表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
現在、魔法使いは絶滅危惧種です。  作者: 絢無晴蘿
第六話 中 「ちげええっ! オレ、ぞんびじゃないからっ?!」
38/42

風と秘密と問題と 3



風がおこる。

音川アルトを中心に。

風がアルトに近づく者を遠ざける。

アオイは、その風の中にいた。

一応、風の精霊である。これくらいの風ならばまだ耐えられる。しかし、それでも狂風はアオイの身体を引き裂いていく。


「まったく、大したモノだわ。あの天然アルトよりも風術師として才能あるんじゃない?」


未だに魔法を知らないアルトが、無意識のうちに創りだした風はあまりにも強い。

範囲が狭い事がまだ救いだが、それでもこれ以上はまずい。なにより、アルトの身が心配だ。

こんな大魔術に匹敵する魔法を無詠唱、しかも暴走に近い形で創りだしている。早く止めないと、アルト自身に害が及ぶかもしれない。

しかし、アオイではアルトの元に声が届かない。


「アルトっ、落ち着いて……音川は……」


音川輪がまさかこんな形で殺されるとは思っていなかった。

しかも、何も伝えずに。

アオイは何もできない自分に歯がみする。

アルトに、あの事をまだ伝えていないなんてっ。

いや、アレのことは音川輪自身、伝える機会をうかがっていたのではあるけれども。


「こんな時にっ」


しかし、アルトの横で動く『彼』を見て、ほっと一息をついた。


「しりぬぐいくらい、自分でやりなさいよ」





音川輪が、目の前で殺された。

それは、あまりにも衝撃的で、ようやく気づいた。

自分は、音川輪のことをいつの間にか信用していたと。

いつだって、なんだかんだ言いながら護ってくれると。

初めて逢った時の言葉を、いつまでも守ってくれると。

それなのに、彼は――。



「アルトっ、落ち着いてっ!」

「やだっ、こんなの、ありえないっ。こんなことって、ないよっ」

「アルト!」


アオイの叫び声が聞こえてくるが、もうなにも分からなかった。

どうして目の前の輪が動かないのかとか、心麗が攫われたとか、そんなの、考えたくなかった。


でも。


「やめろ、アルト」


嫌でも聞き覚えのある声が聞こえる。

なんでなのか分からない。


「これくらいで、俺は死なねぇよ」


肩に誰かの手が置かれる。

その手は冷たい。

でも、動いている。

確かに、生きている。


「どうして、生きてるのさ……音川輪」

「……すまん」


心臓を刺されたはずだった。ついでに、胴をひと思いに切り裂かれたはずだった。

確かに、流された血が服を、地面を汚している。けれど、何事もなかったように彼は起き上っていた。


「ば……か…………」


ほっとした瞬間、体中から力が抜けていく。


「お、おいっ」


良く解らないけれど、とても疲れていた。

目の前に生きている音川輪が、霞んでいく。


「な……で……」


その瞬間、目の前がシャットダウンされた。






「もしもし? オレだオレ。は? オレオレ詐欺? 違うに決まってんだろ」


誰かが、話をしている。


「――そうだよ。だから、さっさと戻ってこいっ。あと、水埜のあいつが誘拐された」


そうだ。心麗。

心麗が人質みたいな事になって……それで……。


「お、音川輪っ!」

「うわっ。え? なにっ?! 俺、なにもしてねぇよっ?!」


目がさめると、一番に目に入ってきたのは音川輪だった。

何事もなかったかのように怪我した様子もなく誰かに電話をしている。

おもわずぽかんと見ていると、すぐに電話を終わらせてあいつはこっちに寄って来た。


「……ねえ、音川輪」

「なんだ」


まるで、こっちが今から聞くことを分かっている、そんな気がした。


「なんで、生きてるの?」

「……えっと、死んでた方が良かった?」


い、いやそういう訳じゃない、けど。

いろいろ聞きたい事もあるけど、どうしてもそれが聞きたかった。

いや、一番初めに効かないといけないと思っていた。

だって、うちはたしかに見たのだ。音川輪は心臓を貫かれ、さらに斬られて斃れたところを。


じっと、見つめる。


「いつかは言おうとは思っていたんだ……」


もうすでに、何かを決意していたようなかんじだった。


私のすぐ横に座りこんで、音川輪は言った。


「オレさ、死んでんだ」

「……え?」

「いや、だからさ……オレ、もう結構前に死んでんだ」


こいつは、何を言っているのだろうか。

わからない。


「で、オレは死人なんだ」


ほほをつねってみる。

痛い。

音川輪のほほを、ぶったたいてみる。

手が痛かった。


「いてぇっ?! おまっ、オレに怨みがあんのか?!」

「……いや、いろいろ、うん」


混乱して、ぶったたきました。

だって、死んでるとか死人だとか言うんだもん。


「だって、ここにいるじゃん。痛いって、言ったじゃん。死んでる? 冗談でしょ?」


音川輪と出会ってから、もう二カ月は経っている。

その間、叩けば痛いって言うし、ふつうに食事してたし、なんだかんだで笑ってたし……どこが、死んでるって言うの?


「……いろいろあったんだよ。死んでるから、ただ斬られたぐらいじゃ死なないんだ」

「うそ……」


とりあえず、平手打ちしとく。


「いてえって!! なんでお前は殴るんだ!」

「殴ってない、平手打ちしただけ!」

「同じだ!」


死んでるなんて、思えない。

考えられない。

音川輪は、死んでいる?

なんで?


「だから、音川はネクロマンサーって呼ばれてるの?」


音川輪が死んでいる。けれど、生きている。

まるで、死体を生き返らせて操るって言うネクロマンサーみたいだ。


「……そうだよ。ふざけた事にな。オレは、自分の意志で此処にいて、音川を見守ろうと思ってる。でも、それを誤解する奴等がいてな……」


死人が守ろうとしている家。

それを、人はネクロマンサーがいるのではと噂するのか。


「……」


幽霊じゃ、ない。

精霊でも、ない。

死人だと、彼は言った。


「……死んでる」


うそ、だ。

訳がわからなかった。

だって、なんで、そんな……。

今まで、目の前で見ていた音川輪は一体何だった?


「まさか……」


思わず、輪から少し身体を離した。

その行為に輪は首をかしげる。


「ゾンビなの?」

「へ?」


数秒、音川輪の時間が停止した。






「ちげええ!! ゾンビとかアンデットとかじゃないから!!」









次回はちょっと更新が遅れる気がします……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ