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現在、魔法使いは絶滅危惧種です。  作者: 絢無晴蘿
第六話 中 「ちげええっ! オレ、ぞんびじゃないからっ?!」
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風と秘密と問題と 4

それは昔むかしのお話し


ずっとむかしに、魔術師がいた

その魔術師は長命で、エルフの血をひいていた

でも、エルフではないから、仲間はずれ

人でもなかったから、一人ぼっち

誰も友達がいない魔術師

孤独で震える魔術師

たとえ友達が出来ても、みんな先に死んでしまう


ある日、目の前で不幸なことに人が死んだ

ふと、彼女は思う

そうだ、死んだ人を生き返らせよう

二度と死なない様に術をかけて

そうだ、どこかで誰かが言っていた『黄泉還りの不死』を創ろう

そしたらきっとさびしくない


そうして、魔術師はいろいろな人を殺したとさ

巻き込まれた人はたまったもんじゃないね





音川輪にゾンビ(オレはゾンビじゃねえ!!)であることをカミングアウトされた次の日。

私は、ふつうに学校にいた。

「……」

「ど、どうしたの、アルトっち……?」

「そ、そんなに落ち込んでいるなんて……は、恥ずかしい」

「……」

「なっ……あのツッコミのアルトっちがレミレミのボケにもつっこまないなんて……?!」

いや、だって、いろいろあって、ありすぎて……。


まだ、心麗はみつかってない。

音川輪は死んでいる。

それなのに、音川輪と私は普通に学校に来ていた。

私は、守られる側だから……。

魔法使い連盟とか何とかいう場所が、心麗を探してくれているらしい。その間、私は音川輪と数名によって保護と監視を受けるとか。


「強くなりたい……」


本気で、そう思った。

強くなれば、守られることもないし、いろいろ自分で対処できるし……剣道でも習っておけばよかったと後悔している。

魔法使い相手にどうにもできない気がするけど、それでも何も無いよりマシだ。

せめて、魔法が出来れば……。


「へ? い、いりなん……あるとっちどうしたっていうの?」

「さあ……今朝からあんな感じで。お弁当うばってもぜんぜん気づいてくれないのよ」


なるほど、持ってきていたおにぎりが二つ消えてたのはお前が食べたからか。

後で覚えてろ。


「いりなん……それは……」

「さすがに酷い」


そんな中、鐘が鳴って授業が始まった。


放課後、文化祭の準備を手伝わず、南部活棟に行こうとする。


「待ちなさい。音川アルト」

「?」


振り返ると、何人もの女子を従えた金髪横ロールの変な女子がいた。


「えっと、誰だっけ?」


なんか見たことある。


「っ。アズサよ! 真弓梓!」

「ああー、昨日の」

「そうよ! やっと気づいたのね」


後ろの女子がきつい視線で見てくるが、正直構ってられるほど心に余裕が無い。

話を聞いてあげられないほど疲れていた。


「そっか、よかったね。じゃ」

「ちょっと待ちなさい!!」

「……なに?」


もう、なによ。

こっちはいろいろいっぱいいっぱいなのに。

心の中でため息をつきながら返す。


「昨日、あなた何をしましたの?」

「え?」


昨日?

襲われて、音川輪がゾンビだってカミングアウトして……?


「あの暴風ですわ! 貴方の仕業でしょう?」


「あー、知らない。うん、じゃ」

だって、よくわかんなかったし、説明も今度するって言われたし。


「なっ、まちなさーい!!」

「待ってと言われて待つバカはいませんー」


ほんと、今日は疲れているのだ。

心麗の事が心配だし、音川輪は死んでたし。


「こらー!!」


なぜか追いかけてくる梓を撒くと、部室に向かった。

こう見えても足は速い。

早かったのか、みんな用があるのか、部室の中には、誰もいなかった。


『あ、部長さん』


と思ったら、紗莉沙がいた。


「はあ……」


幽霊か……。

とりあえず、荷物を置くと椅子に座りこんだ。

まだ、頭の中がぐちゃぐちゃで、どうにか整理したかったのだ。


『どうしたんです? 一応先輩に相談します?』

「あ……その……あなたって、魔法使いなの?」

『……まあ、ちょっとぐらいなら魔法は使えますよ?』


胸を張って紗莉沙は応える。

幽霊だけあって、なにかしら出来るらしい。


「じゃあ、なんで音川輪は死んでるのに生きてるのか知ってる?」

『あっ、その事ですか。えっと、……輪君は魔法でこの世に留まっているって聞きました』

「魔法……やっぱり魔法なんだ……」

『そうです。禁術とされる黄泉還りの術だと聞きましたですよ』

「ふーん」


全然知らないし、わからない。


『人を生き返らせるのは、いけない事なんです。でも、それを昔、してしまった人がいて、その被害者だって聞きました』

「……そう、なの?」


被害者……輪は、望んでああなったわけではないということのなか。

それを考えると、ゾンビとかいろいろいって悪いことしたかもしれない。


『不死になりたいって考える人って多いと思います。ずっと、生きていたいって。でも、輪君を見ていると、不死っていいことばかりじゃないんだっていつも思いますよ』

「そうなの?」


不死か。

歴史では、王様とかが不死になりたくていろいろ魔術とかへんなヤブ医者に大金つぎ込んで自滅したとかいう話も多い。みんな、永遠の命とか、あったら欲しいとおもうけど、当事者にとっては違うのだろう。


「……いつだって、彼は見送る側です。私も、何人も後輩を見送っていくうちに、辛くなりました。そろそろ成仏してもいいかなって思い始めましたし」


そう言えば、紗莉沙はなんで幽霊になったのだろう。ふと、思うが彼女はにっこり笑って秘密ですと人差し指を立てて口元に当てた。


「おい、音川、いるか?」

『きゃっ』

「うわ? す、すまん」

『い、いえ』


入ってきたのは、小時朗だった。

珍しい事があるものだ。

今度は、紗莉沙をさりげなく気遣いながら、入ってきた。


「昨日どうだった?」

「え?」

「昨日の祭」

「ああ……うん、すごかったよ。あ……これ、おみあげ」


ミニ食人植物だけど。

安く売ってたから、これでいいかって。


「え? うわっ?! おい、これなんだよ!?」

「噛みつくから気をつけてね。はあ……」


心麗、大丈夫かな……。

ほんとに……大丈夫かな……。

ふと、窓の外を視ると青白い蝶が飛んでいた。

なんか、見た事がある。

そう言えば、昨日……。


「プシュケ?!」


窓を開けると、蝶は部屋の中に入ってきた。

きれい。

その姿が、揺らいで少女の姿になる。

ただ、この前見た時よりも姿が薄い。

なんだか透けてる?

それに、存在感が無いというか……?


「え、こ、こいつ?」


ミニ食人植物に指をかまれながら、小時朗が驚いた声を出した。


「プシュケ。心麗と契約している精霊」

「へえ……」

『仮契約だ』


むっつりとプシュケが答える。


「そうなの?」


仮でもなんでも、同じだと思うけど。

契約とかの話はまだ教えてもらっていないからよく解らない。


「すげえ……」

『じろじろ見るな。わしがそんなに珍しいか?』

いや、珍しいだろ。

「でも、なんでここに?」

『輪はいるか?』

「いや……」


そう言えば、今日は珍しく居ない。

いつもついてくんのに。

いや、そもそも私を守るってことだから近くに居なきゃおかしいはずなんだが……?


『そう……』


そう言うと、ふらふらと姿を消してしまった。

なんだったんだろう。

って、待てよ。

彼女、心麗と一緒に戦ってたよね。

もしかして、一緒に捕まって一人でどうにか逃げてきた?!


『部長さん……あの子、危ないです』

「え?」


紗莉沙が慌てて言って来る。

危ない?

まさか、まがものかとか?


『あの子、消えかかってます』

「?」

「おい、音川。何かあったのか? そういえば、心麗は? 朝から学園の中で変な奴見かけたし」

「……」

「なにか、あったんだな?」


何も言わない私の様子に、小時朗はさらに詰め寄る。

どうしよう。

小時朗には……いや、小時朗に聞いて欲しい。

伊莉那には言えない。魔法使いではないから。でも、小時朗になら話せる。

一人で、もんもんとするのが辛かった。


「……シンリが、誘拐されたの」

「は……?」


うそ、だろ。

そう、小時朗は呟いた。


「その時、プシュケも一緒に誘拐されたはず……」

「ならっ、早く行くぞ!! プシュケに聞かないとっ」

「あっ……うん!」


外に出ると、青白い蝶……プシュケと誰かがいた。

見覚えがある女性……いや、精霊だ。


「……昨日の」

「こんにちわ、音川アルト」


たしか、ランロウ……風の精霊。


「ねえ、どこに心麗が居るか、教えてあげようか?」

「……」

「ふふっ。用心深いのかしら?」


当たり前だ。

知らない精霊に、ついていくわけ無い。それに、音川輪たちから彼女に関わらないようにと言われている。


「このままだと、殺されるわよ」


誰、と聞かなくてもわかった。

心麗だ。


「どうして知ってるんですか? 貴方は一体誰なんですか?」

「風の大精霊、嵐朧。昔、音川家と契約をしていた精霊」


そういえば、そんなことを音川輪がいっていたような気がする。


「私に、なにをさせたいの」

「いや、別に。今の世界は、若者に優しすぎる。だから、君に、君達に厳しい現実を見せようかと」


……どういう理由だ。


「まあ、嫌だと言っても、無理だけど」

「へ?」


突然、風が起こって、何も分からなくなった。



「ん?」

「どうしました、輪」

「いや、なんか?」


輪は窓の外を視るが、何も変わらない放課後だった。

とりあえず、眞弓良に向き直った。


「で、心麗は見つかったか?」

「いえ。ただ、精霊開発研究所の残党についてわかりましたよ」

「残党なんていたのか……」

「ええ」


精霊開発研究所が魔法使い連盟より除籍と消滅指定を受けたのは、七年前。

理由は、禁術指定にされている魔法の使用。

それにより、禍物化の発生。

調べを進めると、その研究所は禁術の人体実験まで行われていた。


「それを、潰してから七年……まだ心麗を狙ってたのか」


あの時、人体実験として攫われたうちの一人が、心麗だった。

それが夜神の怒りを買い、存在自体を歴史から抹消されるほどの攻撃を受けた。


「まったく、こりてないようです」


今、夜神は動けない。

てか、きっと寝ている。アルト達には知らせていないが、あの祭で彼は大魔術の補佐として動いていたのだ。例年、祭のあとの数日間は動けないし連絡も取れない。

それを狙って彼等は心麗を攫ったとしか考えられない。

しかし、夜神が起きたら、どんな事が起こるか……。

いや、その前になにかしらのアクションを起こして、夜神が邪魔出来ない様にするかもしれない。そもそも、心麗を人質にされたら彼は……。


「そう言えば、プシュケは?」

「心麗と一緒に攫われたみたいだ」

「そうですか。まあ、彼女は心麗と居ないと消えてしまいますからね」


プシュケは、特殊な精霊だ。

造られた精霊……。しかも、不完全な。

彼女は、今の世界で生きる事ができない精霊だ。

精霊開発研究所により、幾体もの人工精霊が生まれた。

彼等の殆どは研究所の解体と共に消滅し、死んだ。

プシュケは、その消滅を避けたほぼ唯一の人工精霊である。

本来は、マコトによって消滅させられそうになったのだが、なんだかんだで心麗が仮契約を行い契約したらしい。

詳しいことは、知らないが。


「……オレは、ここから離れられない」

「わかってます」

「アルトの事もあるしな」


音川アルトを守る。

それが今の自分にとっての最優先事項だから。


「こちらで、ラムさんとフェイクさん。あとアオイさんとほか数名が行くようです」

「そうか……」


それなら、大丈夫だろう。

アオイやフェイクが居るのなら、大丈夫だ。

アオイは上級精霊で心麗の事もよく知っている。

フェイクは夢の大精霊。

彼等は現在の魔法使い連盟でかなりの実力者だ。


「さてと、戻るか」


そう言って校長室から出ると、部室に向かった。




「……お前」


なんでこんな所で、こんなやつと会うんだ……。

部室に向かう前に、彼女と会った。

最悪の魔女とも呼ばれる、あの音川の風術師の契約精霊。


「嵐朧……」


なんで、こいつが?

こんなやつがここに?


「遅かったわね」

「……な、なにが」


嫌な予感しかない。

彼女が介入してくると、ろくな事が無い。


「ああ、気づかなかったのなら仕方ない」

「まさか、お前……アルトに何かしたのかっ?!」

「なにもしてない。ただ、飛ばしただけ」

「……」


は?

どこに?

だれを?


「ま、まさか……」


ニヤリと笑う嵐朧の姿に、恐怖を感じた。


「心麗君の居る所に」

「おまええええっ!!」


何厄介事増やしてんだよ!!

輪の心からの叫びは、放課後の学園に響いた。




いつの間にか半年たっていました……ちょっとずつすすめられるようにしていきたいと思います……。

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