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現在、魔法使いは絶滅危惧種です。  作者: 絢無晴蘿
第六話 後 「だって、水を氷にするのは、冷えた場所なら何処でもいいじゃないですか」
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ちょっとした真実と魔法使い 1

三日連続更新……だ、と……?!


初めて見た世界は……よく覚えていない。

ただ、歪んで見えた。

幾つもの気配がして、こちらを見てくるのがわかった。


でも、失敗だった。らしい。

それからは、ずっと、一人っきりだった。

あの子に会うまでは。



でも、もうなんでも良かった。

もう、消えてしまえばいいと思った。

いや、今も思っている。

今も――……。



この世界は、とっても歪んでいる。

水越しに見なくても、とっても歪んでる。

でも、それでも、彼は……








廃屋の中を、私と小時朗は覗きこんだ。

「ほんとに、ここにシンリが居るんだよね?」

後ろのプシュケは、無言でうなずいた。

なんだか、人いなそうだけど……。


「おい、ここ……」

「?」


小時朗が、何かを持ってきた。

掛け看板か何かだろう。


「これ……けい、むしょ?」


確かに、そう書いてある。

なんで、刑務所?


『ここから先は、わしでも何があるのかわからない』

「つまり、何も分からないまま行けと……」


ゲームならどんどん行くんだろうけど、これはゲームじゃないし。

むしろ、生死がかかってるし、慎重に……。


「あ、ここ階段あるぞー」

『この先、誰かがいる気配がするな』

「よし、上がってみよう」

『ふむ、この罠は作動するととても面白そうだ』

「おおっ?! すげえ、なんかすげえ!!」

「……」


こいつら……。

つい、殺意が湧きました。




「じゃあ、一番上の二階から調べて行こうか」

『はい……』

「おう……」


私は、しゅんとしたプシュケと小時朗を従えて、階段を上がって行った。

何があったのかは、秘密だ。

先ほどプシュケの見つけた罠は、触らない様にして階段を上る。

二階は、閑散としていた。


「なにも無さそうだな……」


この刑務所を閉鎖するときに、荷物はあらかた持っていったのだろう。

物が散乱するほど多く置いてない。

残された机た家具が転がっているだけだ。

いくつかの部屋を入っても、ここ最近人がいた気配はない。


「じゃあ、一階か……」

「ねえ」

「なんだ?」

「こんな事してていいのかな」

「こんな事?」

「……シンリを攫ったのは、魔法使いだったんだよ。しかも、何人もいた。私は魔法使えないし、小時朗だってそうでしょ? プシュケはなんか出来そうだけど、三人でシンリを助けられる?」


むしろ、捕まって他の人に迷惑かけるだけのような気がする。

もっと悪い事に、死んでしまうかもしれない。


「でも、このままだと水埜が危ないんだろ?」

「……音川輪とかに任せておけば」

「でも、それでいいのか?」

「……」

「折角ここまで来たんだし、なんでもやってみようぜ?」

「コジロウって……」


なんだか、ほんと人ってわからない。

ただの不良だと思ってたら、お前は冒険に夢見る男の子か!

……なんだか、羨ましい。

私は、魔法とか冒険とかに、夢を見られなかったから。


「そう、だね。そう言えば、今日バイト無いの?」

「え?……あ……」


面白いほどに、顔色が悪くなっていく。

あっちゃあ。あったのか。


「やべえ……」


なんだか、可哀想なほどだ。


「だい、じょうぶ?」

「だ、大丈夫だ、問題ない」


それ、死亡フラ……うん。


二階から下りて、一階に行くとまた部屋の中を散策した。

やっぱり、二階と同じで物が無い。

人がいる気配もない。


「本当に、ここにシンリが居るの?」

『もちろん。信じられないのか?』

「いや、でも、誰もいなそうだし」


二階も一階も、何もない。

あらかた部屋を見終わると、最初の入口に戻ってきた。


「なんにもなかったね」

「ここじゃ無いんじゃ……」


プシュケは、ぷいっとそっぽを向いてしまった。


「でも、おかしくねえか?」

「なにが?」

「ここ、刑務所、なんだろ?」


さっきの看板をもう一度拾って、そう言った。


「でも、何処にも独房とかなかったぜ?」

「あ……」


そう言えば、全部普通の部屋だった。

事務室だったり、客室っぽかったりしたけど、捕まった人の部屋が無い。


「でも、一階も二階も何もなかった……」

「とすると、地下、とかか?」

地下……。

思わず床を見ても、何もない。


『一つだけ、方法がある』

「え……」

「なにがだ?」

『どこに彼等が居るのか分かる方法だ』

「ど、どうするの?!」

『……誰かが、あの罠を起動させる』


あの罠って……階段にあったやつ?

ちなみに、あれ以外にもいろいろあったのだが、それは全部プシュケが教えてくれた。

たしかに、罠を起動させれば、誰かがそこに来るかもしれない。と言っても、原始的な罠だとしたら、何日も放置されそうだけど。

とりあえず、上手く言ってわざと捕まれば、心麗の所に行けるかもしれない。


「じゃあ、私が――」

「ダメだ」

「え」


にべもなく、小時朗は言い切る。


「お前、顔知られてんだろ? だったら、オレの方がいい。それに、女の子がそんなことすんな」

「はあ……」


む。

男女差別反対!

でも、ちょっとびっくり。


「二人は隠れてろ」

「う、うん」


プシュケと一緒に、扉の影に隠れた。

そして、小時朗は躊躇いもなく罠を作動させる。

と言っても、階段につけられていた細い紐に触っただけなんだけど。

それでも、その紐は簡単に切れた。

そして――


「誰だ?!」


誰だろう。

見た事のない男がどこからか現れた。


「っ? 誰って、お前こそ誰だよ」


小時朗が振り返って、警戒する。

が、遅い。

他に何も言う暇もなく、小時朗はのされてしまった。

早っ。

ちょっとがんばってみようよ!

それにしても、男の人が出て来るの早かった。早すぎだ。まさか、ここまで上手くいくとは……。


「コ、コジ――」

『こら、だまっとれ』

「で、でも……」

『声を出せば、ばれる。あの小僧の意味が無いだろ』


でも、大丈夫かな……。

し、心配だ。

よくプシュケは平然としていられるな……。

そんなこんなでも、小時朗は男に担がれていく。

すごい。

小時朗だって男だから、かなり重いはずなのにあんなに軽々と。

とにかく、追いかけないと。

行ってしまった二人を、私とプシュケは静かに追おうとした。


「まったく、こまった子どもたちだ」


そんな言葉の後に、何も分からなくなった。












「ランロウ、テメェ、どういうつもりだ!!」


筋を立てながら詰め寄った輪に、ランロウは嘲笑う。


「そんな事言ってる暇あるの? そんな暇があったら、あの子を追えば?」

「っ!!」


正論だ。

まったくの正論だ。

ランロウなんて存在を相手に取っていたら、絶対にアルトが危ない。

彼女は自分の事も、こちらの事もよくわかっているのだ。

面倒な事に、様々な事をわざわざややこしくする。


「くそっ、後で覚えてろ」


何を考えているのか未だにわかんねぇ。アイツ、何様のつもりなんだ。

いや、風の大精霊様だけど。

そんなことを考えながら、輪はもう一度校長室へと走った。



「まゆら!!」


校長室は、先ほどとまったく変わって無かった。

すぐに戻ってきた輪に驚き、その様子に何かあったのではと気付いたようだ。


「なにがあったんですか?」

「アルトが、ランロウに飛ばされた」

「はい?」


意味がわからないんですけど……。

そう、真弓良が困ったように眉をひそめる。


「ランロウに、心麗が捕まったと思われる所に飛ばされたんだっ!!」

「な、なんですってっ?! どどど、どうして!!」

「知らねっ。しかも、小時朗も一緒に飛ばされたらしい」

「なっ……」


みるみるうちに、真弓良は真っ青になった。

しかし、考えようにはまだ救いがあるかもしれない。アルトは本当に魔法使いについて基本的なことしか知らない。しかし、なぜか小時朗はそういう知識が中途半端だが有るらしい。しかも、魔法を無効化させる体質だとも聞いた。


「オレも心麗救出に行く。場所教えろ」

「は、はいっ」


世界地図と数枚のどこかの国の地図を出すと、真弓良は指を指す。


「新フィンドル王国の厳重警戒保護地域、旧魔束刑務所の跡地……です」

「ぶはっ」

「ど、どうしました?」

「……フィ、フィ、フィンド、ル、だと?」


三協国として有名な、新フィンドル王国。

元々は長い名前の国だったのだが、何十年か前に三つに分かれた国だ。

なぜか愕然としている輪に、真弓良は首をかしげる。


「えっと……フィンドルがどうかしましたか?」

「オレの……その……生まれた国だ」

「え」

「ま、まあ、昔のことだし。うん」


そうだ、もう何年も昔のこと。本当に、昔のことだ。

最初こそ衝撃を受けたが、大丈夫。落ちついている。

そう自分に言い聞かせながら、輪はその詳細を書かれた地図を受け取った。


「よし、行ってくる」

「はい……気をつけて。音川さん達を、お願いします」

「……おう」



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