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巨骸山脈  作者: 蔦本望
第六章 再開
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36. 暗い世界

僕たちは次の日から早速作業に取り掛かった。

何かと理由を付けては資材を資材置き場から持ち出していく。

人間の体重を安全に支えられて、なおかつ何度もスムーズに奈落の入口と行き来できる構造を設計したのはよかったが、作り上げるのは骨の折れる作業だった。

特に苦労したのが、体重を支えながらも滑らかな移動を可能にさせる滑車の部分だ。

何度もテストをしながら、手探りで作業を進めていく。

完成したときには、気が付いたら一ヶ月もかかっていた。

延長申請が受理されてよかったと心から思う。


完成した装置を前に、僕たちは誰が降りるべきかを話し合っていた。

「まず誰が降りるかだが......俺が行こうと思う。設計したのは俺だからな。」

「まぁ、それが妥当かな......下に何があるかわからないし、巨骸の構造に詳しい人が行った方がリスク少ないか......」

「とりあえず、ゆっくり下降していくが、何か問題があれば浮上の合図を出す。そうしたら、すぐに引き上げてくれ。最初の数回は機械の安全性の確認と、生命に問題がないかの確認をしていこうと思うが、問題ないよな?」

僕とパラヤが頷いたのを確認してから、テオが機械の説明を改めて始める。

ついに未知への挑戦が始まるのだと、胸が昂った。


ゆっくりとテオが下降していく。

何回も上がっては降りてを繰り返して、どんどん深いところまで降りていく。

「さすがにしんどいな。」

戻ってきたテオが笑う。

休憩しながら下の様子について教えてもらう。

「下は予想通り毒素が濃い。一番下までは酸素マスクだけじゃ無理かもな。」

「何か体を守る鎧みたいなものがあった方がいいかもね。いいものないかちょっと探してみるよ。」

「とりあえず、第一中継地点までは大丈夫だと思うが、それより先は考えないとだな。光源も設置できてるし、順調っちゃ順調だが。」


その後も何回か下降していったテオはついに第一中継地点に降り立った。

第一中継地点は想像していたよりも広かったようで、下降装置の設置は余裕とのことだった。

問題は次に降りられる地点があるかどうかだが、調査の結果、いくつか可能性があるとのことだ。

連日の調査でテオは目に見えて疲弊していたが、大丈夫だと言い張ってはパラヤに怒られていた。

テオの休息も兼ねて、中継地点に下ろすための追加の装置を作成していく。


そこから先は地道で大変な作業が続いた。

追加の装置を無事に下ろすのも大変だったが、その後がもっと大変だった。

第一中継地点に降り立った僕とテオは、どこのポイントに下降するべきか、降りては上がりを繰り返していく。

降りた先に場所があり、なおかつ次のポイントに進めるかどうかを判断しないといけないからだ。

暗く、なおかつ毒素の強い場所での作業は想像以上に体力が消耗していく。

何回も降下を繰り返し、次の第二中継地点が決定するころにはまたしても一ヵ月が過ぎていた。


「いつ終わるんだろうな、これは......さすがに深すぎるぞ。」

「これ以上深くなると三人じゃ無理ですよね?」

「もちろんわかってるさ。そろそろサントから派遣されてくるはずなんだが......」

テオがちらっとパラヤを見る。

「まったく無茶を言うよね。何とかねじ込めそうだよ。」

「さすが、優秀だねぇ!」

パラヤがあきれたように大きく息を吐く。

明日からまた忙しくなりそうだ。


あれからまた一ヵ月が経ち、ついに僕たちは最下層らしき場所に手が届こうとしていた。

サントが派遣してくれた作業員たちは本当に優秀で、想像していたよりも早くここまで来ることができた。

「今日はついに最下層に向けて降下する。何があるかわからないが、気を引き締めていこう。」

テオの号令の下、最下層への挑戦が始まった。

と思ったが、あっさりと最下層らしき場所に到達してしまった。


「拍子抜けだったな。今までと何も変わらなかった。変わったのは毒素が強くなったくらいか?」

長い時間をかけて奈落の入口まで戻ってきたテオが機嫌よく笑う。

「何もトラブルがなくてよかったね。それが一番でしょ?」

「そりゃそうだ。思ったよりも広そうだから、探索しないといけないな。やっぱりあの深さまでいくと巨骸の色が変わってたぞ。見たこともないきれいな黄色と赤色だったな。」

「確実に未発見の新しい層なんじゃない?」

「だろうな。歴史に名前を刻むことになるとはな。」

また楽しそうにテオが笑う。

パラヤもつられてあきれたように笑い、ほかの作業員にも笑いが伝播する。

最深部まで下降できた嬉しさを皆隠すことができないようだった。


最下層の探索は連日行われたが、大した成果は得られなかった。

採掘は硬度が高すぎて何もできず、探索も道が入り組んでいてなかなか進まない。

毒素の高さから長時間作業できないのもあり、思ったような結果が得られず次第にストレスが溜まっていった。

そんな中、一人の作業員が布のようなものが落ちているのを発見した。

僕の心臓が高鳴る。

頭ではわかっていても、認めたくない気持ちが入り混じる。

探索を続けているうちにまたしても布がいくつか発見された。

後をたどれと言わんばかりに、道なりに布が落ちていたそうだ。

目を背けたい気持ちに蓋をして、僕は布の後をたどった。

どんな光景が待っていても、僕はしっかりと見届けたいと思う。


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