【もし異世界に行けたらやりたいことリスト】を拾われたら異世界に行けたお話
高校時代。
私、虹原 望には一人だけ友達がいた。
漫画、小説が大好きな女子高生、浦木 莉子。
いわゆるオタクと呼ばれる友達。
勉強ばかりしている真面目な性格の私はクラス委員長をやっていて、何度も学校に漫画や小説を持ち込む莉子を注意したりしていた。
そんなやりとりをしていくと、気づくと仲良くなっていく私達。
今まで真面目な性格のせいか周りに煙たがられていた為、初めて出来た友達。
かたや莉子は人当たりが良かったけど、少し距離を置くタイプで、ちゃんと友達と呼べる相手はいなかったらしい。
莉子と過ごす毎日が楽しかった。
ある日の放課後。
莉子のおすすめである、異世界物を読んでいた時のことだった。
「じゃじゃーん!のぞみん見て見てー!」
私のことを、のぞみんと呼ぶ莉子の方へと向く。
その手にはノートを持っていた。
「なに?もう宿題出来たの?莉子えらい。」
「ちっがーう!そんなつまらない物じゃないよー!もー!」
てっきり今日出された宿題を終わらせたのかと思ったけど、違ったようだ。
「ここ見て!ここっ!」
莉子がノートの表紙を指差す。
ペンでカラフルに書かれてたし、お世辞にも字が上手くなく、読みにくかったけどなんとか読み上げる。
「もし…異世界に…行けたら…やりたいことリスト…?」
「よく読めました!ご褒美のナデナデー!」
満面の笑みで私の頭を撫で続ける莉子。
頭を撫でるのは莉子の癖だった。
いつまで経ってもやめてくれないので、払いのけると髪を直しながら尋ねる。
「それで?これがどうしたの?」
「えへへー!これに異世界でやりたいこと書こうよ!」
「書こうよって…私も…!?」
「うん!のぞみんも異世界物にハマってくれたしね!」
「いや…私は…。」
「んー?違ったー?」
「違くは…ないけど…。」
最初は本を持ち込む莉子を注意していたはずの私が、今では心待ちするようになってしまった手前、口篭ってしまう。
「あれれー?よく聞こえないなー?」
「はいはい。好きです。ハマりましたよ。」
「にひひー!よく言えましたー!」
また頭を撫でようとする莉子。
一度始まると長いので止めると、ノートに書き始めようと促す。
「魔法を使ってみたい。」
「世界を救う!」
「異種族と交流。」
「女性だけの世界!」
「こっちでは見れない景色を見たい。」
「かわいい義妹をつくりたい!」
「名を残せるような存在になりたい。」
「クールなメイドさんにお世話されたい!」
など、思いつく限りのことを書いていき。
最後にどちらかが異世界に行けたら、もう片方を迎えに行くと書くと、二人で眺める。
「いっぱい書いたねー!」
「いやいや、おかしい。」
「へ?なにが?」
本当にわかっていない様子の莉子。
「まず、女性だけの世界ってなに!?」
「これはねー、異種族だけじゃなく女性だけってところがより異世界っぽくない?」
「いや…うん…?そう…なのかな…?」
たしかにそういう異世界もあるのかも。
「っていうか、そもそもこれってやりたいことじゃなくない?」
「あっ!たしかに!…なははー!まぁ気にしない気にしない!」
なんだか納得いかないけど、莉子らしいし残すことに。
他にもいろいろ気になる点はあったけど、言いくるめられ、結局は莉子だからということで終わる。
やがて暗くなってきたので帰ることに。
ノートは私が預かることになった。
「のぞみん!もしどっちかが異世界に行けたら絶対、ノートに書いたこと叶えようね!」
「うん。そうだね。」
「それじゃあ、また明日ねー!」
「また明日。」
ぶんぶんと手を振る莉子に、片手を上げ挨拶をすると、校門で別れることに。
…。
これが莉子とする最後の会話になるとは思わなかった。
次の日。
もう朝のHRが始まりそうになるのに、未だに莉子が来ない。
莉子はよく夜更かしをしては寝坊して、遅刻するのでまたかと思っていた。
携帯があれば叩き起こすこともできたかもしれないけど、あいにく私は家庭の事情で持っていない。
やがて先生がやって来て、いつも通りのHRが始まる。
…はずだった。
「みなさんに…悲しいお知らせがあります…。」
先生が涙を堪えてそう話す。
何事かと周りがざわざわとしだす。
「今朝…浦木莉子さんが…交通事故に遭い…亡くなりました…。」
…は?今…先生はなんて言った…?
莉子が…交通事故…?
突然のことで頭が追いつかない…。
理解したくないと、頭が拒否する…。
なにかの間違いだ…。
また莉子は遅刻して、先生に注意されて、私に向かって「にへへー。怒られちゃった!」なんて笑いかけてくるんだ。
きっと…きっとそうなんだ…。
…だけど現実は残酷で。
莉子のお葬式が始まる。
生前の遺品やお花を棺に入れていく親族やクラスメイト。
徐々に周りに人がいなくなり、ノートを手に持ち私は棺の前で立ち尽くしていた。
ノートを棺の中に入れようと持ってきたのだけど、これを入れてしまうと莉子との繋がりが消えてしまう。
そんな気がして。
「莉子…莉子ぉ…。」
名前を呼び、また泣いてしまう。
やがて涙が枯れてきてしまうと、話し声が聞こえてくる。
その内容は交通事故のことで。
どうやら莉子は飛び出してきた子供を助けたとのことだった。
初めて交通事故の時のことを知った私は、手に持ったノートが視界に入ると、ふと考える。
異世界物の冒頭みたいなお話。
莉子は異世界に行けたかな。
きっと莉子は異世界で元気に冒険してるんだ。
そしていつか、ノートを取りに来るかも。
そう考えると棺にノートを入れるのをやめることに。
「莉子…私待ってるからね。」
そう言い残すと葬式場を後にした。
数年後。
莉子は未だに現れない。
もう何度目のお墓参りだろう。
お花を備え、手を合わせる。
最後に思い出のノートを広げて、あれからやりたいことを思いつくと記入していったことを報告する。
一通り話したいことを話し終えた時だった。
突風が吹いた。
開いたノートが飛ばされてしまう。
慌てて拾おうとした時だった。
私よりも先に、だれかに拾われてしまう。
「うわー!懐かしー!まだ持っててくれたんだね!」
その声に慌てて顔を上げる。
「え…うそ…。」
顔を見て、心臓が止まりそうになるくらい驚いてしまう。
「久しぶりー!のぞみん!」
ニコニコと笑う、少し大人っぽくなった莉子の姿があった。
「莉子…莉子だよね…?」
「そうだよー!大人っぽくなったでしょー!って、のぞみんはすっごい美人になったね!ナデナデー!」
莉子の癖。
それがすごく懐かしくて嬉しい。
「やっと…やっと現れてくれた…。」
「わわわ!のぞみん!?」
「ずっと…ずっと待ってたんだから…。」
「うぅ…ごめんね…。異世界を移動する魔法を習得するのに時間かかっちゃって…。」
「いいよ…。許してあげる。」
「えへへー!のぞみん、ありがとー!あ、それでね!あたし、もうすぐ戻らないといけないんだけど。」
「え…そうなの…?」
やっと会えたのに。
またお別れになるかと思うと悲しくなってしまう。
「それでね!のぞみんも一緒に来ない?」
不安そうに尋ねる莉子。
答えなんて決まっている。
「行く。絶対行く。」
「やったー!あ、でも本当にあまり時間がなくて。」
「大丈夫。私の家庭の事情は知ってるでしょ?」
「あーそうだったね…。」
「莉子こそいいの?」
「今さら会いに行っても悲しませちゃうから。」
「そっか…。」
「にへへー!それじゃあ行こっか!異世界に!」
莉子が伸ばした手を取る。
するとふわりと身体が浮き始める。
やがて目の前の空間がぐにゃぐにゃと歪み始める。
「向こうに着いたら、のぞみんに妹とメイドを紹介するね!」
「楽しみにしてる。私も魔法を使えるようになるかな。」
「そんなのすぐだよー!それじゃあ、レッツゴー!」
こうして私は莉子と一緒に異世界へと向かうのであった。
その後、莉子に愛の告白をされることになる。
どうやら女性だけの世界とリストに書いたのは、あの時から私のことが好きだったらしい。
気持ちに気づいて欲しかったらしいけど、分かりにくすぎる。
私も莉子のことが好きだった。
だから当然告白の返事はOKに決まっていた。




