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現在、魔法使いは絶滅危惧種です。  作者: 絢無晴蘿
第一話 「お前には、二つの選択肢がある。オレに一生守られるか、魔法使いになるか」
3/42

幼馴染、それは確信犯に見えます。

中央大陸で先進国である大和国。その大和国の端にある流留歌市の中心区近くに私は住んでいる。

流留歌市は元々観光地として発展した場所で、近くには白峰山とよばれる世界遺産があったりするけど、市街地は普通にどこにでもある街だ。

んでもって、家から徒歩に十分ほどの丘に、通っている月影学園がある。小中高大が付属されている、この辺じゃかなり大きな学園。

その高等部、三年一組の教室に私は昼休みにようやくたどり着いた。



「あ、アンラッキー少女。ようやく来たわね」


食べ終わった弁当を片付けていた伊莉那が、こちらにすぐに気づいて声をかけて来くる。


「イリナ……この、裏切り者!!」


朝、見捨てて先に登校した裏切り者めっ。


「裏切り者? そんな、うちは何時だって貴方のこと考えて来たけど?」


伊莉那はただ、素知らぬ顔でまるで母親のように答えてくる。

まったく、白々しい嘘を。


「じゃあ、なんで朝、見捨てたの」

「だってうち、ペット飼うの禁止だから」

「いや、意味わかんない」


君、なんでペットの話になるんだい。


「あ、アルトっちようやく来たの?」

「昼休みに登校ですか……」


伊莉那とのよくわからない漫才が終わるか終わらないところで、他の友人も集まってきた。


「リカ、レナ、おはよう」


梨果(りか)礼弥(れみ)。どっちも昼食のいつメンだ。


「おっはよー」

「おはようです」

「で、今日は何があったの? わくわく。イリナたんから聞いて待ってたんだぞ」

「……リカ」


いや、わくわくして待つとか……少しは心配してほしかった。


「アルト、そんな顔しないで。梨果も礼弥もアルトのこと心配してたのよ? きちんと何が起こったのか話せるくらいの怪我か」

「心配するところ違うよねっ? しかも、怪我してる前提じゃん!!」


そんなこんなで尋問タイムに入る。

尋問なんて言っても、今日はどんな事件に巻き込まれたのかとか、どんな事があったのとかおどさげふんげふん、聞かれるままに答えるというものだけど。


これが、最近の日常。

なにかしらの問題が起こって、病院送りこそないものの警察署に呼ばれたり、先生方に呼ばれたり。そのあと、伊莉那達に質問攻めされて笑われる。

ったく、あんたら笑うなよ……。こっちは結構大変なんだぞ。

まあ、警察に呼ばれたり事件に巻き込まれるなんて、普通じゃない事だし。非日常にみんな飢えているからこんな感じになるんだと思うけど。


このへんじゃ犯罪も少ないし大きな事件もめったにおこらないし。

ソレなだけに、異常なほど周りで事件が起こるのは、目立ってしまう。

それが、最近の悩み事だ。





「もう、やだ……」


梨果と礼弥が席を立ったところで、ようやく質問タイムが終わった。

なんだか、これだけで疲れた気がする。

午後の授業、きちんと受けられるかなぁ……寝そう。


「そんな、落ち込まないでよ、アルト。うちは、アルトが事件に巻き込まれるのを見るのが楽しみなんだよ? こんな素晴らしい巻き込まれ体質、うらやましいわ」

「イリナ、それ、励ましのつもり?」

「いや。せいいっぱいの賛辞」

「……励ましでも賛辞でもないよ、それ」


なんで、こんな人と幼馴染なんだろう。

ため息をつくと、伊莉那は嬉しそうに青の瞳をきらめかせた。


「この、怪奇少女め。ほんとうにうらやましい限りよ」

「なに言ってんの、イリナ。怪奇現象だか何だかなんて、あるわけ無いでしょ」

「でも、最近アルトの周りで起こってる事件って、怪奇現象でしょ?」

「なっ」


まさか。

超常現象だとか怪奇現象だとか、大抵は科学で説明がつく。

伊莉那は事件が起こると何でもかんでもオカルトやら怪奇現象やらに持っていきたがる。

オカルトサイトを経営してるとも聞いてるけど、それさえなければいい友人なのに。

いや、性格はどうにかしてほしいけど。


「いいなー。かいきげんしょー」

「あのねえ、巻き込まれるこっちはいい迷惑。それに、今回の事故は自動車のメンテナンス不備と信号の誤作動による事故だってさ。別に怪奇現象でもなんでもないからね」

「夢が無いわねぇ、アルトは」

「あんたが夢見過ぎなの。てか、もう高校三年生なんだよ? 何時までもそんな子供じみた事言ってないで、現実見ようよ」

「じゃあ聞くけど、アルトは進路考えてるの?」

「う……」


なんで今、そんな事を聞く。

思わずたじろぐと、伊莉那はさらに迫ってくる。


「そっちこそ、高三なのにまだ進路決まってないんでしょ?」

「ま、まだ時間あるし、どうせこのまま大学行くからいいの!」


話をそらそうと窓の外を見ると、若葉が青く茂る桜の木が見えた。

校舎と正門を繋ぐサクラ並木の道だ。


一週間前までは薄桃色のサクラの花が満開だったのに、今じゃ葉っぱで緑一色。

次にサクラの花を見れるのは、大学生か。

なんだか、考えられない。いや、考えないようにしているんだけど。

たいして将来のことを考えていなかった私は、三年生になってからようやく進路を意識するようになったばかりだ。

そのまま外を見ていると、誰かがサクラ並木を通った。


「?」


鮮やかな金髪の、少年?

それが視界を掠める。

あんな人、いたっけ?

まぁ、周りには金髪の人もいるにはいるけど、なんかあの人……。


「どうしたー、アルト」

「え?」


伊莉那が視界を遮った。


「ぼやっとしてるけど。話そらす話題は見つかった?」

「ちょっと、そらそうとか考えてませんから」


嘘。考えてましたよ。

そのうちに、チャイムが鳴り響いて昼休みは終わった。

同時におなかがなって気づく。


「弁当食べ忘れた……」

「なにやってんの」


言葉だけ聞けばあきれたように聞こえるが、顔は笑顔だ。

こ、こいつまさか……。


「イリナ、まさか、わざと」

「あらあら、人のせいにするのはよくないわよ。弁当を食べ忘れたのは、自分のせいでしょ?」


その黒い笑顔を見て、頬をひきつらせた。

絶対確信犯でしょ、伊莉那さん。




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