33. 手掛かり
テオが大きくため息をつく。
「そこまで調べられてるなら、もう無理か。どうせ、俺に対しても調べてるんでしょう。」
「はい。あなたの登録情報も見ました。年齢と出身地から考えるとおそらく、シャルとは幼馴染なのではないでしょうか?」
「すごいな。良くそこまで調べたもんだ。そりゃ監督官さんもお忙しいよな。」
皮肉たっぷりにテオが笑う。
「それで俺たちはどうなる?捕まって牢屋か?それとも、政府の組織に渡されて行方不明か?」
「ふふふ、そんなことはしませんよ。だって、私の目的と同じですから。」
いま、なんと言った。
自分の耳を信じられず、監督官を見る。
「私も、ずっとシャルを探している。そのために、監督官にまでなったんだ。」
監督官は強い憎悪を瞳にたぎらせて、唇を強くかみしめた。
「それって、どういう......」
テオが言葉を絞り出す。
「まず、この話は秘密にしてくださいね。もしバラしたら、あなた達のこともバラしますから。」
「そりゃもちろん秘密にするけど......だめだ、全然理解できない。なにがどうしてそうなったんだ?もしかして、シャルの彼女だったりするのか?」
彼女、という言葉に少しドキッとする。
「まさか。ただの仲間ですよ。採掘作業員の同僚です。」
「同僚って、仲が良かったのか?女の同僚がいたなんて、手紙にはどこにも......なぁ?」
頭の中で手紙を思い出しながら僕が頷くと、監督官は笑いながら口を手で覆う。
「そうか、気が付いてなかったのか。パラヤという同い年の作業員と仲良くなった、とか書いてなかった?採掘がうまくて嫉妬した、とか。」
点と点が、つながった。
僕たちが探していた、兄さんと仲の良かった作業員が、まさか女性とは思ってもみなかった。
道理で探しても探しても見つからないわけだ。
ずっと男性だと思い込んで探していたし、監督官になっているなんて予想する方が難しい。
兄さんも男性と思っていたようだから、それは想定する方が無理な話だとは思う。
ちなみに、少し前に僕をじっと見つめていた監督官は、彼女だったようだ。
兄さんに似てると思い、それで僕たちを調べることにしたようだ。
そんなに僕は兄さんと似ているんだろうか。
パラヤに現状の共有をした後、当時の兄さんの情報を教えてもらう。
最後に、何をしていたのか。
「シャルは、最後に第四層を発見したって言ってたんだ。残念ながら場所はわからないけど......」
「それって当時の大発見だろ?たしか、第四層の発見ってマニスって研究者じゃ......」
そこまで言って、テオがハッとする。
「マニスって、あのマニスですか?」
僕が尋ねるとテオは両手で顔を覆って、上を見上げる。
「どう考えてもそうだろう。帰ったら調べてみるが......発見はいつだったかな......」
「シャルは、当時ずっと誰かに見られてる気がするって言ってたんだ。気のせいだよって私は言ってたんだけど、あんなことになっちゃって......たぶん、なにかに巻き込まれたんだと思う。」
パラヤの泣きそうな声に胸が詰まる。
「この場所じゃ、情報が足りないな。ポイントは、第四層がいつどこで誰に発見されたかだ。明日また、この場所に来れるか?」
「また白脈の許可を取りに来てくれたら、同行できる。単独行動は許されないんだ。管理が厳しくてね。」
「わかった。情報が整理出来たら、声をかけにいくよ。」
「よろしくね。それじゃ、私は戻るね。何か目を付けられても困るから。もうすでに付けられちゃってるかもしれないけど......」
「それは勘弁してくれ、無理だけはするなよ?」
わかってるよ、と言いながらパラヤは監督官事務所に戻っていった。
「死んだと思ったな。」
パラヤを見送ったあと、テオが笑う。
「冗談じゃないですよ......」
「何はともあれ、結果オーライだ。想像以上にパラヤから得る情報は大きいぞ。」
その通りだ。
僕たちは当時のシャルを一番知る作業員だけでなく、図らずも監督官の知り合いができたことになる。
これで一気に道が開けるかもしれないという期待が、疲労にまみれた心を照らしていた。




