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現在、魔法使いは絶滅危惧種です。  作者: 絢無晴蘿
第六話 前 「あなた、めざわりなの。流留歌から出てってもらえないかしら?」
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魔法使いの祝祭 2




ほんのちょっぴり時は遡る。


アルトと風の精霊達を引き合わせた輪は一息ついていた。

今回アルトをこの祭に連れだした理由の一つがこれ。それが終わったものだから、少し安心しきっていた。


「あっ、ようやく見つけた……音川さん!」

「ん? セルラ?」


人ごみを掻きわけて、黒い服装の魔法使いが姿を現す。

年は輪と同じか上ほど。

中性的な顔立ちで、女性なのか男性なのか分からない。

セルラと呼ばれた彼は、周りを見て眉をひそめた。


「少々、お時間よろしいですか? 先日の件で」

「……あぁ、あれか。そういや、あいつらはお前らの監理だったか」

「はい」


アルトと精霊達は何やら話している。

心麗もいるし大丈夫だろうと、そこからセルラに先導されて離れていった。


人ごみがすくない祭の会場の外れ。

そこまで来ると、ようやくセルラは足を止める。


「率直に、完結に報告します。詳細は後ほど風守さんを通して送りますが良いでしょうか?」

「わかった。とりあえず報告してくれ」

「はい。……では、先日流留歌に無断で侵入した魔法使いですが、やはりあの組織の息がかかったやからだったようです。ただ、話を持ちかけられて乗ってしまっただけで、あの組織が今何をしているのかは知らないようです」


セルラから報告されるのは、七月の流留歌での祭であった事件の首謀者。あの魔法使いについての報告だった。

あの魔法使いは捕まった後、魔法使い連盟に送られて事情聴取を受けていたのだ。


流留歌市に無断で侵入した。

これが他の町や市なら問題は無かった。しかし、流留歌市は魔法使いたちの間ではある意味危険地帯として厳重な監視がされ、出入りにも許可がいる重要な場所だ。

だというのに、無断で侵入した。さらに、唯人たちを狂った精霊で襲わせていた。

流留歌市には普段結界が張ってある。もしも通過した魔法使いや精霊がいればすぐに輪に伝わるようにとされている。それなのに侵入されたという事もあり、現在、厳重な捜査が行われているのだ。


「目的は……」

「あの遺跡を調査する事です。そんでもって……言いぬくいのですが……」

「ん? なんだ?」


セルラの言葉が止まる。

なにやら輪の姿をじっくりとみて、ちょっと視線をそらす。


「……音川さんと戦うことだったようです」

「俺かよっ」

「ただ、顔とか知らなかったようですけど」

「おいおい」

「じいさんかと思ってたとか」

「……」


沈黙。

輪は無表情だった。


「そ、それはともかくっ。どうやらあの組織、まだ機能しているみたいなので気をつけてくださいね! では!」


いそいそとセルラは人ごみに紛れて消えてしまった。

それに輪は一つため息をついて、元来た道を戻るのだった。













「もう、やだ……」


大きくため息をつきたい。

右を見ても左を見ても、魔法使いだらけの人ごみの中、私は道に迷っていた。

こんな中で心麗達とはぐれるなんて……。


風の精霊とか何とか言う三人組と話している最中、思わず逃げ出して、気づいたら元いた場所が解らなくなっていた。

なんだかもう、どうすればいいのやらわからない。

そこに行けばいいのかもわからなければ。昔の事が自分のせいだったなんて、とかもう頭はごちゃごちゃ。

ともかく見たことある場所を探そうとしても、良く解らない。

人が多すぎる。

どう見ても人間以外のヒトも居るし……。


横を通り過ぎた猫耳の獣人?らしき人から思わず距離をとり、店番をしていた鳥人間を見なかったことにして、さらにふわふわとんでいる丸い生き物を華麗にスル―しながら進む。

どうしようもなくて、ただ息苦しいここから逃げ出したくて、人がいない方へと進んで言った。



「はぁ……」


ここ、どこだろう。

普通に魔女がいて、変な人がいて、ゲームとかにしかいないような魔物みたいな生き物がいて。

ほんと、驚き疲れた。

人が少なくなって、用やう一息をつきながら座れる場所を探す。

どうにか誰も座っていないベンチを見つけると、座り込んで祭を見ていた。


今、ここに居るのは魔法使いや人外のヒトたちだ。

これだけ魔法使いがいるのに、それでも魔法使いは減っていると輪達は言っていた。

昔は全員魔法使いだったとか言ってたけど、本当なのだろうか。


「あー、だめだめ。ため息は幸せが逃げちゃうよ?」

「へ?」


いつの間にか、横に女性が据わっていた。

祭の時ぐらいにしか見ない豪華な着物を着つけていた。

赤い花柄が印象的だった。けど、それにしてもいつ隣に座ったんだろう。


「ほら、ため息つく暇があったらもっと笑っておきな。人生は一度っきり。笑わないとそんだよ」

「は、はぁ」


いきなり、なんなんだろう。

きっと、この人も魔法使いなんだろうけど、なんで私の所に来たのだろうか。

思わずまじまじとその人の顔を見る。


「そうだね、心配ごとでも悩み事でも何かあるなら聞いてあげるよ?」


そう言われても、知らない人に相談するわけがない。


する訳が無いのに。


「訳が分からなくて」

「なにがなの?」


なぜか、言っていた。


「この状況が……。魔法使いなんかいないと思っていたのに、私が魔法使いだとか言われて。挙句の果てに何度も襲われるし、自称ご先祖様は私の事を守るとか言うし」

「今まで自分が知らなかった事に巻き込まれたら、誰だって困惑するものだよ。しょうがない」

「それに、私の周りで今まで起こった事件が、自分のせいだったって」

「本当に君のせいなの?」


優しい微笑み。

なぜか、母親を思い出すような。良く解らない感覚に陥る。


「……私が、風の愛し児だから、だとか」

「そう。そうね。風の愛し児……か。でも、それなら君のせいじゃないよ」

「……」

「愛し児ってだけで、周りが勝手にもりあがっちゃうんだよね。それは君のせいじゃない。でも、だからって精霊達を怒っても仕方ない事なんだけれどね」

「……?」


くすりと彼女は声を出して笑う。

なにか、ひっかかりを覚えても、今は気づけなかった。


「精霊達は愛し児が前に居るとどうしても暴走してしまうモノだから、しょうがないんだよ……だから、あんまり怒らないであげてね」

「は、はい……」

「でも、ちょっと暴走しすぎたみたいだね……わたしからもちょっと言っておこうかな」

「……?」


あれ?

今度こそ、ひっかかりに気づく。

なんだか、こちらの事を知りすぎているような、まるで、彼女も愛し児であるかのような……。


もう一度顔を見ようとしても、良く見えない。

なんでなんだろうと目をこすっても変わらない。


「あの、貴方は……?」


誰?

まるで、魔法を使われたような、そんな気分だ。


「わたし?」


彼女はベンチからゆっくりと立ちあがる。


「わたしは―――」


風が、吹いた。

彼女のポニーテールにされた栗色の髪が揺れている。

気づくと、女性は後ろを向いて人ごみに消えていくところだった。


「ごめん、待った?」

「いや、ぜんぜん。もういいの?」

「うん。それより、いづるこそいいの? まこに会わなくてー」

「う、うちはいいのっ。そっちこそ会って無いじゃん!」


賑やかな喧騒。

そこに、彼女とそのるれらしい女性の声は溶け込んでいく。


「……あの、ひと……」


顔が、霧がかかったようにしか思い出せない。

どうにか思い出せるのは特徴的な黄色みがかった赤い瞳だけ。

そして……。




――わたしは、アルト。音川アルとだよ。――




「アルト……?」


あの人も、アルトなの?

そう言えば、自分は迷子になっていたんだっけと思い出して席を立つと、ベンチに置かれた変な棒みたいなものに気づく。

さっき、席に着くまでは無かった物だ。

もしかして、さっきの女性の?

良く見ると、扇だった。

古い、使いこまれたもの。


「なんなんだろう……」








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