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27 桃に囲まれた村

 予想した通り、レンジュは三日の休息で体が回復して出発できるようになった。

 村を出たしばらくした後に林の中から人が飛び出してきた。

 新手の悪魔の襲撃かとラーフは身構えたが、サーシャがそれを制した。


「どうだった? スパルノ」


 十八歳程の軽装の男は顔をあげて報告した。


「この先にも悪魔の群れがあちこちにあるみたいです。とりあえず、次の村までの道のり雑魚っぽいのは掃除しておきました」


 淡々と報告する内容にサーシャは満足してご苦労さまと労った。


「こいつは」


 ラーフはスパルノをじっと見つめた。

 前回会ったことのある男であった。

 ラーフが突然レンジュから解雇され、エリウ神殿を出た後に遭遇した男であった。


 それがナージャ一族の部族の術者で記憶操作ができる者であった。

 ラーフに近づいたのはラーフが二度とレンジュに近寄らないようにサーシャが仕組んだ術者であった。

 目的が自分の記憶操作であることに感づいたラーフはすぐにスパルノをぼこぼこにして倒し、レンジュの方へ戻ることにした。


「あ、あんまり睨まないでくださいよ。旦那」


 スパルノはわたわたと自分は何もしないことを証明するように両手をあげた。


「あの時はサーシャ様の命令で仕方なかったんです。今では旦那の記憶をいじろうなんて考えませんよ」

「ああ、そうしてくれ」


 そういっても自分の記憶をいじろうとした男相手についラーフは睨みつけてしまった。


「そうそう、次の村で最後の人里だからそこでじっくり休んで、いろいろ装備とか見直した方がいいと思うわ」


 サーシャは手持ちの地図を眺めて言った。

 次の村を抜けると後は谷をいくつか超え、レンジュたちが求めていたスミアの山岳地帯に入る。敵の本拠地に近い為、一回ここで自分たちの武器をしっかりと手入れしておいた方がいい。


「はぁ、次の村もどうせ村人が病魔で苦しんでいるんだろうな」


 ラーフはうんざりとした。

 次で最後と思うのだが、またレンジュが力を使うことになるのだ。そこでレンジュがまた床に臥せってしまう。


「いえ、さっきいた村よりは少ないですよ」


 スパルノの意外な言葉にラーフは首を傾げた。


「悪魔たちの総本山から近くの村なのにか?」

「ええ、ですから早めの予防線を張っていたみたいです」


 汚れた水はなるべく使用せず、汚れた大地から実った作物はなるべく食さないようにしていたという。


「どうやって生きているのだ」


 はじめて聞くことにギーラは首を傾げた。


「おそらく桃を栽培しているとのことに強い影響があるようです」


 桃は浄化の力があり、悪魔でも手を出せない神聖な果物である。

 それを一軒に一本以上植えさせ人々はそれで生活しているという。村全体桃で覆われているような村であり、悪魔もあえて避けて通るようになったという。

 そのため、地面から湧き出る水もそこそこ使えるという。


「へー、桃でそこまで可能だなんて」


 なら、今まで通った村も全員桃を栽培すればいいのではないか。

 単純に考えた。


「まぁ、腐りきった後の土地で栽培するのは難しいことですし、この先にあるペーシュ村はそうなる前に栽培が成功したとのことです」

 

 汚れる前に植えて育てた桃であれば何とかなるが、汚れきった後では桃を育てるのは難しい。だからこそ、今まで通った村には桃の木は限られ、あったとしても土地の有力者が独占してしまったのだ。


「しかし、よくそんな知恵が働いたな」

「ええ、異変にいち早く気づいた学者がいて百年前から桃の栽培を村全体ではじめるように指導したらしいです」

 

 今もその学者の家は存在し、現当主が桃栽培の研究をさらに進めているという。

 悪魔によって汚れ瘴気に満ちた大地でも育つ桃の研究を。


「その学者の家はシュピゲール家。現当主ファル・ルフト・シュピゲールといいます」


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