本編 プロローグ
目を開けた。
眩しい光が、視界に差し込んだ。
そのあまりの眩しさに、僕は目を閉じてしまいそうになってしまう。
そんな僕の視界に、彼女は映り込んだ。
綺麗な女の子。
というのが最初の印象だった。
彼女は声を張らせ、僕の身体を揺さぶっていた。
その表情はとても悲しげで、何となく見てはいけないものの様な気がしていた。
僕は、そんな彼女にある一言を呟いた。
「――――――、」
僕が呟いた言葉。
それは僕が呟くにふさわしい言葉だった。
その言葉は、彼女の耳に届いた。
さらに、気がつけば周りには、何人かの大人達がいた。
彼等にも、僕の言葉は届いたらしく。
大人達は目を見開いて、僕を見た。
彼女は。というと。
唖然としていた。
僕の口から出た言葉が信じられなかったのだろうか?
だから、もう一度。
言葉を呟いてみた。
「ーーーーーーー、」
その言葉は、確かに彼女に届いた。
瞬間だった。
彼女の顔が歪んだ。
彼女の瞳から、何かが流れた。
涙だった。
彼女は泣いていた。
声を上げて。
そして、僕に向かって。彼女は泣きながら言った。
ごめんなさい。
何故、彼女が僕に謝る必要があるのか分からなかったけれど。
その言葉は、僕の心に重たくのしかかった。
彼女はただ、ごめんなさい、と言葉を繰り返した。
周りの大人達が、彼女を宥め様とするが、彼女の
その悲痛な表情を
瞳からあふれる涙を。
繰り返される言葉を。
止める事など出来やしない。
見ていられなかった。
彼女が。
何故だか、僕は彼女に泣いてほしく無かった。
そんな悲しい顔をしてほしく無かった。
謝罪の言葉を言ってほしく無かった。
だから、彼女の涙を止めよう。と悲しみを消そう。と、
どうにか身体を動かそうとして。
身体が動かない事実に僕は気付いた。
手と足が動かない。
いや、感覚が無い。と言った方がいいのだろうか。
動く気が一切しない。
それに、全身の感覚でさえ、鈍く感じていた。
彼女を宥めたいのに。
宥めなければいけないのに。
身体が動かない。
なんて自分は無力なのだろう。
多分、言葉は今の彼女には届かない。
だから行動で彼女を、助けなければならないのに。
身体が動かない。
彼女は僕の横で暫く泣き続けた。
疲れ果て、彼女が寝に至るまで。
結局、僕には彼女の涙は止められない。