多忙の中で
忙しい時に限って問題が起きるのか、問題が起きるから忙しいのか
「騎衛部隊の方ですね。ではあちらのエレベーターで・・・」
「はい・・・予備部隊の方は・・・・」
「はい。騎衛隊広報部です。はい・・・そのことでしたら担当のものにお繋げします。お待ちください・・・はい・・・」
イベント前だからだろうか、いつもより人の出入りも問い合わせも多いような気がする。
つまり、忙しい・・・。他にも業務はあるんだけど・・・。
朝はいつものようにバタバタ家を出てるわ寝ぼけてるわで徐々に頭の回転を取り戻すのが、今日の忙しさではそうもいってられない。
「リィデア君、ちょっといいかな。」
「はい、ゴートンさん。なんでしょう。」
「今度の騎衛部隊主催のイベントのことなんだけど・・・ちょっと人手が足りなくなりそうでねえ・・・。リィデア君は学生だしとは思ったんだけど、現地でイベント当日の受付を手伝ってくれないかな・・・。」
過去にもイベントはあったけれど、私自身はいつも休み・・・というか出勤日にはなっていなくて、それをいいことにターシャさんの店に出ていたから、ゴートンさんからのお願いに少し驚いた。
「・・・可能ですが・・・・私なんかで大丈夫ですかね・・・?」
「そこに関しては心配していないよ。いつもお世話になっているからね。むしろ助かるくらいだよ。」
「いえ、ありがとうございます・・・?」
「当日は広報部の他の事務員もいるし、なにか困ったことがあっても大丈夫だよ。よろしくお願いするね。」
「はい。かしこまりました・・・・」
騎衛部隊主催のイベントか・・・一度は行っておくべきだったかもね・・・。大丈夫かな・・・・。
・・・っと受付に人が、行かなきゃ。
「こんにちは。・・・はい・・・ではあちらに進んでもらって・・・」
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・・・疲れた・・・。
結局ずっと忙しいのは変わらず、時間だから帰りなってゴートンさんに言われて出てきたけど、まだ皆残ってるんだよね・・・なんとも・・・。
・・・でも今日頑張ったし、お菓子くらい買って帰ってもいいかな・・・。
そう思って踵を返そうと振り返った矢先。
「お、リィデアじゃん」
「今日はアインさんと一緒じゃないんだ」
・・・ええ・・・ツイてない日だな・・・・。
「・・・どうも。」
相変わらず再試を受けた帰り・・・なのかな?再試終わりにごはんでも食べにいっていたんだろうか。いつも一緒にいるしな・・・私とアインより一緒にいると思うんだけど。
彼らは以前私に文句を言い、アインに咎められてから何かしてくることはなかったんだけど・・・結局目の敵にされてるのは変わらなかったみたいだ・・・。いやアインに言われる前にもちょこちょこちょっかいというか邪魔されることはあったんだけどね・・・。なにがしたいんだ・・・・。
・・・名前覚えてたのか。
「・・・別にいつもアインと一緒にいるわけじゃないんだけど。」
あー・・・。言ってしまった。もう早く帰ろう・・・。
「へえ」
「じゃあ俺らと一緒にいるのも何も問題ないよね?」
「は・・・・?」
ちょっとこれはよろしくない気がする。
今いる通りはいつも家から騎衛隊本部への往復で使う道ではあるが、人通りも多くなく、夜になると街灯も少なく暗い。この通りの方が少し近道で、朝いつも時間ぎりぎりになる自分にとっては人通りが少なくて走りやすく丁度よい。そして夜は早く家に帰りたいという理由で、気づいたら往復でこの道を通っているのだった。
・・・しまった・・・
とはいえちょっと角を曲がれば人通りの多い道に出られるわけだから、なんとか走っていけば・・・。
「何、なんか文句あるわけ?」
「一回君とは話すべきだと思ってたんだ」
・・・何が??
ただ走って逃げるだけじゃどうにもならなそうな雰囲気に、迷いが生じる。
でもなあ・・・。いや・・・。
「うら若き乙女に男子2人で何をしようっていうの?」
知ってる声・・・・?
「・・・おい。」
横から引っ張られる。
「ミカの勘は伊達じゃないですねえ」
気づけばミカエラさんが私を引っ掴んで彼らから引き剝がし、彼らのもとにはロイさんとルイさんがいる。
「なぜこんな暗い道を歩く、危ないだろう」
「近道・・・なので・・・・」
「あのなあ・・・」
ミカエラさん、怒ってるな・・・その・・・・。
「で、君たちは彼女をどうするつもりだったんだ?友達?」
「ロイ、明らかにそんなんじゃないだろ・・・」
ロイさんとルイさんはなんだかんだいつも通りかもしれない。・・・そういうことじゃなくて。
「あいつは学校の同級生だ」
「彼女とはこれからごはんにいこうと思って・・・」
「らしいぞ、そうなのか?」
ロイさんが私を見る。・・・同級生なのは確かなんだけど・・・。困ってミカエラさんを見る。
「・・・行くぞ」
ミカエラさんに手を引かれる。察し良・・・。
―――――――――――――――――――――――――
「違うみたいですねえ、予備隊を呼びましょうか」
「てかルイ、俺らが連行しても良くないか?」
「そういうわけにもいかないんですよ」
「・・・っクソ」
「・・・」
「あーっ!おい!!」
「行ってしまいましたか」
「行ってしまいましたかっておい!」
「とりあえずミカエラのところにでも行きますかね」
走り去る2人を見て、ルイは考えていた。
・・・どうも最近きな臭い、そして、リィデア・マレイと名乗る彼女・・・。
「ロイ」
「お・・・おう、なんだ」
「・・・気を付けた方がいいな」
「・・・そうだな」
短いやり取りをして、互いにミカエラのもとへ向かう。
(リィデア・マレイ・・・。)
マレンディアナの出身だという彼女のことを、ルイは考えていた。
現実の忙しさで更新がちょっと遅くなる見込みです、なんとも・・・。