第7章 4話
2012年9月13日午後5時35分。
史上最悪の事故が起きた。
それは素粒子実験の時だった。
速度の計算ミスにより、巨大なブラックホールが出現。
半径15キロは文字通り消滅してしまった。
ブラックホールは自分のエネルギーに耐えられなくなり、自然消滅。
そこには巨大な窪みしか存在していない。
先ほどからこのニュースばかりだ。
被害者は推定で10万人。
実験に参加していた科学者やその家族達はもちろん。
周囲に住んでいる住民も消滅してしまった。
もちろん死体が残っていない為に、身元の確認なんて出来やしない。
そんな最悪の事故が起きてしまった。
「なんで?」
なんでこんな事が起きている?
どうしてCERNの実験が失敗を?
「なんで失敗したんだ?」
「諸説はあるけど、やはりここ近年成果を上げていないから、無茶しやがってとなったのが濃厚」
成果をあげていない?
「そんな訳あるか。素粒子実験は成功してヒッグス粒子を見つけたって発表が!」
「おまいは何を言ってるんだ?」
へ?
「そんな事があったらニュースになってるだろ常考」
「いや。なってただろ」
待てよ。
「いや。なってないのか?ここでは?」
「だからそう言ってるん。ってはい?」
確かヒッグス粒子の実験の成功の影には、クリスの計算式があった。
だがそれがない。
つまり、クリスが実験員として参加していないんだ。
だったらクリスはどうしてるんだ?
なんで天才科学者が参加してない?
その辺りも、俺が8年前に飛んだ事と関係してるはずだ。
「どうしたの?お兄ちゃん」
「いや。だったら、クリスは何をしているんだと思って」
そもそも科学者じゃないのか?
「その、クリスさんって前から聞きたいと思ってたけど、フルネームは?」
「確か、山田・クリス・恵子だったっけ」
ずっとクリスとしか呼んで無かったからな。
「え?なんでお兄ちゃんがその名前を?」
「知ってるのか!?」
「だって。レディース服で有名なデザイナーの人だもん。お兄ちゃんは興味無いジャンルでしょ?」
服のデザイナー!?
Tips:無茶しやがって(むちゃしやがって) ある種の追い詰められた状態で無謀とも思える行動をした者に対して贈られる、悲哀の込められた言葉。




