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第10話「ミステリアス、ってああいうんだよな」

「実はさあ、俺、その先輩のこと、前から知ってたんだあ」


 ケインの中でかなり動揺している私に関係なく、ソルトがストーキング告白をかます。おまわりさーん、ここに奇特な人がいますよー。うん、順調に混乱している。


「校内でたまに姿を見かけて、でも最初は、なんでいつもひとりでふらふらしてるんだろう、って程度にしか思っていなかった」


 あれ?もしかして、陰口叩かれてる?ねえ、そうなの?ねえねえ。


「けれど、校庭の木々や花壇を眺めて想いにふけっていたり、そうかと思うと、体育館や剣道場での試合の様子をじっと見つめていたり。ミステリアス、ってああいうんだよな」


 長年の野望である2アバター同時接続の構想を妄想していただけです。神秘でもなんでもありません。奇怪ではあるけれども。


「制服のバッジから先輩ってことはわかってたけど、小柄で大人しいところも好みだったしな。ああ、そこはリーネちゃんに近いか」


 つまり、リアルの私は、大人しくて目立たない凡庸なちびっ子、という評価ですかそうですか。これでも18歳なんだぞ、ちくしょう。


「だから、最近直接会って、そして、いろいろ話していて、ああ、なんで卒業間近の今まで声かけなかったんだろうって、かなり後悔しちゃってさ」

「そ、そうか…」


 …結構、真面目に考えてくれているんだ。


「ああ、俺ばっかり話して悪いな。こんな話、姉貴を含めて他の人にはなかなか言えないことだったんで、つい。…誰にも言うなよ?」

「そ、そりゃあ、もちろん。でも、お姉さん、シェリーにもか?その先輩のクラスメートなんだろ」

「姉貴に知られるのが一番困る、というか、面倒。また人生の黒歴史更新とか笑われそうだし」


 うん、その話題に限っては、聞いた途端、真顔になると思う。リーネの時とは比較にならないほど。

 そして、その後のリアルの私への対応が、予測不能で怖い。がくぶる。



 ざくっ、…ざくざくっ、ざくっ、ざくっ。

 ぺら、ぺら、ぺらっ、ぺら…、ぺらっ。


「私が、恋愛対象、ねえ…」


 本日のレベル上げと魔導書チェックのノルマをこなしながら、ソルトの話を反芻する。


 こういう展開自体は、まあ、定番だ。世の中の恋愛モノの小説、コミック、映画などの数多くの作品で、そして、なにより現実で、飽きるほど聞き及ぶ話だ。

 だが、その展開の渦中に私が、しかも、VRアバターではなくリアルの私が、気付かぬうちにピースのひとつとして収まっていたというのは、正直、予想外だった。

 推理ドラマを観ていて真犯人は誰だとあれやこれや予想していたら、急に探偵が踏み込んできて犯人はお前だとドヤ顔で指摘されたような気分である。どんな気分だそれ。


 と、いうか、だ。


「私は、ソルト…健人くんのこと、どう思ってるんだろう?」


 性格は、まあ、好ましい。ケインとして接してもリアルの私として接しても態度が変わらず、裏表のない、さっぱりとした好青年タイプだ。

 いろんなことに気がつくし、頭の回転だっていい。商人のソルトとしてだけでなく、体験版の時の様子を見てもそれはわかる。美里は時々バカにするけど、アレは照れ隠しだ。

 容姿?パーフェクトなんですけど。偶然とはいえ、日本人離れしない範囲でカスタマイズされたケイン、とも言えるルックスだ。


 こう考えると、モテまくりのはずだろう、健人くん。私なんかを見つめている暇はないほどに、周囲の女の子達が放っておく訳がない。

 姉か?姉が妨害しているのか?で、私については見誤っていたのか?ああいや、体験版の時にちょっとヤバかったけど。


 話を戻そう。

 もし、今更ながらにも健人くんから告白されたら、お付き合いを断る理由が見当たらない。いや、美里のことを除けばだけど。

 でも、私から積極的にお付き合いしたいかっていうと…うーん、まだ、いいかなって。


 そうだよ、名実共にお子ちゃまだよ、私は。くすん。

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