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は〜げん魔法少女シリーズ

番外編その1 壊れた身体と請われた身体

作者: は〜げん

ツイッターにて少し調子に乗った作者が書いたディザイアチームの過去編その1です

ある日。それは本当にある日。いつの時代かいつの時間が分からない時に、一つの欲が生まれ落ちた。


彼は目を開けて周りを見る。周りにあったのは人間の形をしたものの無数の目。それらが期待と好奇心が入り混じったような目で、彼を見ていた。


彼はゆっくりと立ち上がる。すると周りが大きな喜びの声を上げた。中には手を叩き合って喜び合うものもいたりして、そんな光景を見ていた少年はとても嬉しくなっていた。


自分が動くたびに喜ぶ彼ら。まるで、自分が支配してる気がして、彼はとても嬉しかった。


そんな時、一人の女性が近づいてきた。彼女は、産まれたての彼でも美しいと思えるほとの、美貌を持っていた。


「あなた・・・あなたは、私達の世界を救うために、頑張ってもらいます」

「・・・えっ・・・あっ・・・うぅ・・・」


彼はその時、言葉がうまく話せないことに気づいた。それを見た女性はニコリと美しく笑い、少年の頭を優しく撫でた。


その手が動くほど、彼は嬉しくて。そして同時に。


「あなたの名前はエレンホス。支配欲として、世界を守ってくださいね」


同時に、何かの矛盾を感じていた。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



次に彼が目を覚ました時。その場所には全く見覚えがなく、あたり一面が草木で覆われていた。いや、そもそも産まれたての自分にとって何もかもが見覚えがないのか。


「あう・・・あうあ・・・ええんおう・・・」


彼はうまく動かない口で何かをしゃべろうとする。おそらく名前を言おうとしてるのだろう


ガサッ


突然背後から音が聞こえた。エレンホスはびくりと体を跳ねさせて、ゆっくりと音がする方を見た。


そこにいたのは、白いワンピースを着た一人の少女。その少女がクリクリとした目をパチパチさせながら、エレンホスを見ていた。


「あう・・・あ・・・?」

「えっと・・・君は、誰なの?」


少女がそう尋ねるが、エレンホスはうまくしゃべることができずに、しばらくあうあう言っていた。


何故だか、そんな自分が許せなくて。情けなくて。頬を一筋の水が伝い、地面に落ちていった。


「えっ!?だ、大丈夫!?なんか私変なこと言っちゃった!?」


少女が慌てた様子でそうエレンホスに問いかける。そしてしばらくエレンホスが泣き続け、少女が宥めるという図になっていた。


「そっか・・・あなた、言葉が喋れないのか・・・」


泣き止んだエレンホスは地面に座り込んでおり、その隣にあの少女が座っていた。エレンホスとしては彼女が早くどこかに行ってくれないかと考えていて、それを見透かしたように少女が笑った。その愛らしい笑顔にエレンホスはドキリとした。


「よし!じゃあ私があなたに言葉を教えてあげるよ!」


そう言って少女は立ち上がりエレンホスに手を伸ばした。エレンホスは少し悩んだ後、その手を握って立ち上がった。


「えへへ、実はね私の家この近くにあるの!ついてきて!名前は・・・野原にいたから野原ちゃん!じゃ、行こうよ!」


自分の名前はエレンホスだと言いたかったが、言葉が喋れないためやめた。


今はこの少女についていくしかないかと、彼は思いながら、握りしめている手を少し強めに握った。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



彼はそれから1年ほど、少女の家・・・というか、少女の家の倉庫に住んでいた。なんでも少女の両親は厳しいらしく、家にこんな小さな子供といえども男を連れ込んだことがばれたら大変なことになるという(あとに聞いた話だが、少女は最初エレンホスの事を女の子と思ってたらしい)


まぁ、エレンホスにとってはどこで寝ようが生活しようが、どうでもよかった。


「・・・あめんぼあおいなあいうえお・・・」


少女・・・そういえば名前はルリと言っていた。ルリから聞いた言葉の練習に使えばいいと言われたのを何度か繰りかえす。


エレンホスはもう日本語は多少不自由なく喋れるようになっていた。なので、もうここにいる意味はない。どこか遠くに行ってもいいのだが。


「・・・まぁ、まだいいよね。ルリとしばらく一緒にいたいし・・・」


そんなことを言いながら彼はゴロンと寝返りをうつ。中の設備は多少好きに使っていいとのことなので、ありがたく、ベッドを使わせてもらってるのだ。


コン。コン。コココン。


リズムカルに聞こえるノックの音で、エレンホスはガバッとベッドから起き上がる。この音はルリが来る時に聞こえる音。


「あ、エレンホスちゃ・・・くん!元気してたー?」


そして予想通りにルリが笑顔でドアを開けて手を振っていた。エレンホスも少し笑って手を振り返した。


「どうしたの?・・・って、もうこんな時間か」


そう言いながらエレンホスは壁にかかっている時計に目をやった。時刻は昼の十二時を少し超えていた。


ルリをよく見ると、右手に小さなバスケットをぶら下げていた。それを見られてるのに気づいたルリは小さく笑った後バスケットから、サンドウィッチをエレンホスに渡した。


「ありがとうルリ」

「どういたしまして・・・ふふ」


ルリがまた小さく笑ったのを、エレンホスは不思議そうに首をかしげてみていた。


「いや、エレンホス・・・くんも、日本語がうまくなったなぁ・・・て。まぁ、これは私の教え方がうまかったからかな?」


てへへと頭を撫でながらルリは笑っていた。とても楽しそうな笑顔。しかし、エレンホスは彼女からたまにそんな楽しそうな笑顔とは無関係な気持ちが聞こえた。


「・・・解放・・・欲・・・?」

「ん?どうしたのエレンホスくん」


屈託のない笑顔の彼女から感じられた欲。それも解放されたいという欲。なにに?なにから?どうして?色々と考えてしまうが、おそらく気のせいだと思い、エレンホスは曖昧と笑いながら。


「・・・いや、なんでもないよ」


そういうしかなかった。そんなエレンホスをルリは不思議そうに、そして嬉しそうに見ていた。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



それから、一月ぐらいと月日がたった。エレンホスはベッドの上でスヤスヤと眠っていた。


「・・・うぅん・・・んにゃ?・・・目が覚めちゃったか」


エレンホスはそう言いながらベッドから体を起こし大きく伸びをした。窓から外を見てみると、夜になっており、フクロウが鳴いていた。


エレンホスはなんとなく、倉庫から出てみようかなと思った。どうせ、夜だ。ルリもみんな寝ているだろう。


「なぜだろう、ルリを見ていると変な気持ちになる・・・」


それはなんだろうと、倉庫の階段を下りながら考える。なんの気持ちなのだろう、話に聞いたことがある。恋というやつか、いや何故か違う。どちらかというと。


「・・・『期待』・・・?なんで、僕はルリになんで期待してるんだ・・・?」


そんなことを考えながらエレンホスは倉庫の入り口の扉を開けようとした。一瞬、開けないほうがいいかと考えたが、頭を振り帽子を深くかぶりなおして結局扉を開けた。


ギギィ・・・と重い音を鳴らして扉は動いた。


「・・・久しぶりだなぁ、外に出るのは」


エレンホスは外でまた大きく伸びをして周りを見渡した。周りにあるのは暗い闇に包まれた景色のみが広がっており、普通の人間。しかもエレンホスぐらいの少年なら恐怖に落ちるような暗さ。しかし、エレンホスは恐怖ではなく。


「なんだ、変だなぁ・・・怖くない。むしろ、ここにいるのが当たり前なような気が・・・ん?」


エレンホスはそう言いながら、あるところに視線を向けた。少し遠くにある大きな家。そこの一室に視線を向けていた。


「なんだなんだ・・・あそこから感じられる欲・・・」


そう言いながら、エレンホスは口を動かして、あそこから感じられる欲を言い始めた。


「性欲支配欲破壊欲独占欲嫉妬欲食欲子孫欲・・・『解放欲』・・・!?」


エレンホスは少し嫌な予感がして、急いでその欲が見えた家に向かって走り出した。






タッタッタッ・・・


暗い道を走り抜けるエレンホスは、帽子を深くかぶって色々と考えていた。とにかくルリに会わなければ。そんなことを考えていると、エレンホスはいつの間にかその家に来ていた。いざ目の前にしてみると、かなり大きくまるで城のようだった。


「・・・おかしい。こんなに大きな家なのにルリはなんで白いワンピースしか着てなかったんだ・・・」


エレンホスはそんなことを言って急いで倉庫よりかはるかに重い扉を開けて中に入っていく。


「ルリー!!ルリ!!どこだ、返事をしてくれ!!」


ルリの名前を叫びながらその家のなかにある扉を開けまくる。


そして、一つの扉の前でピタリと止まる。ドアノブに震えながら手を伸ばす。最初からわかっていたはずなのに、何故かその扉を開けるのをためらったのは、何故だろうか。


エレンホスは少し悩んだ後、勢いよくルリの名前を叫びながら扉を開けた。


「ル・・・!?」


そこにいたのはいろんな欲をまとっていた何人かの男性と。


いつも以上に白くて、いつもとは全然違う濁った瞳でエレンホスのことを見ていた。


「あ・・・」

「おいおい、なんだこの子供は?」


ルリであった。


「貴様ら・・・ルリになにをした・・・!なにをしたぁ!!」


エレンホスはそう言いながら男たちにくみ取ろうとした。しかし、小さな少年が男たちに勝てるはずもなく、簡単に引き離されて腹に蹴りを入れられて大きく吹き飛ぶ。


「なんだ、こいつ・・・さっきの声聞いたら男なんじゃねぇか?男だとしたら可愛い顔してんなぁ・・・おい、お前確か男の子とやりたいとか言ってたよな?やれば?いいよな、お父上様」

「ふん、いいだろ。ルリとやる分に足せばやっていいぞ」


お父上様と呼ばれた男がそういうと一人の男がエレンホスに向かって興奮したように息をしながら、歩いてくる。


エレンホスは向かってくる男を見ながら一つ考えていた。恐怖?違う。焦り?それも違う。感じてるのは。考えてるのは一つ。


「支配・・・」

「は・・・?なに言ってーーー」


そう言うとエレンホスはまるで何かが切れたようにピクンと動いた後、手を前にかざした。その光は大きく光り、辺りを包んでいく。


「・・・逃げますよ、ルリさん」

「えっ・・・」


エレンホスは光が収まる前にルリの絵を引きながら、窓の近くにあるカーテンを引きちぎり外に出て行った。


その後、その部屋から始まったのは執筆しがたい。欲に包まれた男たちがやったのは一つの醜い宴だったとしか、言えない。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇


その後エレンホスとルリは近くの草原に来ていた。場所は彼らが初めて会ったところ。


ルリは下をうつむいてカーテンを体に巻きつけており、エレンホスは木に背中をつけて帽子を深くかぶりたっていた。


「エレンホス・・・くん・・・?」

「なんです・・・?」


ルリが死んだような目でエレンホスを見上げる。エレンホスはジッとその瞳を見つめ返した。


「私ね・・・あの家を作ったようなものなの。家のお金は全部、私が集めたの。へへへ・・・すごいでしょう・・・」


エレンホスはそう痛々しくしゃべるルリを見てそれから目をそらすように目をつむった。それを見たルリは目をそらすことなく、エレンホスの服を掴んで立ち上がる。


「私ね、貴方をいろんな意味で満足させれるかも・・・よ?」

「・・・・・」


エレンホスは感じていた。彼女の心の中を。今こんなことを言ってるのは、ただの建前。見られたから。それだけで人間というのはこうも変わるものなのだろうか。エレンホスは呆れと同時に感心すらしていた。こんなことになっても彼女は変わらない欲を持っていた。


「解放・・・して差し上げましょうか?僕が、貴女を解放してあげましょうか?」


ルリにそういうとルリは驚いたような顔になってゆっくりと頷き、口を開けた。


「私、こんな壊れた身体で生きるのなんてやだ・・・こんな身体から解放して、人生から、解放してくれる?」


そんな普通の者なら殺すことでこの世から解放されるしかない願いを、エレンホスは


「わかりました・・・貴女の欲、そして貴女を人生から解放させましょう」


新たな身体を。請われた身体を与えるという選択肢を選んだ。


「ありがとう・・・エレンホスくん・・・でも可能なら・・・」


そんなことを言いながら、ルリはエレンホスの手によって解放された。人間からも、人生からも、そして。


この世からも。





「・・・あーあ・・・」


エレンホスは緑色の液体がついた手を握りながらため息をついた。彼の、頭の中にいろんな言葉が浮かんでは消えていた。


やるべきことを見つけられたという感じであった。まるで何かの策略のようであり、自嘲気味に笑う。


「僕は支配欲。ですが、そうですね。支配欲ならば・・・」


そう言いながら手を開いて歩き出す。手はとても綺麗だったのをみて、また一つため息をつく。


「支配するというタイミング。これは僕の自由でいいでしょう。というか、せめてこれぐらい許してくださいね?天界様・・・」


エレンホスはそう言いながら頭を振って歩き出す。この時のことをすべて忘れようというぐらい。大きく振って、よしと一息ついて大きく歩き出した。


「この場のことは一切知りません。僕は、なにも、知りません」


そう言う彼は暗い闇の中に消えていった。


お疲れ様でした。


今回はディザイアのリーダーみたいな人の、エレンホスくんの回でした。どうでしたか?

後の2人はおいおい更新いたします

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