エピローグ 祈り
エピローグ 祈り
美根我は、上流から学校へ戻り、校長室で、江来に、水源の有様を報告した。
「美根我さん、その遺体が、原因なのですか?」と、江来が、顔を顰めた。
「何とも言えませんけど、飲み水としては、不適切でしょうね」と、美根我も、冴えない表情で、見解を述べた。現時点で、遺体を退けられる人員が居ないからだ。
「雨でも降ってくれれば、何とかなるかも知れませんが…。新型爆弾が落ちてから、雨が降っていませんからねぇ」と、江来が、ぼやいた。
「言われてみれば…」と、美根我も、はっとなった。ここに来てから、雨に降られていないからだ。
「雨乞いの祈祷をして貰おうにも、どこも大変でしょうから、無理でしょうねぇ」と、江来が、溜め息を吐いた。
「そうですね。我々で、お祈りするしかないでしょうね」と、美根我は、口にした。街の惨状を見た限り、他人を気遣う余裕など、この街には無いだろうからだ。
「駄目元で、黄桜の木に、お祈りしませんか?」と、江来が、提案した。
「そうですね。校庭の黄桜の木が、相応しいかも知れませんね」と、美根我も、賛同した。気休めでも、何もしないよりはマシだからだ。
間も無く、二人は、校長室を後にするのだった。