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第4話「私を、神様か何かみたいに言いふらしているの?」

うん、『また』なんだ。済まない(バーボンハウス風)。

 姉弟を自室で半ば強引に学習システムにフルダイブさせた後。


「ところで…ここで商談、というわけにはいかないかな?」

「私は、持株会社の責任者。なんの権限も、ない」

「そうなのか?少し前に、FWOグループの物流会社の社員達に会ったが、そりゃあ春香さんを信用しきっていたぞ?」


 『FWOカーゴ』の?…ああ、主砲の実体化に必要な素材を運んでもらったっけ。その時の担当の人達かな?


「個人的に、お世話になった。公私混同を、するつもりはない」

「本当に、しっかりしているな。ウチの軟弱な孫達は、春香さんの何を見ているのだろうな…」


 最近は、スキあらば頭をなでようとしてくる、よくわからない姉弟です。


「まあ、話だけでも聞いてくれ。…『渡辺 凛(わたなべりん)』と言えば、聞いてくれるかな?」

「!?」


 なぜ、ここであの女の名前が!?


「そう、怖い顔をするな。別に、私は彼女の関係者ではない」

「…申し訳、ありません」

「いや、春香さんが辛い思いをしていることを知っていて名前を出した、私が悪い」

「知って、いる?」


 さすが、『ソル・インダストリーズ』のトップ、ということ?


「ウチのグループの会社のひとつに、彼女がコンタクトをとってきた。『コアワールド』の件で取引をしないか、と」

「『コアワールド』?でも、あれは管理組織のもの。彼女は、組織から除名された」

「彼女は、オリジナルのコピーを持っている、と言ってきたそうだ。『コアワールド』のフルセットをね」

「…え?」


 『コアワールド』は途方もない規模のデータだから、利用するにもコピーするにも、巨大なストレージ装置が必要だ。サブセットならともかく、個人でまるまる扱えるようなものではない。

 ‎加えて、現在流通している『コアワールド』には、管理組織の幹部しか解除できないコピープロテクトがかかっている。これで、ライセンス管理しているわけだ。

 ‎しかし、オリジナル?コピープロテクトをかける前の、最初期の『コアワールド』ということ?それをなぜ、彼女が単独で?


「胡散臭い話だったからね、丁重にお断りすると共に、関係当局に通報した。しかし、コンタクトには汎用通信回線を使ってきてね。途中で足どりがつかめなくなったそうだ」

「ケイン、なら…」

「そうだな、彼の技術なら辿れたかもしれないな。ところで、あの主砲モドキを実際に作ったのは彼ではなく、春香さんと聞いたが?」

「はい。それが?」


 うん、本当はケインとしての私が3Dプリンタにログイン(・・・・)したけど、あくまでロールプレイの話だからね。まあ、リーネとしての私でも間違いはない。


「そうか…。いや、渡辺氏は『佐藤春香の現界(・・)能力の秘密も教える』とも言ってきたそうなんだ」

「『現界』?」


 こりゃまた厨二的だなあ。

 うん、確定。あの女、絶賛厨二病だ。私のそれよりも質の悪い、他人を巻き添えにしまくる病気。


「それ以上の内容は『取引の約束と引換に』とのことだったのでわからない。たが、ウチの技術陣としては、心当たりがあるそうだ」

「心当たり?」

「春香さんは、『反重力』を実現できるかい?」


 それは…。


「できません。『重力』が何かさえ、理解できていない」

「存在していても?」

「存在していても」


 人間が想像できることは全て実現可能、だったかな?ならば、人知の及ばないものは実現できなくとも不思議ではない。

 ‎そもそも重力とは何か?空間とは?時間とは?それがわからず、タイムトラベルを想像できるか?SFではお馴染みだが、昔に戻れた場合のタイムパラドックスだってうまく説明できていない。


「しかし、FWOでの…ええと、『戦艦フリューゲル』だったか?あれは『反重力』で浮いているのだろう?」


 その名前に頭の中で悶え苦しみつつも、努めて冷静になって、答える。


「FWO内の『重力』の定義が、現実世界と異なる。全てのオブジェクトに対し、大地への移動処理が、不断に行われている。それに従って、『反重力』が、定義できる。ケインが、そう分析した」


 ケインとしての役割もしっかり忘れない。


「なるほど。では、最近ようやく『重力』の正体が判明したとしたら?もちろん、現実世界のね」

「…え?」


 今日は、お爺様の話に、何度驚いたのだろう。


「通常、理論が確立しただけでは、すぐに科学技術として実現できない。できたとしても、普及するほどに成熟するまで何十年、いや、何百年とかかるかもしれない」

「…」

「しかし、理論を『理解』しさえすれば、すぐに『現界』できる能力を持つ者が現れたとしたら…。春香さん、ここにある未公開の論文を読んでみるかい?」


 …あの女、本当に始末が悪い。

 ‎私を、神様か何かみたいに言いふらしているの?

 リアルではしばらく大人しくしていようと思ったのに、ほんっと…。



【異分野】FWO総合スレPart3401【交流】


128: 辺境の鍛冶師

祝:ソル・インダストリーズ包括協定


129: 辺境の門番

>>128

なんでなんだろうなあ

VRゲームと宇宙産業


130: 辺境の機織職人

>>129

そうでもないぞ

仮想空間があれば地球と同じ生活が体感できる

よく聞く話じゃねえか


131: 辺境の木工職人

>>130

それならなんで包括協定なんだ?

いくつかの学術研究機関とも提携したとかって


132: 辺境の漁師

まあ、それも今日の記者会見で…お、はじまた


133: 辺境の呪術師

春香様!


134: 辺境の重騎士

またクルーズ船が会場か

好きだなあ


135: 辺境の傀儡師

でも、なんで埠頭からクルーズ船全体を撮影してるんだ?

春香ちゃんがちっこく見えるじゃないか


136: 辺境の農家

>>135

お前、後で制裁されるぞ

でもまあ、音声は聞こえているな

ふむふむ、重力理論の確立、と


137: 辺境の商人

>>136

お前、わかって頷いてるのか?

俺にはさっぱりわからん


138: 辺境の図書館員

でも、それとFWOが…え?

『現界』?なにそれ?


139: 辺境の魔導師

え、何?

春香、何言ってるの?

え?


140: 辺境の弓使い

>>139

姉御、中の人が出てますよ…え?

クルーズ船が浮い…え?


え?


え?


141: 辺境の船職人

あははは、やられたなあ

今回は途中からVRサーバ内の映像に切り替わるなんて

そうだろう?

なあ


なあ


142: 辺境の溶接工



143: 辺境の重騎士



144: 辺境の短剣使い



145: 辺境の槍使い



146: 辺境の吟遊詩人

春香様が、人類の新たなる時代の幕を開ける…!

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