第4章 8話
「珍しく水谷の意見に反論しないんだな」
「ああ。そうだ一条。俺は分かっていたんだ。ただ逃げていただけなんだ」
どうするのが最善なのか。
そんなのは分かっていた事。
「タイムマシン理論で楽しむのはいいけど、そのせいで苦しむ姿は見たくないお」
「赤の他人だから無責任な言葉かもしれない。でも、選択はしなければならない。そして、もうそれを終えている」
そうだ。
みんなの言う通りだ。
クリスに最初に言われた時から、なんとなくは気付いていたんだ。
その選択をしたくないから逃げていただけ。
「早く8年前に行って、新井さんを救って。そうじゃなきゃ、私が諦めた意味無いじゃない!」
「水谷?」
何を言って。
「なっ、なんでもないわよ!」
「ツンデレ乙!」
空気を一杯に吸い込み。
ゆっくりと吐き出す。
「分かった。8年前に行く」
お母さんを見殺しにする選択を選ぶ。
いや。
元々交通事故で死んでいたんだ。
ただ加害者も死んでしまったから、怒りのぶつけ所が無かっただけで。
運命ってのは、どうしようもなく残酷なんだ。
もの凄く簡単な事。
一人の命を救ったから、一人の命を奪っただけ。
単純明快。
ならそれを元に戻せばいい。
そう。
元に戻るだけだ。
里香は俺の妹であり、13日の午後17時30分以降も何事もなく元気で明るく振舞う姿がある。
そこに戻るだけだ。
結局俺がタイムマシンで得たものは。
運命には抗えないって事だけ。
情けない話だ。
「みんな。準備をしてくれ」
みんなに指示するのも何度目か。
俺も慣れたもんだ。
「念のために聞くけど8年前よね?」
俺は頷いた。
これでいいんだ。




