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巨骸山脈  作者: 蔦本望
第三章 調査
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17. 作戦

僕たちは巨骸の真実を知るために、今後は深層を目指す方針で一致した。

ハットが深層を専門分野にしたのは、未知の領域に踏み入れるためだと言っていた。

さすがに巨骸の真実は研究テーマにできないとのことで、政府の統制がよほど厳しいのだと思う。

今後は僕も安易に人に話すのはやめようと決めた。

研究員はなんと白脈の調査データを見ることができるとのことで、実際に見せてくれた。

調査データにはどの白脈がどこまで伸びていて、どこが採掘できていないのかなど、情報が細かくまとめられている。

僕たちは調査データを頼りに、第三層まで伸びている白脈の横道を探すことにした。

1からどこまで伸びているかわからない白脈を掘るよりも、より深い階層で行き止まりになっている白脈の横道を見つけて掘った方が効率的だと判断したからだ。

横道なし、という調査結果がない白脈を四つほど探し出し、順番に調査することになった。


パラヤとは定期的に情報交換を続けている。

ハットから聞いた情報も共有しているから、僕のことを一番知っているのは、最近はパラヤなのかもしれない。

「......ふーん、楽しそうでいいね。」

「パラヤにも手伝ってほしいんだけど、ハット調査団はもう無理だからなぁ......」

「......大丈夫、実は声かかってる。」

「え!すごいじゃん!いつの間に!」

「......決まったらまた連絡する。」

「楽しみにしてる!」

これでパラヤが調査団に入ってくれたらまた一歩前進だと、僕は上機嫌で部屋に戻った。


方針を決めてから、今日が初めての探索だ。

目当ての白脈までやってきた僕たちは、看板を確認してからゆっくりと白脈の中に入っていった。

ある程度深くまで進んでから、ハットと手分けをして壁を確認していく。

何か気になるものがあれば、ハットに声をかける決まりだ。

壁を確認していると、ほかの場所と色の違う箇所がある。

「ハットさん、これって違いますか?」

「あ~、これは残念ながら、跳腱片ちょうけんへんだね。弾力のある素材で、酸素の濃度で硬さと色が変わるんだ。建造物や機械の衝撃吸収とかに使われてるんだよ。あとは、酸素濃度を調べるのにも使われているんだ、ほら!」

そう言って、ハットは手首にまかれているブレスレットのようなものをこちらに見せてくる。

「これは酸素濃度計なんだ!酸素がなくなってくると、色が青から赤っぽくなってくるんだよ。深くまで進むときは必須になるから覚えておくといいよ。今は紫っぽいからまだ大丈夫だけど、もう少し赤くなったら酸素マスクを付けないとだね。」

「酸素マスクってなんですか?」

「酸素が足りない場所でも行動できるようにするマスクのことさ!」

そう言うと、カバンの中から手のひらサイズの丸いものを取り出した。

「これを口と鼻を覆うように付けるんだ!中には酸素を作る導気晶どうきしょうが入っていて、酸素のないところでも僕たちは行動できる、というわけさ!」

「何層目から必要になるんですか?」

「一般的には第三層を超えてからって言われてるから、まだまだ先だね!早く使いたいよ!」


その後も、気になるものがあればハットに質問していたが、ハットは何を聞いても楽しそうになんでも教えてくれた。

振動を増幅する共震核きょうしんかくや、液体を冷やすことのできる冷纏晶れいてんしょうなど、ほかにもたくさん教えてくれた。

忘れないうちにと、カバンから紙を取り出し簡単にメモを取る。

僕がメモを取っていると、ハットが嬉しそうに見ているので、問題はなさそうだ。

僕は、寝る前に調査内容をノートに記録することが日課になっていた。

最初はトマの情報を整理するために付け始めたものだったが、今はハットとの調査内容を記録するものとなっている。

ハットに教えてもらったことを忘れないようにしたいのももちろんだが、自分の頭の中を整理することにも役立っている。


周りの壁が黒色から灰色になり、しばらく進むと行き止まりになった。

行き止まりの壁は、きれいな紫色に輝いている。

「う~ん、第三層まで来ちゃったか......この白脈はハズレだなぁ......」

「これが、紫筋層ですか?」

「そう!名前の通り、紫色なんだよ!採掘したいけどなぁ、硬いんだよなぁ。」

ハットが軽く手で叩くが、何も音が聞こえない。

「ちょっと採掘してみてもいいですか?」

「もちろん!やってみてよ!」

持ってきた鎌状切削機を装着し、刃を当ててみると、たしかに硬い。

少し力を入れると刃がはじかれるのがわかる。

その後、しばらく格闘していたが、結局削ることはできなかった。

白脈と同じ感覚で削ろうとしても、刃がはじかれてしまうのだ。

「刃が入っていかないですね。もっと切れる刃であれば採掘できそうなんですけど......」

「やっぱりダメかぁ......ちょっとほかの研究室の人にも聞いてみようかなぁ......」

がっくりと肩を落とすハットを見て、申し訳ない気持ちになった。


諦めて外に出ると、もう日が沈みかけていた。

ずっと暗いところにいると、時間感覚がなくなってしまう。

また明日がんばろう!とハットと工場区で別れる頃には、もう周りは真っ暗になっていた。

あの紫色の壁を削れなかった悔しさがまだ手に残っている。

明日こそは、と頭を切り替えて、生活区に向かって歩き出した。


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