表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
現在、魔法使いは絶滅危惧種です。  作者: 絢無晴蘿
第一話 「お前には、二つの選択肢がある。オレに一生守られるか、魔法使いになるか」
5/42

異変、それは唐突に起こるもの。




南部活動棟、通称ぼろアパート、もしくはお化け屋敷。

そこの一階に神楽同好会はある。



「最近事件事故多いよね」

「そうだね」

「特に、誰かさんの近くで」

「……悪うございました」


がらくたが積み上げられた部室で、ソファに座りゆったりとくつろぐ伊莉那を睨みながら、私は買ってきてあったスナックを開けた。

神楽同好会部室。四畳半くらいあるその部室は、かなり生活感がある。

ちょっと古いソファにテーブル。肘掛椅子が二脚に毛布やまくら。漫画やら小説やらが並ぶではなく積み上げられた本棚に、ガラクタが大量に散乱していた。

主に、私達の私物。先生たちには内緒さ。

けっこうばれていて、黙認されているだけなのも内緒さ。


「でも、最近は本当に多いらしいよ」

「ふぅん?」


なぜか新聞を読んでいた心麗が、顔を上げる。


「なんかね、最近犯罪とかアルトちゃんが今朝出くわしたような事故とか、あと、女子高生の誘拐とか、多いみたい。アルトちゃん気をつけてね」

「む。了解です」


でも、なんで君は新聞を読んでいるんだ。そもそも、どこから持ってきた。

まさか……家から?


「心麗ってば、休日のおじいちゃんか!」

「えぇっ?! い、イリナちゃん、おじじさまはもっとかっこいいよ!」

「ねえ、君達。論点違うよね、それ」


心麗はなぜか『おじじさま』とよぶおじいちゃんを信仰している。

いや、本当に信仰している訳ではないけど、信仰に似た尊敬の念っぽいのを抱いているみたい。

時々、話題に上がる。


「会ってみたいわ、心麗のおじじさま」

「ほんとっ? 今日、家に来る日聞いてみよっかっ?」

「あら、家に住んでないの?」

「うん。なんかね、世界を旅してるんだって!」

「ふぅん」

「へー……って、なにそれっ、今の時代に世界を旅?!」


なんて言うか、さすが心麗のおじいちゃんというか。

世の中、いろんな人がいるもんだ。


「そうだよ。でも、携帯持ってるし、連絡は取れるよ。あ、そう言えば、今度来るかもって……っえ?!」


突然、地面が揺れる。

あまりの揺れに、地面に手をついた。


「なっ、なっ」

「うあああっ?!」


な、なに?

地震?

地面から唸り声のような音が響くのがわかる。もともと古くて老朽化の進んでいた南部活棟は、鴬張りの廊下もびっくりな音を立てて軋む。


まさか、つぶれたりしないよね?

まわりの本やガラクタが棚から落ちたり崩れていく。

たしかあの中に、初回限定版のCDとか置いたままだった気がするっ?!

いろいろな不安の中で、床に頭を守りながら座り込んだ。

と言っても、本当に一瞬。

永そうで、本当に短い時間だった。


「わ、止まったかな?」

「みたい、だね……こ、こわかったよ……」


ふと見ると、心麗は新聞紙を抱きしめていた。


「高二には見えないよね、アルト」

「うん」


高所恐怖症の私が、タワー行った時の姿を言われると何も言えなくなるけど。


「ひ、ひどいよ、イリナちゃん、アルトちゃん」


自身が嫌いらしい心麗は、涙目になりながら抗議した。


「とにかく、外いこ。余震あったら怖いし」


また地震があったら、今度こそつぶれそうだし。このアパート。

ほんと、いつ建て直したりするんだろう。





外に出たとたん、異変に気づいた。


「あれ?……誰も、いない?」


心麗が心細い声を上げた。

よく考えて見れば、あれだけ大きな地震があった時点で避難の放送があったはずだ。

放課後とはいえ、私達のような学校に残っていた人はたくさんいたはずだし。

なのに、誰もいない。

おかしい……?


「あら。まるで、この世界にいるのがうちらだけみたい」

「こ、恐いこと言わないでよう……」


縮こまっている心麗に、伊莉那はクスリと笑う。


「まあ、どうにかなるでしょ」


その自信はどこからきているのだろう。分けて欲しい。


「とにかくさ、誰かいないか探そう?」

「そうね」

「う、うん。あ、ちょっとまって」

「え?」


突然、心麗は南部活動棟に戻って行ってしまう。


「ちょっと、『おかしもち』はどこ行ったの!」


たしか、地震があった時には、合言葉のおかしもち『押さない駆けない喋らない戻らない近寄らない』だったはず。

おもいっきり戻るとか、それでいいのか心麗。


「大丈夫だから!」


そう言って、一分もしないうちに戻ってきた。

なぜか、自信満々で。


「……なにしてきたの?」

「いや、ちょっと、お守り持ってきたの」

「ふうん……」


乙女だ。

どこで道を間違えてしまったんだ、心麗!

そう言えば、小学生の時にあんな事やこんな事を……そのせいっ?!

心麗がこうなったのは、私達のせいかもしれないな。

ちょっと、これからの心麗の将来が心配になった。


「アルト、どうしたの? 行きましょ?」

「あ、うん」


伊莉那にせかされ、とにかく歩きはじめようとして足が止まる。


「あ……」


まただ。

校舎の窓。そこから、お昼に見た鮮やかな金髪の人がまた見えた。

すぐに、壁に隠れて見えなくなるけど、きっと、あの人だ。


「ちょっと、アルト?」

「あ、ごめん」


なぜか、それを二人に言えなかった。


「でも、どこに行くのさ?」

「まあ、やっぱり基本はグランドじゃない?」

「あ、そっか」

「そういえば、避難するときは、グランドに行くんだよね」

「そうそう」


南部活動棟から、グランドはまあまあ遠い。

歩いて三分程度だろうか?

その間に、中央管理棟を通るが、やはり生徒の姿はもちろん、先生も職員も誰もいない。

なんとなく薄気味悪い校内を通過しようとする。


「ねえねえ、今、声聞こえなかった?」

「え? さぁ、聞こえなかったけれど」


なぜか、そこで心麗が止まってしまう。


「どうしたの、心麗。恐いの?」

「うんうん。違う。ただ……やっぱり」

「やっぱり?」


何がやっぱり? え、ちょっと、なんか怖いんだけど?

そう聞こうとした時、風が吹いた。

心麗がばっと手を伸ばして腕をつかむ。そのまま、結構強い力で引き寄せられた。


「きゃあっ?! ちょ、シンリ?」


び、びっくりしたっ?!

いきなりの事に戸惑いながら、隣を見た。


「あ、え……? イリ、ナ……?」


いない。

さっきまで、確かに隣にいたのに。

居ない。


「な、なんで? ちょっと、どこに隠れたのっ?!」

「お、落ち着いて、アルトちゃん!」

「で、でもっ。なにさ! こんな時まで意地悪しなくてもっ」



カツーン


「?」


音がした。

なにか、嫌な予感しかしない、不吉な者の音。


伊莉那は、どこに行ったの?

後ろにいるのは、何?

解らない。

なにが起こっているのか分からない。


ただ意を決し、後ろを――見た。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ