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現在、魔法使いは絶滅危惧種です。  作者: 絢無晴蘿
第六話 前 「あなた、めざわりなの。流留歌から出てってもらえないかしら?」
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魔法使いの祝祭


これは、本当に現実?


「……」


それを見た時、私の感想はそれだけだった。

心麗が手を引いて、笑って言ってくるのが耳に届く。


「ようこそ、魔法使い達の祝祭に!」


八月の始め、新月の夜の日曜日のこと。

突如音川輪によって魔法使いの祭に連れてこられていた。

なんて言うか、言葉が無い。

たしかにお祭なんだけど……いろいろと常人である私には考えられないようなことが起こってる。


「な、な、なんで人が飛んでんのっ?!」

「え?」

「いやいやいや、え?じゃ、ないよっ」


人は空を飛ばない物でしょうっ。

いや、魔法使いにとっては普通なのかもしれないけどさっ。でもさぁっ。


「それより……あ、ほら、こっちこっち」

「え、あ、うん」


さすが三回目参加の心麗だ。

普通に笑いながら案内をしてくれる。

いや、そんな事よりも、なんだこれ?!

人が空を飛んでるのは序章で、何やら異様にきらびやかな集団の服に目玉ついてるような気がするし、サメが地上を闊歩している気がするし、人形が普通に接客してるし、いかにもオカルトな儀式っぽいの始めようとしてる人いるし、いや、あれほんとに人っ?!


「おちつけ、落ち着くんだ私」

「……声に出てるよ、アルトちゃん」

「だ、だいじょうぶよ、のーぷろぐれむ……」


ごめん、嘘。

ちょっと、頭がパンクしそうです。


「聞いてもいい?」

「ん?」

「あれ、なに?」


テントや出店の周りに浮かんでいる風船のような光っている物体。

棘があるような気がするのはきっと気のせい。

あれ、なに?


「あ、あれは……食人植物。ランタンとかの代わりなんだって。あ、でも気をつけてね。時々かじりついて来るから」


あ、ほんとうだ。

今まさに、誰かが頭からかじりつかれてる。

って、違う!!


「なな、なんで、なんでそんなのが祭の中心にいっぱいあんの!!」

「だって、ランタンの代わりだから」

「いや、そこはランタンでいいじゃん!」


そもそも、なんでそんな危険なモノをランタンの代わりにするの……。

食人って、危なすぎるでしょうがっ。

いや、心麗に行っても意味が無い事は分かっている。解っているけどもっ。


「だって、魔法使いの祭なんだし。あ、ほら、あそこ! 全国魔女協会の出しものだよ! ヴァルプルギスの夜って言うお化け屋敷! 毎年やってるんだって。この前来たときはすごかったよ」


お化け屋敷なんですか。

一面火がたかれた一角は、真っ黒で大きなテントが作られていた。

しかも、行列がすごい。

本当に人気なのだろう。


「あのね、竜の首が飛び出して来て、ばあって炎吹いたりしてね、おじじさまの髪がうっかりこげかけたり」

「まさか、本物の火使用っ?! 」


危ないでしょ……。

どう考えたって危ないでしょ!!


「しかも、夜神さんと入ったんだ……」

「あとね、フランケンシュタインさんに襲われたと思ったらそのフランケンシュタインさんもお客さんで逃げてくる途中だったりね」

「フランケンシュタインって、お化けですよね?!」


お化けが逃げ出すお化け屋敷って一体……。

いや、それよりここに、フランケンシュタインが普通にいるのか?!

思わずあたりを見渡すと、人間の姿に見えない人が多数。

いや、きっと見間違いに違いない。

そうだ、きっと憑かれているのだろう。あれ、漢字が違う。


「おーい、こんな所にいたのか」

「あ、リンさん」

「げ……」


私をここに無理やり連れてきた張本人、音川輪がいた。

横には夜神。


「げってなんだ、げって」

「あんたを見ると、言いたくなるの」

「どういう原理だ。っと、そうそう、お前にお客さんだ」

「え?」


私に?


「ほら、出て来い。ここならまあ許すから」


許す?

首をかしげていると、そこに人形のように小さな三人の少女がいた。


『音川アルト様ですね?』

『は、はじめましてですぅ』

『ほ、本当に、本当にアルト様です?』

「へ?」


目の前に、小さな手のひらサイズの女の子三人組がいた。

どうも、私の目線に合わせて飛んでいる。

でもって、明らかに人間じゃない。


『きゃあっ、声かけちゃった! どうしようどうしよう!!』

『ああっ、どうしよう。みんなに言って来るの忘れた!!』

『あ、後で恨まれる……』

「あ、あの……ちょっと、この……ひと? だれ?」

「ああ、風の精霊だよ。お前に会いたいって言ってきたから」


さらりと言うのは輪。

おもわず、まじまじと彼女らを見てしまう。


『だって、流留歌では精霊王様が赦して下さらないんですもん』

『そうよ、そうよ! 精霊王様の命令は絶対なんだから! あんたもお願いしてよ、流留歌に来てもいいか聞いてよ!』

『アルト様に近づいちゃいけないなんて、拷問ですぅ』

「あの……様づけやめてほしいんだけど」


なんで様付け。

ちょっと恥ずかしいというか。

いや、ほんと、なんで様付け。

私はそこまで偉い人じゃ無いぞ?


『そ、そんな、畏れ多い。アルト様はここ数十年ぶりの風の愛し児』

『さらに、音川の何千年ぶりの姫君』

『先代の巫女様の事を考えれば、至極当然!』

「は、はあ……?」


風のいとしご?

姫君?

えっと、何を言ってるのだろうこのひと……いや、精霊達は。すごく時代錯誤な言葉だと思う。

そもそも、姫って柄じゃないし。


「おーい、ちょっとちょっと、こいつはまだ詳しい事を知らねえんだよ」

『なんですって?』

『まさか、説明を怠ったのですぅ?』

『説明係のくせに?!』

「いや、そうなんだけど……って、いやいや、オレ説明係じゃないから!!」


あ、音川輪が責められている。

やーいやーい。じゃないっ、なんだ、私に魔法使い以外にも言ってないことあるのかっ。


『では、僭越ながら、我らがご説明いたしますぅ』

『アルト様は風の愛し児と呼ばれる存在です』

『愛し児とは、精霊達に愛される者の事よ!』

「……へー」


その割には、狂った精霊とか言うのに襲われましたが……。


『正確に言うと、精霊達は存在が不安定になることを極端に恐れるの』

『存在が不安定になると自身が消えてしまうからですぅ』

『でも、愛し児のまわりでは、存在が安定するのです』

『だから、愛し児は精霊に愛されるのですぅ』

『まあ、それ以外にもいろいろ理由はあるのですけどね』

「なにそれ……」


すごく……迷惑。

なんでこんな体質に生まれて来たのさ、自分。


『でも、精霊王様に流留歌立入禁止令を出されちゃったのですぅ』

「精霊王? 立ち入り禁止? なんで?」

「こいつらの自業自得だよ」

「?」


っち、音川輪が話に入ってきた。

ちなみに、精霊王うんぬんについてはする―された。


『そんな! 我らは何もしてない!』

『そうですぅ』

『何も迷惑かけてないです』

「よく、その口が言えたもんだな」


そう言う輪はあきれ顔だ。

どうやら、うちの知らないところでいろいろあったらしい。


「お前が生まれた時、風の精霊が流留歌に大集合して惨事になったんだよ」

「……」


ああ、聞いたことがあるかも。

たしか、暴風が吹いて、竜巻が起こって、建物が吹き飛ばされて……うん。

えっと、それ、私のせい?


「まあ、それから少し落ち着いたんだが、いろいろアルトにちょっかいかけてくるし、散々問題起こすし、肝心な時にいないしで、しょうがないから流留歌立入禁止にしてもらったんだ」

「えっと……誰に?」

「夜神に」


あれ?

さっき、精霊達は精霊王にって言って無かった?

……?

つ、つまり、精霊王=夜神?

いや、そもそも精霊王ってのが良く解らないんだけど。王様ってくらいだから、偉いのか?


「ねえ、心麗」

「なに?」

「心麗のおじじさまって、何者?」

「僕のご先祖様だよ?」

「ええっ?!」

「あれ? い、言って無かったっけ?!」


初耳ですともさ!!


……頭が痛くなってきた。

なんなの、うちの周りの人達。

本当に人なの?


「……そ、そういえば、問題起こすって言ってたけど……なにしたの?」

「お前が一番よく知ってんだろ。ほら、車吹き飛ばしたり、いじめっ子が木にぶら下がってたり、突然暴風雨になったり、台風が直角で流留歌直撃を免れたり」

「……」


まさか、幼少期の怪奇現象って……こいつらのせい?


「な、なにそれ……全部、あんた達のせいだって言うの? あんた達のせいで、どれだけ迷惑したと思ってるの?!」

「ちょ、アルトちゃん」


心麗が止めて来る。

けど、それでも言いたかった。


「もう、もう、今後一切私に近寄らないで! 他の精霊達も! 私はあんた達のがすごく迷惑なの!!」





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