「ていうか、飛んでるじゃねえか!あのちっこいヒレをバタつかせて!」


 ビリーくん、解説係に徹してるんですか。

 ああいや、それどころじゃない。サンマボスが普通に浮いているから、結局口から炎弾を撃ちまくってくる。水押しのけた意味がないー。


「ど、どうするのよ!こんな手の込んだボス、これまでのエリアボスにはいなかったわよ!」

「力押しだけでは、ダメ」

「独自のワールドデータをうまく使いこなしてきましたねえ」


 いやあ、高橋さんぐっじょぶ。運営もがんばったのかな。

 などと感心ばかりしていられない。最下層に転移した時から現実時間で進行している。サンマが現れた時から中継もされているはずだし、あんまりダラダラと時間をかけてもいられない。


「ちょっと卑怯だけど、一気にカタをつけよう」

「な、何するの!?」


 それはもちろん、


「それはもちろん、(わらわ)の出番じゃ!」


 タイミングよく『ハルカ』加勢!まあ、彼女も私だしね。せっかくの現実時間進行を無駄にはしないよ!


「え!?え!?いつの間に!?」

「お主らが湖作ろうとか寝言をほざいていた時からだな。リーネ殿が釣り上げた魚を焼いて食しておった」

「やっぱりアンタ、嫌いーーー!」


 だって、寝言の如きホラ話だったじゃん。あと、焼き魚は至高。


「【連鎖発動(イニシエート)】」


 ミリビリ姉弟の叫びはまるっと無視して、ケインとして再び水押しのけ。


「はあああっ!!」


 『ハルカ』としてサンマボスの華麗なヒレを両方共切断する。ふむ、日本刀でも包丁スキルは発動するのか。


 そして、既にダンジョン天井スレスレに大跳躍しているリーネとしての私が、ヒレ切断の勢いで頭が上の方に向いたサンマに―――



 私は、リーネ・フリューゲル。

 この世の全ての魔を、攻略する。



 頭から尾まで、上から下まで、剣で一刀両断する。こういうのも三枚おろしっていうのかな?違うか。


【全体メッセージ:プレイヤー『リーネ・フリューゲル』率いるパーティがダンジョン最下層ボスを討伐しました。最下層ボスはリポップ処理に移行します】



【ダンジョン】FWO総合スレPart4131【最下層】


113: 名無しの重騎士

ひさしぶりのボス攻略中継、楽しめた


114: 名無しの弓使い

リーネちゃんは以前通りのリーネちゃんだった

制服春香様造形で更に磨きがかかって


115: 名無しの八百屋

しかしまたサンマとはシュールな

ウチのエリアはどうすべ


116: 名無しの呪術師

>>115

カボチャお化けとかいうお約束はなしな


117: 名無しの門番

あれ、中継まだ続いてる

リーネちゃんがサンマ焼き始めたぞ


118: 名無しの木工職人

ケインの魔法陣アイテム使って嬉々として

春香様の新たな一面が


119: 名無しの船職人

リーネちゃん、うまそうに食ってるなあ

ケインとハルカもだが


120: 名無しの鍛冶職人

愉快な姉弟は…あ、口に入れた途端倒れた

うまいのかマズいのか


121: 名無しの剣士

俺、リーネパーティのエリアボス討伐に参加したことがあるけど

いや、なんでもない


122: 名無しの槍使い

>>121

おい、はっきりしろ

姉御、姉御はまだか!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=463137323&s ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ