第2章 3話
しばらくすると、クリスも来た。
「丁度いい所に来た」
「なんだ?」
「確かLHCの研究に貢献したんだろ?そのLHCを使えないかな?」
「LHCを?」
これも思いついた事。
「陽子をぶつけビッグバンを再現させるのがLHCの実験だが、その時に発生したエネルギーを使うってのはどうかな?」
「爆発のエネルギーを?それを光を超える為のエネルギーにすると?」
俺は頷く。
「発想はいいが、元の爆発エネルギーが小さすぎる。光を超えるエネルギーは無理だ」
無理か。
「それじゃあ、電子レンジのエネルギーで増幅すれば!」
「それでも出力が足りない。おそらく100台分でも無理。光を超えるなら元の爆発を10倍にして電子レンジを1億台繋げても不可能」
いけると思ったんだがな。
「だが、これまで通り。何か思いついたら教えてくれ」
違った方法を考えないといけないな。
「ねぇ、山田さん」
「クリスだ」
いい加減、水谷もクリスって呼べばいいのに。
だから余計にクリスが俺達の味方になったというのに。
「なんで矢野君をそこまで高く評価するの?あなたは天才科学者じゃない」
「私は理論は優れてると自負する。だが発想力は矢野の方が上」
俺の方が?
「本当の天才は矢野の方。いくら努力しても発想力が凄い人には敵わない。エジソンもひらめきが重要と言っていた」
「え?それって『天才は1%のひらめきと99%の努力』って言葉よね。それだけ努力が大事だと」
「違う。本来の意味はひらめきが無ければ努力は無意味。ひらめけば努力は苦じゃないという意味。それだけひらめきが大事」
へぇー。
そうなんだ。
「私は努力で天才と言われた。でも真の天才は常人が思いつかない事を、常識だと思って深く考えなかった所に目をつける発想力のある矢野の方」
俺が天才か。
なんかクリスに言われると嬉しいな。
「そうそう。今後LHCの事は考えから除外してくれると助かる」
へ?
「なんで?実験の成功の立役者なのに?」
「だからこそだ。報道で個人名が出たか?」
あっ。
そういえば。
クリスの計算のおかげなんて聞いていない。
まさか。
「私の計算のおかげで成功したが、私のような未成年に脚光は浴びさせないつもりらしい」
そうか。
まさか、そんな事があったなんて。




