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現在、魔法使いは絶滅危惧種です。  作者: 絢無晴蘿
第三話 「呪ってやるうぅっ!」と短編集
19/42

六月最後の週、学生を襲う試練まであと……。

――それは、学生にとって楽園に至るまでの短そうで長い期間。

そして、同時に……地獄の試練を迎える時である。




「……頼む、一生のお願いだ」


私の前で土下座するのは音川輪。わたしの従兄弟をとしてこの高校に通っている、自称ご先祖様である。

そして、一応魔法使いである。

……胡散臭いな、本当に。


そして、なぜ、一生のお願いなんて重要な願い事をしてきているのかと言うと。


「頼む、数学と歴史を、教えてくれっ。今度のテスト、やばいっ」


来週から、テスト週間になるからだ。

いわゆる、期末試験。


「……予習復習してないの?」


呆れた。

頭が痛い。

なんで、こいつが先祖なの?

いや、先祖なら、もっとこう余裕じゃないの?

なんていうか、いろいろと言いたい事がある。けど、言えないよ。

しかも、これが私に対する一生のお願いって……。

こんど何か頼まれても、絶対やらないからね。


「まぁまぁ、いいじゃない、アルト。私達でこき下ろして上げましょうよ」

「あ、うん。イリナ、ごめんね、つきあわせちゃって」

「気にしないで。こういうの、好きだから」

「そう、よかった」

「ちょっとまて、こき下ろすって言葉に何もつっこみいれないのか」


こうして、私は伊莉那と共に音川輪のテスト勉強に付き合う事になったのである。





「えっと、それで、なんで僕の家なの、アルトちゃん、イリナちゃん……」

「ごめんごめん、シンリ。でもこれだけの人数だと場所限られちゃって」


心麗の家に押しかけたのは、その日の放課後。

因みに、話を聞いていた礼弥や梨果までいる。

伊莉那はうちらの中じゃ一番勉強が出来るから、よく教えてもらったりしてたから、今回もそういうことで来たのだ。


心麗の家は、お父さんもお母さんも仕事の出張でほとんどいない。

だから、人数が多い時は時々借りている。

だから、心麗のことは礼弥と梨果は知っていたりする。

そんな心麗はいつもは普通に笑顔で貸してくれるのだが、今日は少し違った。


「今、一応おじじさまがいるから、あんまりうるさくしないでね? おじじさま、いろいろ怖いから」

「うん?」


おじじさまって、夜神の事だよね。

あの人、別にそこまで怖そうな人に見えなかったけど。


「えっ、シンリ君のおじいちゃんいるの?!」

「もしかして、世界一周しているって言う人ですか?」

「う、うん。おじいちゃんってわけじゃないんですけど、その……」


言いごもっている心麗。

その心情、よくわかる。

あの人、おじじさまって年齢じゃない。

会ったら、おじじさまじゃ無いじゃんって絶対に言われる。


「あー、シンリの従兄弟らしいよ」

「えっ、従兄弟なの? なら、なんでおじじさまって?」

「い、いろいろあるみたい。ほら、私と音川輪みたいに」

「へぇー」

「ややこしい家庭……」


ごまかすと、二人ともすぐに納得してくれた。

音川家と日野家、それに水埜家は昔からある家だから、適当に家系の伝統とか言っても通じちゃうから楽だったりする。

ちらりと心麗を見ると、ありがとうと手を重ねていた。

それに、気にするなと手振りで返しておく。


「とりあえず、勉強始めよっか」

「そうね。まずは輪君がどれくらい出来ないのかを見てからにしましょうか」

「おい、伊莉那。最初からできない前提かよ」


結果、出来ないことがわかった。






「輪君、すごいね……私、尊敬しちゃうっ」

「いろんな意味で恥ずかしいです」

「……ここまでひどいなんて……歴史なんて惨敗じゃない」


梨果、礼弥、伊莉那が次々に言葉を放った。

それに、音川輪は無言で遠い目をしている。

現実逃避か。

テスト期間中によくあることだ。

そういえば、テストが近づくと無性に歌いたくなったり何かお菓子を作りたくなったりする。

それと同じだろう。

結局は現実に戻らないといけないけど。


「えっと、一応ゴセンゾサマ? 歴史系は得意じゃないの……」

「実は俺、ちょっと前から流留歌からほとんど出てないんだ。だから、外の状況よく知らない」

「……」


ぼそりとみんなに聞こえないように言うと、輪もぼそりと力ない声で返して来る。

長い年月生きているはずなのに、歴史が出来ないって……ダメでしょ。

ついでに、どれくらい流留歌市から出てないのさ。


「……えっと、数百年単位?」

「なんで疑問形」

「いや、よく覚えてないし」

「……とりあえず、数百年単位のひきこもりだったんだね」

「いやっ、違うぞっ! 時々は外に出てたしっ!」

「へー」

「生温かいっ、視線が生温かいっ?!」


しょうがない、話題を変えてあげよう。


「あとさ、数学も結構酷いけど」

「普通に生活してて、数学なんてほとんど使っていそうで使ってないもんじゃん」

「……」


どこの高校生のいい訳みたいな事言ってんですか。


「あと、科学も出来てないじゃん」

「ふ、普通に生活してて、科学なんて……」

「はいはい」


ダメだこりゃ。

このままだと、あれだ。


「留年、か」

「……真弓良めっ」


なんでも、校長先生に普通の生徒として扱うので、赤点取ったら留年ねー、と言われたらしい。

因みに、魔法で不正やったら即退学とも言われたらしい。

魔法で不正とかしたら、本気で私も怒りたいわ。


「とにかく、ガンバ――」


がんばろう、そう言おうとした時、輪の模擬テストの結果を奪った奴がいた。


「あれ、ヤガミ、さん?」

「げっ……」


さっき話題になった人、夜神さんだ。

五月蝿くしてないつもりでも、やっぱりうるさかったのだろうか。


「うそっ、あれシンリ君のいとこのお兄さんっ? 伊莉那、知ってた?」

「し、知らないわ。……あんな従兄弟がいたなんて……」

「それより、輪君のテスト、恥ずかしすぎます」


なんだか、すごいカオスな事になって来たきがする。

五月蝿くなった部屋の中で、夜神はテストを見たまま沈黙する。

なにを言うつもりだろう。

それより、音川輪ががくがくふるえているんだが。


そして――


「おい、チビキ」


沈黙を、遂に夜神が破る。


「な、なんだ、や、やが、み?」


なんだか、声が……震えてるぞ、音川輪。

そこまで、怖いのだろうか。


「……今日から、猛勉強な。僕が教師で」


すごく、綺麗な笑顔だった。

でも……その目は、笑っていなかった。

静かに、怒りの焔がその目に浮かんでいた。


……心麗が怖いって言ってたのは、こう言うことだったか。






それ以後、音川輪の顔が死んで……いや、目の下の隈が酷かった。

心麗から聞いた話だと、いろいろスパルタだったらしい。

これから教えてもらう時は、気をつけて行こうと思った。

……本当に。










諸事情につき、二週間ほど投稿を止めます。

此処までお読み下さり、ありがとうございました。

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