第9章 8話
この小屋はあれからも使っている。
里香の言う通り、なんだかんだ言って愛着があるのは確かだ。
今日も普段通り、いつものメンバーが集まる。
ただ一つ違うのは。
ここは研究調査クラブと名称を変更した。
このクラブには優秀な人間が集まっている。
下手すれば、この高校のどんな科学技術部よりも優秀かもしれん。
でも特定の分野に特化するよりは。
いろんな分野での部活動を支援するような場所という形で存在させる。
それが俺の取った道。
単にタイムマシンという目標を失ってしまったから。
新たな目標を見つけるまで、いろんな技術や知識を学びたいと思っただけだ。
「こんにちわ。みんな揃ってる?」
「なんだ?」
何やら書類を持って来ている。
「依頼を持って来たわ」
依頼?
「なんだ?」
「顔つきが変わったわね」
そういえば、しばらくは放心していたかもな。
「人口降雨装置の成功度を高めて欲しい」
「人口降雨?そんな事出来るのー?」
「日本では1950年代から実験をしている」
そんな昔から!?
「へへっ。面白そうな内容じゃないか」
「でも、雨を意図的に降らせるなんて無理ゲーじゃね?」
「いや、そうでもない。雨のメカニズムを逆に利用してんじゃないのか?詳しい解説を頼む、クリス」
「分かった」
ようやくいつもの活動に戻った感覚だ。
これまでずっとタイムマシンによる影響の修正しかして無かったしな。
やっぱり、俺も理系人間だ。
もの凄く知的好奇心が刺激されている。
「嬉しそうね?」
「そりゃそうだろ。面白そうじゃないか」
「でも課題が山盛りよ。単に霧状の水分を大量に撒くだけじゃ解決にならないんだから」
そんな事は分かってる。
「この学校には施設もある。そしてここには天才や一流のプロもいる。やってやれない事はない!」
「本当に普段の矢野君が戻って来たわね」
「これこそがクローンが目指していた未来じゃないか?優子?」
「なっななな、なんで名前で呼ぶのよ!!」
他のメンバーは呆気に取られている。
「だから言っただろ?これこそがクローンが目指していた未来だからだ」
9月13日から12日に戻り、さらに8年前まで戻る事を繰り返していた時間の輪を超えた未来。
それが今、ここにある。
Tips:人工降雨装置 ドライアイスやヨウ化銀等を使用して、人工的に雨を降らせる事を目的とした装置。ただし現在でも本来の雨量を1割程度しか増加せず、晴れの日に雨を降らせたり、降水量を制御するまでには至っていない。




