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記憶
なあ、魔法使いにならないか?
振り返ると、知らない人がいた。
あわてて涙をぬぐうと、彼に言う。
「まほうつかいなんていないよ」
魔法使いなんて、いない。
たぶん、幼稚園の頃だったら信じてた。
でも、もう信じられない。
魔法使いなんて、いないんだ。
「んじゃ、オレに守られるか」
「……?」
この人は、小学生に何を言っているのだろう。
知らない人と話しちゃいけないという言葉を思い出して、一歩さがった。
その人は、気づいているのか気づいていないのか、手を差し伸べてくる。
「お前には二つの選択肢がある、魔法使いになるか、俺に一生守られるか。どうする?」
私はただ、その人を見て
「びょういん、むこうだよ?」
「……お前はオレをきちがいとでも思っていやがるのか」
「うん」
「か、かわいくねぇな、いまの小学生って」
「ろりこん?」
「ちげーよ。なんでそうなった! ついでに、そんな言葉をなんで言葉を知ってんだ!」
その人は、困ったようにため息をつくと、最後にこう言った。
「また、来る。今度は、お前がオレの言葉を理解できるくらいでかくなったらな」
その人の笑顔は、とっても優しかった。




