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第11話「ケインとしての私に仕事が移ってきたということかな」

 鈴木のお祖父様との半公式の打合せ。ちなみに、横でひーひー言いながら学習システムに接続している姉弟の監視をしながらのVR会議だ。

 打合せの様子を見せたいというお祖父様の意向もあるが、この姉弟、目を話すとすぐログアウトしようとするから…。


「反重力技術の応用範囲は広いからな。専用の研究所をひとつ作るのは悪くはないだろう」

「はい。宇宙産業以外にも、医療関係などに技術供与することを検討しています」

「なるほどな。まあ、我々の方は既に目処がついているし、問題ないだろう」


 お祖父様の話がきっかけで進んだ話だし、そちらを優先するべきなのだが、大元のきっかけがあの(なにがし)っていうのがね。可能な限り、彼女の意図に反した広がりを見せたいところだ。


「宇宙船の改良は順調だそうだ。あとは、月面の一部のテラフォーミングだな」

「一部、ですか?」

「ああ。月面全体の重力を変化させるのは、地球とのバランスを考慮するとまずいようだ。あとは、コストの問題だな」


 そりゃそうか。いくら技術として普及しても安価に利用できるとは限らない。反重力の維持には膨大なエネルギーが必要になるからねえ。

 だから、空飛ぶ自動車がすぐに誕生するかというと、そうではない。エネルギー供給部分の技術革新も必要だけど、それには別の『現界』が必要だね。何の理論が役立つかなあ。


「月面での太陽光発電との組合せで、数百万人規模の都市を維持する程度のことは近いうちにできるとのことだ。もっとも…」

「わざわざ月面に作る必要は…ということですね」

「人口爆発が叫ばれて久しいが、一方で過疎化などという言葉もある。地球上の交通手段や環境問題を解決してからでも、月や他の天体への本格的な移住は遅くあるまいよ」


 なにより、仮想世界という、現実では手に入らない新天地がある。そこだけは、彼女の論文の冒頭に同意できる。


「そうは言っても、研究都市として月面に設けるのは悪い話ではない。地球上ではできない様々な事柄があるからな。我が企業グループとしては少しずつ進める予定だよ」

「お祖父様が生きておられる間は、実現されますよ」

「そうだな。実用うんぬん以前に、この目で本格的な月面都市を見てみたいという気持ちはあるな」


 それが、お祖父様の原動力なのだろう。暴走さえしなければ、夢をもつのはいいことだね。


「しかしなんというか、春香さんが私の孫だったらどんなに良かったことか…」

「いえいえ、このお二人もまだまだ頑張れると思いますよ…」

「そうだといいがな。月面都市がこの姉弟の将来の新天地とできればいいのだが…」


 あ、姉弟が泡を吹いてる。ダメかな、こりゃ。

 しかしそうか、ふたりが月に島流しされると、一緒にVRゲームというのも難しいかもしれない。月と地球って結構離れていて、光の速度でも往復2秒以上かかるんだよね。時間加速が一般的な仮想世界では致命的である。まあ、がんばれ。



 ひさしぶりに、大学で伊藤先生と打合せ。FWOの仕事をしながら講義を優先すると、どうしてもね。

 しかし、芸能的仕事が一段落したと思ったら研究的仕事が…。リーネとしての私からケインとしての私に仕事が移ってきたということかな、ある意味。


「残念なのは、言語解析に効果的な新しい理論というものが少ないことだね」

「『現界』は、物理的な存在に、効果があります。処理装置の改良は、あり得ますが」

「光コンピュータや量子コンピュータだね。処理アルゴリズムを変更する必要があるなあ…」


 母親ともそんな話をしたが、いくら科学や技術が発展してもなかなか上手くいかないことばかりである。ああでも、お父さんの書類整理ははかどるようになったのかな。知事さんと約束した通り、こないだ協力したし。


「あの国との交流もようやく本格的に進み始めたし、これまでよりは解析は進むと思うがね。もっとも、文化交流以前の課題が山積みではあるな、あそこは」

「研究用のVRサーバを、寄付したいところなのですが、かなりのトラウマが、残っているようですから…」

「まあなあ…」


 私がやり過ぎたと言う話もある。誰も責めはしないのだけれども。時間加速すれば割といろんな問題が解決するんだけどなあ。本当に、うまくいかないものだ。


「それはそうと、『ソル・インダストリーズ』との提携もそれはそれで興味深いね。月面都市建設の計画があるんだって?」

「はい。包括協定の、ひとつですが」

「人類が様々な天体に住むようになって、いくつかの世代交代を経たら、言語体系はどのようになっているだろうね。地球上だと、自然環境が割と影響するのだけれども」


 環境の影響、か。あの歌は、あの歌詞は、人類が宇宙に進出した後も残っているのだろうか。それとも、宇宙時代ならではの新しい歌がどんどん生まれて、古い民謡は消えていくのだろうか。


「まあ、人類がどんな変化を遂げようとも、春香くんの名が歴史から消えることはないだろうさ。そのうち、宇宙都市や植民星の名前に使われるかもしれないね」

「御冗談を」

「いやいや、人々の言葉そのものが大きく変化しても、『名前』は何千年と受け継がれることが多いんだ。特に、地名はね」


 …え、ちょっと待って。鈴木のお爺様、月面に研究都市作るって言ってたよね。…いやいやまさか、はははは。自意識過剰もいいところだよ、うん。ねえ。



【エリア】FWO総合スレPart4119【オーナー】


533: 名無しの八百屋

なあ、エリアも番号とかだと面白くないよな

地名を考えてそれで呼ぶのもいいんじゃ


534: 名無しの漁師

>>533

いいかもな

オーナーが国名や都市名を考えるとかさ


535: 名無しの木工職人

じゃあ、ウチは『ハルカ国』で


536: 名無しの鍛冶職人

>>535

そうかそうか

そんなにあの巫女が好きか


537: 名無しの木工職人

ごふっ

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