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巨骸山脈  作者: 蔦本望
第四章 深淵
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23. 影

「化物って......どうなるんですか?」

「僕も自分の目で見たことはないから研究者仲間から聞いた話になるけど、みんな同じ姿になるわけじゃないらしい。毛で体がおおわれたり、牙や角が生えたり、四足歩行になったり、みんな違うらしいんだ。基本的に体は大きくなるみたいだけどね。」

僕が絶句していると、ハットは説明を続ける。

「政府の中でそういうことを研究している機関がいくつかあるって聞いたことがある。といっても、公にされている機関の中にはないから、秘密の機関になるのかもしれないね。こんなこと世間に知れたら大変だろうし......」

「なんで......化物になるんですか......?」

「それはわからない。巨骸には我々が知らない、人体に作用する未知のメカニズムがあるんだと思う。専門の研究者に聞いても、守秘義務とかで詳しくは教えてくれないんだ。ただ、僕が採掘場に来るときに言われたのは、感情がコントロールできなくなってきたり、気性が荒くなったりしたら、すぐに戻ってこい、ってこと。」

たしかに、トマの状態と一致する。

「これ以上先は、本当に調べない方がいいと思う。いわゆる、禁忌に触れるってやつだね。もし調べたいなら、政府の関係者になるか、研究者になるしかないんじゃないかな。この話も当然内緒だよ。」

頭の整理ができないまま、ありがとうございます、と言うことしかできなかった。

そんな僕を見かねたのか、僕もこっそり研究者仲間に探りを入れてみるよ、とハットが僕の肩を叩いた。

気分が深く沈み、周りの音が遠ざかっていった。


その夜、パラヤに情報を共有した。

「......化物になるってヤバいね。思ってたよりも大事かも。」

「そうなんだよね。医務室の反応から考えてあんまり踏み込まない方がいいとは思ってたけど、ここまでとは......」

「......このままだとトマには会えなさそうだね。実験台にされてるってことでしょ?」

「おそらくは......ハットが知り合いに聞いてくれるらしいけど、会うのは無理だと思う。」

「......もうだめかもね。」

パラヤは悲しそうにうつむいてしまった。

トマに会うのは不可能だという現実が胸に重くのしかかる。

それに、いつ自分たちがそちら側になるかもわからない。

言いようのない不安に、心も体も重くなっていった。


気持ちの落ち込みとは裏腹に、調査活動は順調だった。

第三層を採掘してから、僕は何となくどこが採掘できるかがわかるようになっていた。

そして、どのように進めば深層に到達できるか、何となくわかるようになった。

集中して採掘している間は色々と考えなくて済むので、どんどん僕の感覚は鋭くなっていく。

今では白脈だけでなく、第二層も採掘できるようになったが、僕はそれが怖かった。

自分の体が化物に近づいているのかもしれない。

ハットに相談すると、僕にその傾向は今のところないから大丈夫とのことだが、未知の恐怖は拭うことができなかった。

どこからか見られているような気配を感じることも多くなり、そのたびにハットに確認したが、感じているのは僕だけのようだ。

わからない恐怖や迫りくる不安から逃げるように、僕は採掘にのめりこんだ。


今日は「8-685」にやってきた。

いつものように採掘された白脈を進んでいく。

「どうだい?何か気になるところはあるかい?」

「いや、特には......」

「それじゃ、もうちょっと進んでみてから戻ろうか!」

少し進んだ後、何もないことを確認してから地上に戻ろうと歩き始めたとき、例の声が聞こえた気がした。

耳をすまして集中する。

声が聞こえた方に進み、鎌状切削機を装着してから目の前の壁に刃を突き立てる。

「ちょっとここ掘ってみます。」

ハットに一声かけてから一心不乱に採掘を続けていると、白い壁が現れた。

白脈だ。

第二層の壁のすぐ向こうに別の白脈があった。

「すごい!!新たな道の発見だ!!」

ハットが大喜びをしているが、僕はそのまま掘り続けた。

何かがこの先にある気がしたからだ。


何時間掘っただろうか。

ハットがもう休憩しようと声をかけてくるが、僕は手を止めなかった。

この先に、何かある気がする。

もしかしたら自分の不安を解消してくれる何かがあるかもしれないという期待が、僕を突き動かしていた。

急に刃先が軽くなる。

どうやら掘りきって向こう側に抜けてしまったらしい。

「奥に空洞があるみたいです。」

「なんだって!!崩れるかもしれないから気を付けてくれよ!」

僕はうなずいてから、人が通れるだけの大きさの道を作り、空洞に足を一歩踏み出した。

空洞は思ったよりも広く、僕の部屋と同じくらいあるかもしれない。

ハットが後から入ってきて、暗いからと持ってきた照明を点ける。

照らされた空洞の壁には、鮮やかな緑が美しく輝いていた。


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