表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
115/150

第10話「あれ?お父さん、結局どの部署で働いてるんだっけ?」

 少しずつ進んでいる、『コアワールド』の分析。ケインとしての私が毎日ちまちまとやっている。

 ちなみに、同時接続のリーネとしての私はミリーと雑魚討伐。ダンジョン終盤の攻略成果だけでは、ビリーくんのエリアの改装資金には程遠いらしい。そのビリーくんは露店地域でほえほえ。もうケインをヒモとか言わせないからね!


「すごいわねえ…特定場所の草花だけでも膨大な種類があったんだねえ」

「ええ、現実世界よりも豊富です。種類を取捨選択していくだけで、様々な異世界環境が整えられるという仕組みです」

「このエリアひとつ分だけでも、何人もの人が何年もかけて作っていく必要があるわよね。春香ちゃんの…あの能力で同時多発的にやっても、何か月もかかるよね、きっと」


 ミッキー高橋さんの言う通りだ。件の化粧品じゃないけど、植物に関する資料を参照しながらあれこれバリエーションを増やしていくことを考えれば、とんでもない作業量だ。


 でも…。


「でも、妙な感じがするんです。確かに多種多様なんですが、なんとなくどんな種類に発展しているか予測できるような、予感があるというか…」

「そうなの?」

「ええ。僕ならこうするだろうなと思う種類は必ず見つかって、考えていなかった種類のものでも、妙になつかしいというか、馴染みがあるというか…」


 いつかどこかで思い描いたことがあるような、遠い遠い昔にひとりで夢見ていたような…うーん?


「ってことは、もしかしてケインくんなら『コアワールド』を拡張できるの?しかも、外部からのデータ修正じゃなくて、仮想世界内部から」

「確かに、仮想世界内部からあれこれと試行錯誤すれば、相応にしっかりしたものができると思います。ですが当然ながら、外部からのそれより時間がかかります」

「10倍の時間加速でも?」

「ええ」


 種類のバリエーションだけでも把握できれば、その情報に基づいた内部ツールを開発して一気に『コアワールド』を拡張できるかもしれない。が、草花だけでもこのバリエーションだと…。


「なんとか『思考』パターンを解析して、そのパターンに『想像力』を流し込むような内部ツールが作れれば、『コアワールド』の一部くらいは拡張できるかもしれません」

「でも、そのパターンって人によって千差万別で複雑なんだよね?『コアワールド』って、あの渡辺 凛(わたなべりん)って人がひとりで作ったって噂もあるし、やっぱり、とっつかまえないと」

佐藤春香(さとうはるか)としては、ぜひとっつかまえたいですね」


 しかし高橋さん、下手なFWO技術スタッフよりも、ケインとしての私の話にちゃんとついてきてるよね。もう電器店すっぱりやめて、今度新設される『ラボ』に転職しない?


「んー、それも考えたんだけど、店長に泣かれちゃって…」


 ああもう、あの電器店チェーン、FWOグループに吸収して…いかんいかん、私は世界を掌握しようとしているわけではない。技術提携でなんとかできないかな?



「来週には『(株)FWOラボラトリーズ』が立ち上がります。そこに所属の研究所のひとつの所長に高橋さんを、という話が確かにあるのですが、電器店チェーンの代表に粘られまして…」


 まあ、しょうがないよね。高橋さん、田中さんとのことがなくても、顧客対応がとんでもなく優秀だし。

 技術力にも交渉力にも優れているんだから、『FWOエンターテインメント(株)』の社長と交替してほしいくらいだけど、現社長というか旧FWO代表も割と頑張っているんだよ。うーん。


 あ。


「電器店チェーンと、研究所を共同設立する?VR関係機器のモデルルームも、設置して」

「…なるほど、VRゲームに限らず、仮想世界技術全般を扱う研究所なら、あるいは」

「そこに、『コアワールド』の研究も、任せるとか」

「いいですね。FWOグループとは別の独立した研究所なら、『コアワールド』管理組織との協議もしやすいかもしれません」


 こうして、本人の与り知らぬところで、高橋さんの立身出世が決まり始めていた。

 いいよね?田中さんとも一緒に居られやすくなるし。ていうか、姉弟の話じゃないけど、さっさと籍入れて一軒家に引っ越しちゃえ!


「そ、それは時期尚早過ぎといいますか…。それより、FWO内で鈴木姉弟に聞きましたよ。春香さんがこれだけの地位と名誉を得ても、御両親とずっと質素に暮らし続けているとか」

「何が質素か、わからないけど。でも、このままで、いたい」

「ええ、姉弟のおふたりにもそうお願いされています。『プロモーション』の代表としては、有名になっても変わらず静かな生活が送れる、その秘訣を教えていただきたいところです」


 そこがわからないのよねえ。姉弟曰く、周囲の人が気づいてないんじゃってことだけど。確かに、向かいの家の奥さんは、私が世間で何してるかとか話題にしないよね。

 でもそれって、もし気づいたら態度が変わっちゃうってことなのかなあ。それは寂しいなあ。


「もっとも、そのような秘訣を伺ったところで、おそらく私たちには真似できないでしょうけど」

「真似?」

「なにより、春香さんと御両親御自身が変わってないのですから。私や高橋さんなんか、友人や家族との関係がずいぶんと変わりましたよ。特に、私が社長を始めた頃からは」


 あら、高橋さんのことは既に御家族とかに紹介してるのね。ほほお。

 あー、でも、ウチの場合は確かにその辺無頓着だなあ。母親の職場、あれから店員さんの態度とか変わったのかな?父親の職場は…あれ?そういえばお父さん、結局どの部署で働いてるんだっけ?おや?まあ、いっか、無事に働いているなら。


「そこなんですって…」



【恐怖】○○市で起きた怪奇現象を語るスレ【奇怪】


211: 名無しのユーザ

なあ、近所のスーパーで信じられないものを見たんだが


212: 名無しのユーザ

とある3人家族のことなら

そっとしておくんだ


213: 名無しのユーザ

そうだ、触れてはいけない

眺めるだけに留めろ


214: 【211】

俺、まだ何も…ああでも、そうだな

そうする

うん


215: 名無しのユーザ

土手で毎朝走ってるあの娘…


216: 名無しのユーザ

>>215

だから触れるなというに


217: 名無しのユーザ

怪奇現象扱いとかヒドス

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=463137323&s ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ