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現在、魔法使いは絶滅危惧種です。  作者: 絢無晴蘿
第五話 「この、裏切り者めっ(泣)」な短編集
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人間ライターの長電話。





ぷるるるる

ぷるるるる



酷く古ぼけた屋敷に軽快な電子音が響く。

それと共に慌てたように駆け降りて来る足音。

どうやら、屋敷の主は二階にいたようだった。


「はいっ、夜神です!」


金色の髪が揺れる。

青い目をした少女が、電話をとっていた。

どこか浮かれたような、嬉しそうな明るいソプラノの声が紡がれる。

が……。


『葵か?』

「……なんだ、音川の小僧か。なんのよう、死に損ない」


相手がわかった途端にその様子は一変する。

如何にもめんどくさそうに、彼女は応答した。


『なぁ、オレ……ライターって言われた……』

「は? ライター? あぁ……炎術、人前で使ったの?」


電話相手は少女にとって昔からの知り合い。

そして、彼女の『弟』の友人である。


『「アルト」の前で』

「……ごしゅーしょー。どうせ、うわー便利そう、あんた人間ライターだねっ! って感じで言われたんでしょ」

『……いや、そうはいわれてねえけどさ』

「まったく。そんな事言ったら、私なんて人間シャワーよ。それか人間食器洗い機。あとは乾燥機に扇風機にクーラーに……だいたい、魔法使いなんて大抵そんな感じでしょ」

『だけどよぅ……アルトに言われると、なんて言うか、傷が深いというか、すごく胸を抉られる』

「あ、っそう」


他人事のように、いやまさに他人事なのだが、少女は話を流し聞く。


『なんか、こう……もっと優しい言葉をくれないのか?』

「なんで?」

『……お前に相談したオレが悪かった』

「まったくもってその通りよ。なんなら、マコに電話を替わりなさい」

『今、夜神はいねぇよ』

「っち、使えない奴」

『おい、ちょっと待て』


この二人、仲が悪いように見えるが、意外と息はあっている。

なんだかんだと言いながらも、気は合うらしい。


「まぁ、あんたたち魔法使いも大変よね……」

『……』

「って、なんで黙るのよ」

『いや、お前にそんな事言われるなんて、と』

「……」


今現在、世界から魔法使いが消えようとしている。

多くの魔法使いの名家が途絶えた。

幾つもの魔法が失われた。

世界から、少しずつ魔法は、魔法使いは失われていく。


魔法に全く触れないで生きて来た現代育ちの彼等からすれば、魔法は便利な道具に見えるだろう。

炎属性の魔法なら、アルトが考えた通りライターのように使える。

光属性なら電灯の代わりに。風属性なら扇風機に。

数え上げればきりがない。


「あぁっ、もうっ、まったく今さらなことで落ち込んでるのよ。私の方は忙しいんだからね。切るからねっ」

『そういや、もうすぐか』

「そうよ。もうすぐ始まるわ。まったく、感謝しなさいよ? 私達が手伝っているおかげで祭が行われるんだから」

『じゃあ』

「うん……あ、もう迷惑電話はかけてこないでよ。今度かけてきたら半殺しするから」

『……りょ、了解です』


かちゃりと音を立てて受話器は戻される。


「『アルト』か……。あいつに、似てるのかしら?」


その目は、どこか懐かしさを映していた。

少女に取って、いや、葵にとって、『アルト』という名前は意味のない(・・)名前だ。

それでも、なんとなく気になってしまう。

それはきっと、多くの人々がアルトを注目しているからなのだろう。


「さてと、そろそろ準備をしないとっ」




魔法使いの祭典は、すぐそこまで迫っていた。





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