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短編エッセイ集

実は私、作文が嫌いでした

作者: 楠木 翡翠

 私は中学生の時まで作文を書くことが苦手というか嫌いだった。


 例えば、「『小説を書き始めたきっかけ』を原稿用紙○枚で書け」というテーマが出されたとする。


 今の私なら何度も書いたり消したり、書き直したりするが、すぐに書き始めることができる。


 しかし、その当時の私はそのテーマに沿ってどのようなことを文に書き起こせばいいのか分からず、ずっと真っ白な作文用紙とにらめっこをしていたであろう。


 今、このエッセイを読んでいる方の中にも同じような悩みを持っている方がいると思う。


 よく文章力を高めたい時は日々の日記を書くといいとか言われいるが、私はそれを書くこと事態が嫌で嫌でしょうがなかった。


 他の中学校はどうかは分からないが、私が通っていた中学校は『生活ノート』と呼ばれる担任と生徒の交換日記みたいな冊子が1年につき1冊配布される。


 そこに次の日の1限目から6限目の用意するものや宿題の提出日、連絡事項を書き込む欄があり、一番下の欄が日々の日記欄となっていた。


 そのノートは毎日、朝の会の前に日直が職員室に提出し、早くて昼休み遅くて帰りの会までに返される。


 毎年新しいそのノートを受け取るとよく担任の先生が


「みんなの悩みごとや好きなことをこの欄にいっぱい書いてね!」


と言っていたが、作文を書くことが嫌いだった私は凄く苦痛なものだった。


 悩みごと?


 そんなことを日記欄に書き込んであとからそのノートに書いて先生にチクっただろうと言われ、いじめられることが嫌だ。


 好きなこと?


 当時の私にとってはマイナーな趣味しか持っていないから、きっと先生には分かってくれない。


 という複雑な思いがあったせいか、本当にその欄に抵抗があった。


 最初の頃は少しだけ書いていたが、ある日を境に書けなくなった。


 その理由はその欄に書くネタが尽きてしまったからだ。


 何も書かないで提出すると『?』や『なんでもいいから書いてみよう!』と先生の赤ペンでその欄に書き込みが入る。


 勇気を振り絞って少し書いてみると、『書き込んでくれてありがとう』の一言と書いたものに対してのコメントが添えてあった。


 その時に書いた内容は忘れてしまったが、先生は私がその欄に書いたことがとても嬉しかっただろう。


 また、私はもちろんのこと、生徒達は先生が1人1人のそれを読んでくれていることが嬉しく思っただろう。


 そのことがきっかけで少しずつではあるが、そのノートの日記欄に書き込みをしていき、何も書かない日が少なくなっていった。


 その内容は今でも覚えている。


 ちゃんと文章ではなく、箇条書きではあったが……。


 私は当時、読書とラジオを聴くことが趣味だったので、読んだ本の紹介や聴いたラジオ番組の紹介を書いた。


 そんなこんなではあるが、そのノートを書いても作文が苦手なところは相変わらずだった。


 そして、中学3年生になり、高校入試という大きな壁が立ちはだかった。


 教室中は受験モードに入り、推薦入試(今は名称が変わったみたいではあるが)か一般入試にするかや志望校はどうするかなどと休み時間も進路の話ばかりであった。


 12月くらいに校内推薦をいただいたため、試験内容を調べてみると面接と作文。


 やはり、作文は避けられないか……と思った私は国語の先生に相談してみた。


「私は作文が苦手ですが、短期間である程度書けますか?」

と相談してみた。


「すぐにある程度までとは言えないけど、黒川さんは作文を書くときに一番最初に何を書くか凄く悩む方でしょう? まずはそのテーマに関して書きたいことを箇条書きしてみて、文章にする練習から始めよう。きっとかけるようになるよ」

と答えてくれた。


 書きたいことを箇条書きにしてみることは上記の通り経験していたので、いろいろなことを書き出し、一番文章にしやすいものを選んで書くというやり方。


 そのやり方は私にはあっており、少しずつ文章にしていく練習をした。


 『生活ノート』も箇条書きではなく、凄く下手でも少しずつ文章にし、具体的にしていくように心がけた。


 学校の入試対策や個別指導だけではなく、いろいろな先生からテーマをもらって家でも書く。


 少しでも上手くなりたい、手早く決まった時間までに書けるようになりたいと思い、毎日受験勉強と合わせて作文練習にペンを走らせ、先生から赤ペンで指摘されたところはメモを取り、何度も何度も自分に言い聞かせた。


 推薦入試前日にはある程度書けるようになり、先生から赤ペンで指摘されたのは誤字などの細かな部分で作文練習を終えた。


「黒川さん、短い期間で書けるようになったね! これなら大丈夫だから、安心して試験を受けてきてね」


 その先生の一言が凄く嬉しかった。


 翌日、推薦入試本番。


 作文は面接の前に行われ、テーマは『中学校時代に頑張ったこと』。


 それを見てやったことがあるテーマだったので、練習した文章がぶわっと作文用紙に浮かんできたようだった。


 浮かんできた文章に付け加えるように私の気持ちを少し入れて……。


 時間に少し余裕があったので、誤字などがないか何度も見直し、作文の時間が終わり、面接もなんとか終了。


 高校に無事に合格し、今度は春休みの課題からの実力テストに作文の問題があった。


 あの頃のような苦手意識がなくなり、作文を書くことが好きになった。


 その2年後、高校3年生の5月に小説を書き始めたことは別の話……。



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