第5章 8話
8年前に再び飛んだ。
そこで俺は見た。
俺とは違う人間が、北川に道を教えてる光景を。
なんで俺が道を教えていないのに、違う人が同じ事をしているのかは疑問が残るが。
もう一度戻り直して、今度は俺がわざと間違った方向へ案内した。
たぶんこれで大丈夫なはずだ。
「ふむ。興味深いな」
俺はこの事をクリスに話した。
こういう事はクリスに相談するに限る。
「俺の知っているバタフライ効果って、一度変えてしまった事による変化なはずだ。でもそれをやらない事にしても別の誰かがそれをやっていた。変じゃないか?」
こういう場合の解決策はいつもやらないように回避する事だ。
なのに、別人に摩り替って同じ事をしている。
「これまでの因果律からすると、確かに変だ。原因があって結果があり、その原因を起こさなかったのに、原因が起きた」
そういう事だ。
「だが私はそれよりも、もっと不思議な事がある」
もっと不思議な事?
「なんだ?それは」
「タイム・パラドックスだ」
え?
「矢野の話を聞いていると、この12日の午後5時に何度も来ている事になる。だが飛ぶ前の12日午後5時にいた矢野はどこに行った?」
あっ。
そういえば。
全然考えていなかった。
13日から12日へ遡ったのなら、12日の俺がいるはずだ。
なのに、その俺とは会った事が無い。
不思議な現象。
「ちーっす!」
一条だ。
たぶん、今の一条は大丈夫だとは思うが。
念のため、明日は一条の側にいてみよう。
そうだ、話題をタイム・パラドックスに戻そう。
「それは気付いていなかった。正直、今言われて気付いた」
「数多くの科学者が、このタイム・パラドックスを解決出来ずにいたんだ。タイム・トラベルをするなら必ず考える時間的矛盾をどうするか。なのに知らない内に解決している」
確かにそうだ。
どういう事なんだろう?
Tips:因果律 ある出来事に対して起こる事の原因があるとされている考え方。この場合は物理学的な考え方で、主にタイムトラベルの物語に登場し、原因が変えられる場合と変えられない場合が存在する。
Tips:タイム・パラドックス 「親殺しのパラドックス」と言われ、タイム・トラベルを起こす上で考えられる時間的矛盾の事。
タイムマシンで自分が生まれる前に親を殺した場合、親が死ぬと自分も生まれなくなり、殺す自分も生まれなくなるがその場合親は死ななくなるという矛盾が生まれる。
これが解決されないからタイム・トラベルは出来ないとも言われている。




