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巨骸山脈  作者: 蔦本望
第五章 研修生
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26. 再会

待ちに待った瞬間だった。

テオが忘れてなくてよかったと、心から安堵する。

僕はぐっとテオを見る。

「まずはじめに注意点だ。例の情報のやり取りはどこで聞かれてるかわからないから、必ず白脈の中で行うように。もし情報のやり取りをしたくなったら、分脈盤の調整をしたから見てほしい、と声をかけてくれ。」

僕が頷くと、テオはカバンの中から資料を取り出して僕に手渡す。

「この暗さじゃ読みにくいかもしれないが、とりあえず読みながら聞いてほしい。」

唾をごくりと飲み込んでから、僕はゆっくりと表紙をめくった。


「まず、シャルが第八採掘区に来てからいなくなるまで約一年間。その間の足取りを掴みたくて公式記録を調べたが、残念ながらどこにもシャルの名前はなかったよ。俺が取得できるのは、研究データだけだから当然っちゃ当然だけどな。」

「どこの班に所属していたとかはわからないんですか?」

「そういうのは監督官じゃないとわからないな。あいつら守秘義務とかで全然情報を開示してくれないんだ。だから、手掛かりはシャルからの手紙しかないのが現状だ。」

テオの情報と照らし合わせるために、僕は兄さんの手紙を書き写したノートをカバンから取り出した。

「手紙からわかることは二つ。一つは年の近い仲のいい作業員がいたこと。もう一つは、調査団に所属していた可能性が高いことだ。」

「調査団って特別なんですか?あと、なんで調査団にいたとわかるんですか?」

「調査をする、と手紙に書いてあるだろ?調査をするのはただの採掘班じゃなくて、調査団と呼ばれる俺たち研究員が自分たちの研究のために組織する班になるんだ。調査団は簡単には入れない。シャルはかなりいい腕だったんだと思う。」

兄さんが優秀だったと聞いて嬉しくなる。

「だから、俺は二つの方向から情報を収集した。一つは仲のいい作業員を探すこと。もう一つは最後に所属していた調査団の研究員を探すこと。前者は残念ながら進展がないが、後者はかなり絞り込めてきた。」

僕は指定された通りのページを開く。

「シャルが消えた前後の時期に調査データを公開している第八採掘区の研究員の中から、最後の手紙にあった新発見と呼べる程の功績を挙げているのは四人だ。サント、マニス、スザム、ハット。それぞれの研究データを調べたが、ハットだけはある時期を境に研究データが途絶している。研究員仲間に聞いたが、第八採掘区で調査中に行方不明になったそうだ。」

ハッとしてテオの目を見る。

「おそらく、シャルと一緒に行方不明になった可能性がある。時期からしてそう考えるのが自然だ。調査データの中に、サント、マニス、ハットの三人の共同研究がある。第三層の採掘に関する有名なものだが、少なくとも、サントとマニスは当時のことを知っていると思うんだ。」

「まだ、第八採掘区に二人はいるんですか?」

「いや、調べたが何年か前に二人とも別の研究機関に異動してる。手紙を出したんだが、返事はまだない。」

連絡が取れれば、当時の状況がわかるかもしれない。

「スザムには連絡を取っていないんですか?」

「取ろうとしたんだが、いま何をしているかわからなくてな。手掛かりがない。サントかマニスが知っていればいいんだが......」

研究者間ですら去就がわからないとは、かなり厳しく情報が統制されているんだろう。

「それじゃ、まずはサントとマニスですね。」

「そう。まずはそこだ。あとは当時の作業員探しだな。」

先ほどテオが言っていた前者だ。

「自分の調査団への勧誘と称しては、シャルと歳が近い作業員と話をしてるんだが......まったくだめだ。もうすでに第八採掘区から出たのか、それとも一緒に消えてしまったのか。」

「消えた作業員は兄さんだけじゃないってことですか?」

「それはわからない。俺たちは組織情報を見れないからな。」

やはり、情報が少なすぎる。

せめて誰が消えたのかさえわかれば、かなり進展すると思うのだが。

ポイントは監督官の持つ組織情報かもしれない。

「監督官を仲間にすることはできないですかね?」

「無理だろうな。あいつらは政府から派遣されてる、まさに番人だ。こちらに引き入れようとしたら、すぐに通報されて終わりだな。」


情報を整理すればするほど、頼みの綱がサントとマニスしかないという現状が浮き彫りになる。

細い糸を手繰り寄せるように、慎重に進めなければいけないのは頭では理解しているが、なかなかにもどかしい。

どうにかして監督官を仲間にできればと考えるが、僕の頭ではなかなかいいアイデアが思い浮かばない。

残された三カ月をどのように使うべきか、改めて考える必要がある。

何もできない自分に少し腹が立った。


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