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働き者リィちゃん

訓練おばけ


 「ターシャさんおはようございます~!」


 「おはよう~!学校帰り~?」


 「はい!」


 午後の授業も終え、アインと別れターシャさんの店に出る。


 「先輩!おはようございます!」


 「おはよう!今日レミナちゃんとなのね、お願いします」


 今日は連休前だし常連さん達の予約もあったりなんたりで忙しいだろうからって私の他にもう一人アルバイトの子がいます。ありがたや。他にもアルバイトの子は数人いるけど、今日は同じ学校の後輩ちゃんだったみたい。

 ターシャさんの店は人手不足なこともあるけど、店自体の大きさ的に・・・特に厨房が狭いことから、ターシャさんと私、みたいに少人数で店を回すことが多い。猫の手も借りたいくらい忙しい時も多いんだけど・・・まあそういう時もあるよね。


―――――――――――――――――――――――――


 「リィちゃん~これお客さんにもってってくれる~?」


 「はい!」


 「お姉さんすみません~~!」


 「はーい!先輩私行きます!」


 「レミナちゃんありがと~!」


 今日も店は忙しい。


 この店はわかりやすい立地にあるわけではないが、ターシャさんが始めてから20年ほど経っており、この店を気に入った人が常連さんになって、その常連さんが人を連れてきて・・・その人たちが常連さんになって・・・そのまた常連さんが・・・というように知る人ぞ知る店として、このあたりの地域で愛されている。これはターシャさんの人柄が大きいだろうな。

 私も地元を離れターシャさんのもとで働くようになってから、どれだけ支えられたかわからない。ターシャさんと私は祖母と孫くらい年が離れてるなんてターシャさんはいうけど、私はターシャさんのことをもう一人の母親だと思っている。




 「こんばんは~」


 チリンチリーン、と来客をつげるベルが鳴った。ターシャさんが店のカウンター越しに出迎える。

 

 「予約していたゼオバルドだ。よろしく頼む。」


 「ゼオバルド様・・・4名様ですね。リィちゃん、案内よろしくね~」


 「はーい!こちらへどうぞ~!」


 いつも通りお客さんを案内するためお客さんに顔を出し・・・た時だった。


 「君は広報部の子じゃないか!!」


 「え。部隊長さん・・・!???」


 驚いたのはそれだけではなかった。


 (ミカエラさんもいる・・・!!!???)


 先日受付で対応した騎衛部隊の騎兵第一班のミカエラさんもそこにいた。

 そのときの動揺が悟られていないといいなと思いつつ、部隊長さんが店に来たのに驚いた、その(てい)でいこうと決めた。

 部隊長さんは騎衛隊でもたまに会うし、ゴートンさんとも仲が良くて私もたまに会話に混ぜてくれる。何も自分の反応に変なところはないはずだ。


 「リィちゃん、お知り合いの方?」


 ターシャさんが少しびっくりしている。そりゃそうだ、日々鍛えているであろう人が4人も来て、その中に私の知り合いがいるという。どこで知り合ったのか、いち学生である私との接点は考えられないだろう。


 「その・・・事務のバイト・・・の・・・。」


 どこまで言って大丈夫なのか。騎衛隊の・・・その・・・・


 「彼女は騎衛隊の広報部で受付をやってくれていてね。いつもお世話になっているよ。」


 えっと・・・・・。


 「ああそうなんですか、いつもリィちゃんにはお世話になっております。よく働いてくれてねぇほんと。」


 「ははは、広報部でも彼女は働き者だと事務長が言っていてね、こちらとしてもありがたいと思っているんだ。」


 「ささ、こちらの席にどうぞ」


 結局ターシャさんが案内しちゃった。


 「ここは役所が近いし役所の方がよく来るんだけどねえ、騎衛隊の方がいらっしゃるのは久しぶりですねぇ。」


 「そうですか、ここは騎衛隊を退職した私の先輩のロナウドさんから聞いてですねえ、いつもカウンターに大酒飲みの坊主の人間がいませんか」


 それって・・・


 『本当によく働くねえ~~、ほんじゃ俺ももう一杯もらおうかな~~』

 『あんたはただ飲みたいだけでしょうが~~、、、リィちゃんおかわり入れてきてあげて~』


 いつも何かと理由をつけて大量にお酒を飲む、あの常連さんだったってこと・・・?

 あの人、元騎衛隊だったの??・・・あと、ロナウドって名前だったんだ・・・・。


 「あの人騎衛隊だった人なんですか、とにかくお酒を飲む常連さんだと思っててねぇ・・・」


 「そうでしょうそうでしょう。先の戦争の功績によるボーナスと退職金でそれはそれは自由に過ごしているって言っててねえ。先の戦争もいつでもなんでもどこかしらから酒を取り出して飲んでてねえ・・・とんでもない人ですよ、ははは」


 とんでもない人だな・・・と色んな意味で思うとともに、ゼオバルドさんと共に来ていた部下であろう人が「ロナウドさんって・・・あの・・!??」だのなんだの驚きと緊張でよくわからなくなっている。え、そんなにすごい人・・・ですよね。


 ミカエラさんは・・・というと、入店からずっと視線というか圧を感じるような気がしてちょっと怖い。私なんかちょっとしたタイミングでグラスやらお皿やら割ってしまいそう。あの、皆さん楽しく飲んで下さいね・・・。




―――――――――――――――――――――――――


 「ミカエラ、今度飲みに行かないか?お前の同期2人が飲みに連れてってくれと言っててね・・・よかったら来てくれないかと思って。」


 「私が飲みの誘いに乗ったことってほとんどないですよね。」


 訓練後、ゼオバルド部隊長から飲みに誘われ、何度目だよ・・・とミカエラは思った。

 酒が飲める年になってから幾度か部隊長に飲みに誘われているが、その誘いに乗ったのはかれこれ片手で数えるくらいしかない。


 「この訓練おばけめ~~。たまにはいいじゃないか。」


 「訓練おばけって・・・訓練しておかないとついていけないんですよ。これでも必死なんですからね。」


 剣の才を買われて騎衛隊に入隊し、騎士を叙勲され、そして騎兵最高峰の第一班に所属することもできた。しかし、所属し続けるためには他の第一班の隊員と張り合えることはもちろんのこと、下の班から上がってくる隊員よりも強くあり続けなくてはならない。


 「ちょうど俺の先輩が良い店があるって言っててね、そこにいきたいんだけど、どうもそこの店員が働き者らしいんだ。おかげで酒が進むだのなんだのって言ってたよ。」


 それはおいといて、と部隊長の顔が何か含みを持ったようなものになった。


 「ミカエラ、()()()()んだって?」


 「それは・・・・!!」


 部隊長には報告していたが、つまりそれは・・・・


 「どうだ、一緒に飲みに行かないか?」


 「・・・わかりました。行きましょう。」


 ・・・いや、そんな勝ち誇ったような顔をされても・・・。


 「お前の同期も喜ぶさ、んじゃ当日よろしく。」


 「はい・・・。」


 ・・・今日はもう少し訓練していった方がよさそうだな。

もうちょっと続くかもしれません

若干の修正を行いました(難しい)

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