終了、始まったのは魔法使いのいる日常。
校長室は、生徒はめったに入らない。
ただ、入学式の日の学園探索の時に開放されて見る事が出来るくらいだ。
その校長室に、なぜか私はいた。
「さて、落ち着きましたか? アルトさん」
「……はい」
目の前で優雅に紅茶を飲むのは、なぜか万年笑顔で糸目の校長、風守眞弓良だった。
その横では、あのきちがい変人の音川。
それにしても、本名なのか疑わしいわ。
親戚集まっても、こんな目立つ金髪の人なんていないし。てか、名前は?
あの後、歪みの間に入ると、校長室についた。
伊莉那と心麗は、白いフードで顔を隠した不審者のような人達によってどこかに運ばれて行った。
どう見ても医者には見えなかったが、校長が何やら指揮していたので大丈夫だろう。と、思う。いや、思いたい。
「で、なんなんですか? あの人も、あの場所も、あんなの……一体私は何に巻き込まれたんですか」
「まあ、落ち着きなさい。君は魔法を信じるかい?」
「し、信じません。だって、そんなもの、科学力を持ってすれば全部説明できます」
そうだ、魔法なんて、ない……と思っていた。
思っていたかった。
「そうですか。しかし……この世界に魔法は存在します。人々が霊と呼ぶ存在も、仮想上の生き物も」
「……」
ゆ、幽霊が、いる?
仮想上の生き物?
じゃ、じゃあ、さっきの巨大なクモのも……?
「そして、貴方は、その才能を持っています」
「…………は?」
こ、校長?
よ、よく意味がわかりません。
超展開しすぎです。
「貴方は、類い稀なる風術師の才能の持ち主なんです」
「だ、誰が? 私が? いや、そんな事、在り得ないでしょ?!」
「まあまあ、落ち着いてください」
「落ち着けるか!!」
魔法だのなんだのなんだってんですかっ?!
それでマホウノサイノウガアル?
「絶対、ありえないっ!!」
「そして、彼等にとって護身の術も対抗手段も無い貴方は、格好の餌食なんです」
「スルーですかっ?!」
校長、華麗にスルースキルを発動してます。
にこにこ笑っているけど、こっちはまったく笑えないんですけどっ。
「視たでしょう? 異形の化物を」
「……あの、蜘蛛ですか」
「はい。あの蜘蛛です。あれは、狂った精霊、スティニー・エレメンタル。中級の禍物ですね」
「?」
そう言えば、心麗もそんな事を言っていた気がする。
が、しかし、何を言っているのかまったく分からないのですが。
「今回の事で、貴方をこれまで守っていた結界の効力を無くしました」
「は? 結界?」
「これから、今日のようなものが沢山あなたを狙ってくるでしょう」
「え? ナンデスッテ?」
「貴方が立派な魔法使いになるか、死ぬまで」
誰が、何に、何で?
5W1Hを下さいっ!
「だから、貴方に二つの途を示します。このまま、何もせずに彼の保護を受けるか、魔法使いとして学ぶか」
「ちょ、ちょっと待って下さい! なんで、ていうか誰なんですかこの人! 先祖だとか何とかへんなこと言ってますけど?!」
「いや、だから、オレはお前の先祖だってば」
「あんたに聞いてない!!」
そもそも、どう見ても未成年が何を言う。
寝言は寝て言え!
「しかし、アルトさん。本当なんですよ。彼、私が学生のころからその姿ですし」
校長は、突然立ち上がると机に向かい、引き出しから何かを出した。
「ほら」
見せられたのは、古臭い写真。
そこに、ものすごく若い校長の姿と……。
「な……」
「ほら、オレだろ?」
音川の姿があった。
しかも、まったく外見変わっていない。
「因みに、ここにいんのお前の母親な」
「か、母さんっ?!」
よく見ると、何人かいる中に、知っている人がいると思ったら、お母さん?!
「オレの事も、お前の事も、もうお前の両親は知ってる」
「えぇっ?!」
うちのバカップルはこの事知ってたの?!
「因みに、最近の不思議な事件事故は全部お前の力に惹かれてやってきた禍物の仕業だ。それをわからないように細工すんの大変だったんだぞ」
「うそ?! まさか、あの事件の数々は本当に私のせいだったの?!」
「うん」
「軽っ」
いやあ、大変だったなあ。
なんてうそぶく音川に、なんとなくいらっときた。
「じゃあ、やっぱり私……怪奇少女だった訳……?」
「は? まあ、そう言う事じゃないか?」
なんだろう、もう立ち直れない。
幼少期の時の事を思い出して、気を落す。
「彼に任せておけば、大抵の魔害物から貴方を守ってくれますよ。腕はおりがみつきで保証します。もしも、それが嫌なら丁度いい先生になれる魔法使いも紹介しますよ」
「ちょ」
ってこれ、もう私が守られるか魔法使いなんてものになるか前提じゃない!
校長はにっこりと笑い一瞬目を開けて……何か試すような目で言った。
「さあ、どうしますか? 音川のアルト」
「オレに一生守られるか、魔法使いに――風術師になるか」
「さっさと決めてくれると助かる」
それに私は―――拳で答えた。
あの日から、私の視る世界は変わった。
簡単に言うと、あのまがものとか何とかいう化物を視れるようになった。
ここ数日で気づいたんだけど、幽霊も。
うん。
すごく、困る。
なんていうか、ちらちら視界の端で幽霊とかあの自称ご先祖様とかいるんだもん。
特にあのご先祖様とやら、どうにかしてほしい。
困る。
「おはよう、アルトちゃん。まだ魔法使いになる気ないの?」
正面門をくぐり抜けると、心麗が走ってきた。
「おはよ……もう、なんど聞いてもないよ。てか、魔法なんてあるわけ無い!」
「いや、もう認めようよ……」
あの後、心麗はすぐに学園に戻ってきた。
血を流すほどのけがだったような気がするが、大丈夫らしい。
因みに、心麗は校長の事や音川の先祖だとかいう人の事を知っていた。
まあ、自分魔法使いですなんて言ってるからには、そうだろうと思ったけど。
そして、私はまだ魔法を信じていなかった。
だってあんなのある訳ないし、きっとあれは幻だったんだよ! なんて魔法を認められずに、まだそんなことを言っている。
「でも、は……音川さんの保護も断ったって――」
「あら、また二人で秘密のお話?」
振り返ると、入院していたはずの伊莉那が普段通りに佇んでいた。
「イ、イリナっ。退院したのっ?!」
「えぇ。つい昨日ね。それにしても、階段から足を滑らして頭打ったとか聞いたのだけど……記憶にないのよね。アルト、見てた?」
「いいい、いや、見てないっ」
何か知らないけど、伊莉那は記憶を操作された、らしい。
伊莉那は魔法使いも魔術師も知らないから、なんて校長は言っていた。
「それよりも、心麗、知ってる? さっき先生に聞いたのだけど、今日、私達のクラスに転校生が来るんだって」
「うん。昨日聞いたから知ってる」
「え? そうなの?」
ん?
なんで、心麗はうちらのクラスの事を知っている。
「あれ? アルト、知らなかったの?」
「え?」
「だって、その人の名字って――」
その日、転校生が来た。
ざわめく教室の中で、呆然とそいつを見た。
「な、なんであんたが居んのっ?!」
金髪碧眼。
なんだかんだで先祖だか何だか言ってるあの
「音川! ぶん殴ってやったのに!!」
「いや、だって、言っただろ? オレが一生守るって」
「うわああっ、教室で普通に言うなっ!!」
思わず、後ろを見た。
そこにいるのは、黒い笑みを浮かべている幼馴染……。
「アルト。ソレどういう事か、仏の伊莉那に全部話してみようか!!」
「きゃあああ!!」
これにて、第一話終了。
次回、第二話始動、もしくは番外となります。
お読み下さり、ありがとうございました。




