第1章 3話
扉がノックされる。
「失礼します」
あくまで穏やかに。
「どうぞ」
入って来たのはこの学校の生徒会長、水谷優子。
この学校の規律を何より大事にし、行き過ぎた騒動は許さない。
「またですか?」
「何度も言います。このクラブを解散させなさい」
このやりとりはクラブが発足してたった1ヶ月で何度も行われている。
「いくら生徒会長といえども、うちらを解散させる権限はない!」
それは。
「賢いあんたなら校則に書かれてる事はきっちり覚えてんだろ?」
もういい加減黙ってるのも止めた。
「くっ!」
「そう!部活動に関しては生徒会が口を出す権限は記載されている。だが俺達はクラブ活動だ。同好会と言ってもいいな。クラブや同好会に関しては学校の秩序を乱さない程度で活動を許している。そして生徒会が口を出す権限については書かれていない。そりゃあそうだよな。学校から活動経費を貰ってる訳じゃない。せいぜい仲の良い友達が集まって遊んでるのと同じなんだからな」
つまり、俺達を解散させるなんて出来ない。
「もう一つ!ここの小屋は何年も使われていない場所だ。今更俺達が使った所で文句を言う人なんていない。それどころか、この小屋で使った経費は自腹で賄うって事で校長から許可をもらっている。あんたは校長より偉いのか?」
いくら生徒会長といえども、校長の決めた事に逆らう事は出来ない。
その行為は校則違反をする人と変わらないからだ。
そんな事をこいつが出来る訳もない。
「つー訳で。いい加減諦めたらどうだ?」
「あなたこそ諦めなさい!何よ!タイムマシン研究クラブって!そんなの出来る訳ないでしょ!」
「へぇー。出来ないなら活動しちゃいけないんだ?未来に夢見る若者を否定する言葉にも聞こえるが?」
悔しそうな表情を浮かべる。
特にここは科学技術に興味のある生徒が集まっている。
「くっ!必ず解散させてみせるからね!」
そう言い残して去っていった。
「まったく。毎度思うがよくあの水谷と口喧嘩出来るね。しかも言い負かして」
「なんだ?一条。口喧嘩した事無いのか?」
男勝りな一条ならやってそうだったのに。
「あいつの方が正論なんで、やった事ねぇよ。たぶんこの生徒の中で矢野だけじゃないか?水谷と口喧嘩して勝つって」
「何言ってる。あいつの要求が滅茶苦茶なんだ。こっちに正論がある限り負けは無い!」
そう。
この活動はどうしてもやりたかった事なんだ。
その為に上手い抜け道も考えたんだ。
だからこそ、解散なんてさせない!