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巨骸山脈  作者: 蔦本望
第四章 深淵
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20. 閃き

第三層の採掘を始めてから、一ヶ月が過ぎた。

最初は楽しそうにしていたサントとマニスも、次第に顔が曇っていった。

ハットだけはずっと楽しそうにしているが、チームの雰囲気はよくない。

現状を打破しようと、今日は採掘をやめてハットの研究室で会議をすることになった。


「手詰まりだな。」

しかめ面でサントが吐き捨てた。

「まだ手がありそうな気がするんですけどねぇ......」

ハットは腕を組みながら上を向いている。

「試せるものは試しただろう。問題はまったく反応がないことだ。何かしら反応があれば対策の立てようもあるが......何をしようと何も反応がない。」

「アプローチが間違ってるってことですか?」

マニスが机に肘を付きながらため息まじりに発言する。

「今のままじゃダメだろうな。既存の方法論では何も反応がないのだから、まったく新しい道を探すしかない。アイデア勝負ということだ。」

「何が当たるかわからない......ワクワクしますね!」

ハットの呑気な発言に二つの大きなため息がこだまする。

「仮説が立てられなきゃ、実験できないだろ.....当てずっぽうなんて......」

マニスが遠くを見ながら何かをつぶやいたが、小さくて聞こえなかった。


「どうしようかねぇ......」

二人が帰ったあと、ぼーっとした様子でハットがつぶやく。

「シャルは何かアイデア、ある?」

「あるにはありますけど......」

「え!聞かせてよ!なんで言わないの!」

ハットがいきなり立ち上がってこちらに近づいてくる。

「専門家じゃないので......笑わないでくださいね。」

「もちろん!笑うわけないじゃないか!どんなアイデアなんだい?」

絶対に笑うだろうと思ったが、諦めて話し始めた。


「以前、僕が第三層に弾力があるって言ったことを覚えてますか?」

「もちろん覚えているとも!それがどうかしたのかい?」

「それが何かに使えないか、考えてたんです。そうしたら、跳腱片の話を思い出して......」

「酸素濃度とか測るやつだね!」

「そうです。もし仮にですけど、第三層に弾力があるとしたら......跳腱片と同じように、酸素濃度によって硬さが変わるんじゃないかと......」

ハットの目が見開かれていく。

「いや、でも、弾力があるかどうかは僕の感覚なんで、そもそもが間違っている可能性もあるんですけど......」

「素晴らしい着眼点だ!!たしかに、その性質の類似性は確かめていなかった......もしかしたら......ちょっと二人を呼んでくる!」

ハットは勢いよく立ち上がり、部屋を走って出ていった。

しかし、すぐに戻ってきて、早く早く、と僕を促す。

留守番しようと思っていたが、諦めて一緒に部屋を出た。


反応は両極端だった。

マニスは興味を示すかと思いきや、準備があって忙しいと断られてしまった。

どうやら何かをひらめいたようで、いまは素人の憶測に時間を割いている余裕はない、とのことだ。

僕の考えの優先順位が低いことは仕方のないことだが、どんなアイデアを思いついたのかを教えてくれなかったのは納得がいかなかった。

なんで教えてくれないんだ....とハットもぶつぶつと文句を言っていた。


反対に、サントは興味を示さないと思いきや意外にも乗ってきた。

面白いな、とつぶやいてから、ハットと真剣に議論を始めたかと思うと、僕にも参加するように声をかけてきた。

なんだか認められたような気がして嬉しかった。

僕の意見を求める場面も増えてきたし、もしかしたらサントはいい人なのかもしれない。


議論を繰り返し、機械を試作し、準備を進めていく。

マニスも自分の機械が順調に進んでいるようだが、何をやっているのかはわからない。

図らずも、サント&ハットとマニスで競い合うような形になっていた。

マニスがどんなアイデアで進めているかを共有しないのが主な原因だと思う。

お互いに進捗は共有するが、何をしているかを教えることはなくなっていった。


そんな中、マニスの機械が完成したとのことで、現場に立ち会うことになった。

マニスから念のため、とマスクのようなものを渡される。

見たこともない機械だったが、機械から伸びたホースを第三層にあてがい、全員がマスクをしたことを確認してから、機械のスイッチを押す。

大きな音を出しながら振動とともにホースの先から蒸気のようなものが出ている。

しばらくそのまま放置した後、機械をどけてから、マニス調査団の作業員が掘削を始める。

おそらく強度を弱める何かを噴出する装置だったのだと思う。

しばらく作業をしていたが、どうやらダメだったようだ。

ただ、手ごたえは感じたようで、マニスは改良するぞ、と意気込んで早々に研究室に戻ってしまった。


僕たちも研究室に戻って会議をしていたが、あの方向性ではおそらくダメだろう、というのがサントとハットの見解だった。

2人は少し安心したようで、これで自分たちの作業に集中できる、といった様子で一心不乱に機械の調整や、机上で計算を行っている。

僕は指示された通りに動いているだけだが、何となくうまくいきそうな気がしていた。


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