表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
現在、魔法使いは絶滅危惧種です。  作者: 絢無晴蘿
第一話 「お前には、二つの選択肢がある。オレに一生守られるか、魔法使いになるか」
8/42

二択、選択できない選択肢。







「あ、れ……?」


視界が、明るくなる。

突然、見えていた世界が変わる。


「きもっ」


前にいたのは、クモだった。

正確にはクモでは無い。

普通ではありえない、人間ほどの大きさで、まるで鎧のような体。

さらに気持ち悪いのは、顔があるはずの場所に、人間のような顔がある。

所どころに針のような突起物が妙なテカリを見せている。

そのクモからでた、しろいねばりつく糸が私の体を拘束していた。

辺りの椅子も、伊莉那と心麗にも、その糸が絡まっている。

これが、見えなかった何かかっ。

あのクモは、この糸を使って椅子を飛ばしたりしていたのか。

また、糸を飛ばした。

それを、転がって避けた。

避けた先は、割れたガラス。


「いっ」


転がった拍子にガラスが手や足を切った。

しかし。

大きなガラスを……。

右手で大きなガラスを掴むと、体と左手を拘束している糸を切ろうとする。

しかし、ぐいっと糸が引かれて体のバランスを崩す。

糸を、あの化けクモがひっぱっているのだ。

必死て抵抗しながら、ガラスで糸を切る。

しかし、なかなか切れない。

抵抗も空しく、クモにどんどん近付く。

「っ……切れた!!」


間一髪で糸が切れた。

自由になったその瞬間、持っていたガラスの破片をクモに投げつけて、棚の元へ走る。

壊れた棚には、幾つもの薬品がところ狭しと並んでいた。

それを、いくつか掴んで、何も考えないでそれをクモに投げつけた。

たしか、この中には取扱注意の薬品があったけど、問題ないでしょ。こんな非常事態だし。

思いっきり投げつけると、瓶が割れて独特な薬品の匂いが漂う。

さすがに有害なガスが発生しないようにと注意深くラベルを見ながら、瓶を投げつける。


「いたっ」


手を、ガラスがざっくりと切った。

血が流れる。

手の傷を見ようとして下を向いて、ようやく気づく。

周りに、小さなクモがいた。

何時の間にか、テーブルや棚の間にクモが集まっていたのだ。

気づかれたとわかると、一斉に糸を放出した。

一本ならどうにか逃げられたが、一斉に放出された糸に避けきれず絡まる。


「あっ」


手が、使えない。


「アアァアァァ。ツカマエタ」

「――っ」


嫌だ。


近づいて来る大蜘蛛に、思わず後ずさりした。

しかし、糸が行動を阻む。


「……ぁ、……けて」




誰か、助けて――




すぐ上の階で、轟音が起きた。

まるで、何かが思いっきり叩きつけられたように。

上から、埃やなにかしらの欠片が落ちてくる。


「ナニッ?!」

「なっ、えっ?」


上を向くと、天井にひびが入っているのが見えた。

そんでもって、もう一度、揺れる。

先ほどとは比べ物にもならないほどの埃が落ちてきた。


「きゃああ」


三度目に、天井が壊れた。

大量のがれきと共に、黒い影が落ちてきた。

そのまま、クモと私の間に墜ちた。


「うわああっ、あ、あれ? おお、成功っ!」


舞いあがった埃がようやく落ち着くと、彼の姿をしっかりと見る事が出来た。

鮮やかな金髪に、碧眼。

今日、なんどか見た人だ。

私と同じかそれ以上かぐらいの年で、なぜか大きな剣を持っていた。


その彼が、私を見つけると笑った。


「よう、久しぶり」

「……は?」


誰?


「まったく、こんな事になるなら、あいつも連れてくればよかった。そうすりゃ、すぐにおまえん所にこれたのに」

「……」


何言ってんの、この人。

し、知らない人なんだけど、久しぶり?


「ん、あぁ、そっか」


彼は、ちらりとクモを見ると剣を振り上げる。

その剣の周りに炎がまとわりつく。


在り得ない。

だって、火なんてさっきまでなかったのに。

そのまま、剣を振った。

切りつけてもいないのに、クモは真っ二つに引き裂かれる。

最後の悪あがきとでも言うように、彼に向かって体が傾ぐ。


「まったく……」


が、炎が燃え上がった。

そのまま、灰も残らず燃やしつくす。


全部、一瞬のことだった。

唖然とする私に、彼は言った。


「さて、こんな場所じゃ、話ずらいだろ。それに、あいつらの手当てもしないといけないし」


あ、忘れてた。

気絶したままの伊莉那と心麗の存在を、思い出した。


「行くぞ」

「ど、どこに?」

「元の世界に」


目の前に、黒い歪が開かれた。

……もう、何があっても驚かないよ。

なぜか、そこの歪の向こうに校長室が見えている。


「そうそう、それと……丁度いいから今、聞こうか」

「な、に?」


彼は、ゆっくり私の目を見て言った。


「お前には、二つの選択肢がある。オレに一生守られるか、魔法使いになるか」

「……は?」

「さあ、選べ」


えっと……。


「結構前に一回聞いてるだろ? ほら、さっさと選べ」

「……」


この人は、何を言っているのだろうか。

まほうつかい?

なにがっ。


「ほら、どうした?」


こちらの様子に気づくっことなく、にこにこと聞いてきやがる。


「どうするんだ?」


それに私は……。


「意味不明だ!」

「ぐはっ」


彼をぶん殴った。


「近づくな! 変質者! あんた、誰? てか、なんだっていうの?!」


なにが、一生守るだ、魔法使いになれだ。

おかしすぎるでしょ、その二択!

ふざけんな!


「いや、オレは、その」

「頭逝かれてんじゃないの!!」

「いや、ちょっと待て! オレは……お、音川! 音川だ! お前の、アルトの先祖のだけど血の繋がらない先祖です!!」


……音川?

先祖?

しかも血の繋がらない?


「もっと意味わからんわぁ!」

「マユラ! マユラ! 聞こえてんだろ?! 助けろ!」



魔法使い?

ありえない。

そんなの、いるはずがないっ!!




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ