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あのね。  作者: 原田楓香
41/42

㊶夢かも

 

 藤澤 琉生。

 

 彼は、私の推しだ。

 そして、クラスメートでもある。


 そして、なんとなんと。

 同じ部活の仲間でもある!(やった! 1行増えた)



 ある日、部活に行ったら、何の前触れもなく、そこに琉生がいた!

 少し遅れて部室に行った私は、扉を開けて、一瞬かたまってしまった。

 一体何の奇跡が起こったのか?

 すぐ目の前に、琉生が立っている! 

 そして、ごく自然に、同じ1年の松尾くんと一緒に、テーブルに紙皿を並べて、お団子をのせる準備をしている。

 松尾くんの言うには、お団子を買いに行った顧問の倉内先生が、「新入部員連れてきたよ~」と琉生を連れて帰ってきたのだという。

 

 みんなでお団子を食べながら、本の話をして――そして今。

 彼は、残ったお団子争奪戦ジャンケンに参加している。争奪ジャンケンに加わったのは、顧問を含めて全員だ。

 熾烈な戦いを勝ち抜いた彼は、最後の決戦で大田部長との勝負になった。

 琉生は腕を交差して、手の平同士を合わせて手を組み、そのすき間をのぞいてうなずいている。

 何を出すか決まったようだ。

 大田部長が、「いざ、勝負!」と声をかけ、2人は力一杯、「ジャンケンホイ!」と叫んで、手を出した。


「やったあ~!!」

 琉生が、めでたく、残ったお団子をゲットした。大喜びで、恭しくお団子を受け取り、彼は、勢いよくお団子にかぶりつく。もぐもぐ動くほっぺが、白くて柔らかそうで、なんだか、彼のほっぺまで美味しそうに見える。


 こんな可愛らしい琉生を見るのは初めてだ。

 あまりにも嬉しそうで幸せそう。なんだか見ているこちらまで幸せな気分になってくる。

 よほどお団子が好きなのか。

 なんなら、次から私のお団子、串に刺さってるうちの1コくらいなら分けてあげようか。

 なんてことを考えていると、城田先輩が言った。

「琉生くん、お団子好き?」

「ふぁい」

 お団子を頬張りながら、ニコニコ笑って琉生が大きくうなずく。

「そっかぁ。じゃあ、ニックネーム決まり! お団子lover琉生、ね」

「え~……」

 琉生がちょっと恥ずかしそうに笑って、

「このお団子、めちゃくちゃ美味しかったから……」

 言い訳のようにつぶやく。

「わかるわかる」

 みんなうなずく。

「じゃあ、僕だけじゃなくて、みんなお団子loverじゃないですか」

 琉生が言うと、

「うん。でも、一番美味しそうに食べてたのは、琉生くん、君だからね」

 三田先輩が言った、

「ほんとほんと。そんなに美味しそうに食べてもらったら、お団子も本望だよね」

 満田先輩が笑う。

「今度、僕の団子、1コだけ分けてあげるよ」

 大田部長が言うと、

「あ。同じこと思ってた! 1本全部は無理だけど、丸いの1個分くらいなら、分けてあげるよ」

 平澤先輩も笑いながら言った。

 琉生の嬉しそうな顔を見ながら、どうやら、みんな同じことを思っていたらしく、うんうんうなずいている。

「みんなから、1コずつもらったら、それだけで2本分くらいになりそうやね」

 私が言うと、琉生が両方のほっぺに手を当てて、

「おおお」

 と声を上げ、目をキラキラさせて嬉しそうに笑った。

「ほら。やっぱりお団子loverだ」

 城田先輩が言って、みんな笑った。




 藤澤 琉生。

 

 彼は、私の推しだ。

 そして、クラスメートでもある。

 さらに、なんと同じ部活の仲間でもある!(やった! 1行増えた)


 部活が終わって、帰り道は、文芸部のみんなで同じ電車に乗った。

 みんなで普通におしゃべりしながら電車に乗っていると、琉生も普通の高校生の1人に見える。誰も彼をアイドルの『藤澤琉生』だと気づいていない。

 扉の近くの吊革につかまって、琉生がくつろいだ顔で立っている。

 こんな顔も珍しい。

 今日は、琉生のいろんな顔を見た。嬉しいなあ、そう思って、ぼんやりしていたので、途中の駅で降りる人たちに巻き込まれて、私も一緒に押し出されてしまいそうになった。

 おっと。踏みとどまろうとして、逆にバランスを崩してしまう。

 そのとき、私を支えるように、さっと長い腕が私を抱きとめた。

 琉生だった。

「大丈夫?」

「だ、大丈夫。……ありがと」

 

 これは、夢?

 まるでドラマの1シーンのような。

 一瞬で離れていった、彼の腕。

 でも、かたく引き締まった筋肉質の腕の感触が、私の背中に残っている。


 これは、もしかしたら、ほんとに、夢かもしれない。

 私は、自分のほっぺたをぎゅううっとつまんでみた。

 イタイ……気がするような、しないような。


 


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