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現在、魔法使いは絶滅危惧種です。  作者: 絢無晴蘿
第六話 中 「ちげええっ! オレ、ぞんびじゃないからっ?!」
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風と秘密と問題と 5





眼を開けると、真っ暗だった。

何も見えない。

ただ、手を彷徨わせると鉄の棒があった。

幾つも立てられている。まるで、檻のようだ。

いや、檻なのだろう。


「あ、プ、プシュケっ、どこ?」


そうだ、僕は捕まったはずなんだ。プシュケも一緒に。

でも、何処にもいない。気配も感じられない。

魔具を探してみるけど、何もない。


水埜心麗は、呆然と周囲を見た。


「……プシュケ、大丈夫かな」


プシュケは一緒にいないと、消えてしまう。

そういう、契約だ。


「別々に捕まってるのかな……?」


どうしよう。おじじさまはあの祭のあとはたいていいない。

そう言えば、アルトちゃんはどうしたんだろう。

まさか、アルトちゃんも捕まった?!

うわあああ、どど、ど、どうしよう。

いや、待て。

落ち着け自分。

落ち着いて、よく考えてみないと。


だいぶ混乱している心麗は、とりあえず深呼吸をする。


そうだ。

とにかく、此処どうなのか見て見よう。

暗いので、四つん這いで辺りを捜索して見る。

暗くてわからないが、出られるところはなかった。

一方を壁で、三方を鉄格子で囲まれている。

横にも幾つか檻が並んでいるのかもしれない。

しかも、魔法は使えないように魔法封じが檻の壁や床に書いてあるのがなんとなくわかった。

魔法を使おうとしても使えない。


「えっと、魔法封じは魔法使い連盟の許可が無いと創れないことになってるんだよね。そもそも、創れる人が少ないし」


許可された場所は、きちんと登録されている。

以前、それを見せてもらったことがある。

魔法封じのある施設は、研究所や病院がある。

今回は、どこかの研究所だろう。


「こんなに暗いって事は、地下……?」


地下に魔法封じがある研究所というと、何処だろう。

もしかしたら、研究所じゃないかもしれない。

檻が並んである。しかも、地下。


「刑務所……?」


以前、聞いたことがある。

魔法使いを捕まえておく為の特別施設があると。

しかし、設備が古くなったためにそこを封鎖して新しい刑務所を作った……と。

もしかして、そこ?

だとしたら、脱走は不可能に近い。

だって、古くなったとはいえ凶悪な魔法使いを捕まえておく為の刑務所の檻だ。

それを自分ごときが破る事なんてできない。


「どうしよ……」


そもそも、誘拐したのが誰なのか、なんの目的なのか分からない。

目的は、アルトだと思っていたから、自分が誘拐されたことが考えられない。

そんな事を考えていると、どこかからドアの開く音が聞こえた。

それと共に、光が差し込み、誰かが入ってきた。


「水埜心麗……」


声が、聞こえた。


「君には――死んでもらう」








「ううぅ……」


よ、酔った……。

目が、目が回る。

ふらふらだ。

なんとか眼を開けて状況を確認する。


「……ここ、どこ?」


ああ、なんか馴れてきた。

非日常に馴れるって、嫌だな。

なぜか、倒れた体の上に古い扇が置いてあった。

なんでここにあるのだろう。

その扇は、どう見てもあの祭の夜に拾ったものだ。

たしか、輪にその話をするのを忘れて、学校の鞄の中に入れっぱなしだったはずだ。


「おい、音川、大丈夫か?」

「う、うん」


そう言えば、小時朗も一緒だったんだっけ。

さらに、プシュケが不機嫌そうに人型になって倒れていた。


『まったく、あ奴……』


そう言って、髪に絡みついていた葉っぱを鬱陶しそうに取っていく。

周りは、背の低い木が生えていた。

その中の一つの上に、落下したようだ。


「って、なんでプシュケが?」

『……ランロウに無理やり飛ばされた』

「へ、へえ……」


でも、魔法初心者の私と小時朗だけが飛ばされたよりはいいかも。

因みに、飛んでいた時の記憶は前回同様ない。

うん、なくっていいよ。


「一体、ここは……」


立ちあがると、少し先に大きな建物があるのが見えた。

古くて、放置された廃屋なのか、蔓が壁にびっしり生えて、さらにいくつかの窓が割れていた。


『あそこに、マスターはいる』


私が見ている事に気づいたのか、プシュケはそう言った。


「あそこに……って、ちょっと、何処行くの?!」


歩きはじめた小時朗を、慌てて止めた。


「どこって、そりゃあそこに決まってんだろ」


ああ、あそこね。

心麗が捕まっているという廃屋だ。

はあ。

なんだかもう、いいや。


「危険だと思うんだけど」

「でも、心麗があそこにいるんだろ? それに……わくわくする」

「は?」


えっと、小時朗って、こういう奴だったっけ?

いや、彼の事をよく知らないけれど、こう言う奴だったのか。

心麗を心配しているのはしているらしいのだが、言葉にまじる好奇心に苦笑する。


「オレ、冒険とかして見たかったんだ」


あー、勝手にやってください。

そういえば、彼は魔法使い同士の戦いを見たことが無かったのだと思いだす。

もしも昨日のアオイや音川輪の戦いを見て居たら、そんな事言わなかっただろう。

でも、ここに心麗がいるかもしれない。

プシュケの言葉が本当かも分からないし、あのランロウとかいう精霊がどうして私達をここによこしたのかも分からない。


「私も、行くよ」


ただ、もうここにいるのだ。よく解らない場所に飛ばされて、怪しげな廃屋が目の前にあって、そこに行こうとする同級生がいる。

何も知らないで、振り回されるのはもうこりごりだ。

自分から動いてやる。

そういえば、初めて音川輪と出逢ったあの時もそうだった。

四月のあの出来事が遥か過去になりつつあることに気づいて笑う。

あの頃、魔法なんて信じていなかったのに、いまじゃ魔法使いの勉強なんてしているのだ。笑いたくもなる。

とにかく、小時朗の後を追った。

が、付いてこない存在に気づく。


『……』

「プシュケ?」

『……まあ、目的は達成した、というのか』

「?」

『おぬしたちだけでは心もとない。わしも行こう』


よくわからないけど、ただ私は全神経を廃屋に向けた。

そこは、どこか不気味にそびえていた。



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