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現在、魔法使いは絶滅危惧種です。  作者: 絢無晴蘿
第六話 中 「ちげええっ! オレ、ぞんびじゃないからっ?!」
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風と秘密と問題と 1

私は高い所が苦手だ。

なぜって?

昔、高い所から落ちたから。怪我をしたとかそう言う事はなかったけど、とにかくそれ以来高所恐怖症だ。



「いやああああああああっ! むりっ! 死ぬ!」

「アアア、ア、アルトちゃんっ、お、落ち着いてっ!」

「無理無理。うち死んだ。絶対死んだ。もう死んだっ!」

「いやいやいや。生きてるから! もう空の上じゃなくて地上だからっ!」


はっと気がついてあたりを見ると、なぜかシンリの家の庭にいた。

ちなみに、その前の記憶は無い。

一体全体どうやって祭から帰って来たのか、すっぽりと記憶が抜け落ちている。

ああ、空を飛んだとか、きっと気のせいだ。人が空を飛べる訳が無い。きっと疲れていたのだろう。そういえば、今日は晴れているから星がきれいだ」

「ア、アルトちゃんっ?!」


最後辺りから口に出していたような気がするが、きっと気のせいだ。

とにもかくにも、空を飛んだとか記憶にないのだ。うん。


「ごめん、シンリ。ちょっと混乱していたみたい」

「うん。すごく大変なことになっていた」

「そういえば今日は電車で帰って来たんだよね。そうだよね」

「……もう、そう言う事にしておくよ」


そうだ。そうなのだ。

だから、隣で聞こえて来る会話もきっと気のせいだ。



「……あの子、高所恐怖症だったの……」

「そう、みたいだな……」

「意外というか……風術師がそれで大丈夫なの?」

「さ、さあ?」


夜神の姉、アオイは頭を抱える。

アオイが家まで送ると言って取った手段、それは空を飛行するという物だった。

もちろん、普通に空を飛ぶなんて真似をしたら死んでしまうし何より距離が距離だ。大和国から祭の会場までかなり離れている。

その為、結界や魔法を用いて快適に、飛行機などよりもさらに高速だったが。


アオイは風の精霊である。が、風術師では無い。

むしろ、水術を得意としている。

その為、風術師と言うと自由自在に風を操り、自らに風を纏って空を飛びまわる……なんていう先入観があったのだが。


「あれじゃ、少し上空を飛ぶことも出来なそうね」

「……どうしよう」


頭を抱えるのは音川輪だ。

当初、実はアルトには基本的な風術を教えたら、飛行の訓練をしようと思っていたりした。

様々な風術があるが、あまり攻撃的なものよりもすぐに逃げられるように逃亡するための手段や周囲の感知などの術を教えた方がいいと考えていたのだ。

なにかしら危険な事がおこっても、当分の間は自分がいるから大丈夫だとも。

しかし……高所恐怖症だったとは。


「おれ、風術師じゃないからそこまで知らないしな……」


飛行以外にもいろいろな術があるが、輪もまたアオイ同様風術師では無い。

炎術や闇術、精霊魔法のほうが得意で、そこまで知識も深くない。

アルトが本格的に風術を学ぶ段階になったら、どこぞの風術師に教えを請わなければならないかもしれない。

因みに、夜神ならどんな術でも教えられそうだが、一応、彼は風術師でもなんでもないので除外している。


「頭が痛い問題だ……ところでアオイ」

「ごしゅうしょう。なに?」

「俺とつきあってくれないか?」

「…………わ、私、まこ一筋だからっ!」

「は?」


一体全体、彼女は何を言ってるのか。

とりあえず、意味が分からず輪は不思議そうに首をかしげる。

しかし、すぐに気がついたらしい。


「……えっ、いやっ、あのっ、つきあえってお前が思っているような意味じゃなくってだなっ?!」

「やーい、ひっかかった。分かってるわよ。この町着たとたんに殺気で迎えられたら、いやでも分かるわ」

「……あのなぁ、オレで遊ぶなよ」

「ひっかかる方が悪い」


そう言いながら、清蓮は一つのびをする。

少しストレッチをして、それを怪訝そうに見るアルトとシンリにむかって微笑んだ。


「ほら、来るよ」

「早いな」

「まあまあ、私が付き合ってあげるんだから、さっさと終わらせるよ」

「はいはい、了解しましたアオイさま」





突然、何かが落下してきた。

シンリがあわてて何かを叫んでいる。

落ちてきたソレから逃げないと。そう、なんとなく理解しても、とっさのことに体が動かなかった。

しかし――熱風。一瞬にして炎が巻き起こり、自分の傍に降り立った何かを焼き尽くす。

息をつく暇もなく、さらに炎弾音川輪から放たれる。

それは吸い込まれるかのように現れる何かにあたり、燃やしつくす。


「な、に?」


いったい、なんなの?

音川輪の魔法は分かった。けど、落ちてきた奴らは?

空から降りて来るモノ、それを見ようと空を見た。


暗い夜空にいたのは青年だった。

その周りには翼を持った黒い物体。

気持ち悪いというより、理解できないモノ。それが私達の元に降りて来ている。

それが行動を起こす前に輪が焼きつくす。

さらに、すかさずアオイが風を巻き起こすと、まだ宙にいるソレを切り裂いて逝く。

が、いかんせん数が多すぎた。


「プルート、なんのつもりだ!」


輪が青年に向かって声を上げた。

よく知らないが、プルートっていうのはどこかの神様じゃなかったっけ?

目の前にいるその人が神様のようには見えないけど。


「いえ。ちょっとうしろぐらーい組織に頼まれまして」

「ったく、ヴィランに言いつけるぞ!」

「どうぞどうぞ。たとえあの御方に云いつけられたとしても、私はただあの御方をただ己の為に、己の思うがままあの御方の為に命をささげるだけです。たとえ、ストーカーだとか、変態だとか言われてもめげません」

「……言われたのか、ストーカとか変態って」

「……言われてもめげません」


なんだ、この人。

明らかに危ない人だとおもう。けど、なんとなく……か、可愛いと思ってしまった自分がいる。


「ちょっと、音川! ここ動きにくいから移動するよ!」

「おう」


いつの間にか翼のある奴いがいに魔法使いらしい人達が参戦していた。

明らかにこちらに敵意を持っている。

なんで魔法使いが魔法使い(わたしたち)を狙うのか意味が分からない。


「心麗! アルト、さ、さん、なるべく近くに!」

「はい!」

「え、あ、うん」


なんでさんづけなのか少し疑問だったけど、とにかく言われたとおりにアオイの近くに寄った。


「音川、詠唱終了まで援護頼む!」

「了解!」


慣れている様子で二人は動く。

襲ってくる人達は十数人。そんでもって翼の持つアレが数十体。それを、音川輪は一人でさばけるの?

その疑問は杞憂に終わった。


「うそ……」


輪が強すぎたのだ。

何も無い場所から大きな剣を出したと思うと、慣れた様子で戦い始める。

時々シンリも魔法で援護している。けど、輪は強かった。


「驚いた? あいつは元々強いから心配しなくて大丈夫。……さてと、始めようか」


アオイが息を吐く。

深呼吸。

目を瞑り、手を差し出すように前に出す。


「風よ――我が眷族よ――水よ――我を愛す者よ――」


風が熾る。

どこからともなく水がアオイの周りを渦巻く。


「切り刻み薙ぎ払う事は望まず。ただ隣人として斯う――」


それが、何かの姿を取り始める。


「――来たれ、我が盟友よ!」


それは――二体の龍だった。

風で創られた、うっすらと翡翠の光を纏う風龍。

水で創られた、海より深い蒼の美しい水龍。

そのうちの風龍にアオイは飛び乗る。


「乗って!」

「は、はいっ?!」


の、乗る?! う、うちも?!

よく解らないうちにアオイは私の手をとると龍に無理やり乗せられる。

その後ろに、シンリが慣れた様子で飛び乗って来た。


「飛ぶよ!」

「はい!」

「…………え」


飛ぶ?

とつぜん身体が引っ張られる。何が怒っているのか分からず、思わず目を閉じる。


顔に風を感じて、前を向くと――なぜか煌々と明かりが灯る町が見えた。


「……きゃあああっ?!」


もう一度、目を瞑った。

これはきっと夢だ。

うん、絶対そうだ。

それに、あたりに翼の生えたあれがたくさん飛んでいたとか、絶体絶命そうな数がいたとかも絶対に夢だ。


「アオイさん、どこに行くんですか?!」

「どこか、開けた場所……ん、あそこでいっか」

「学校の校庭ですか」

「あそこなら風守の場所だし」


会話がどこか遠くで聞こえて来る。

どうやら目的地は月剣学園の広い校庭らしい。

もう、なんでもいいよ。

はやく地面に立ちたいと心から思った。







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