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リィと親友

学生リィの3年間


 「リィ、おはよう~」


 「あ!アインおはよう!」


 「今日ちょっと早くない?」


 「なんか今日はちょっと早めに起きたんだ~!おかげでいつもみたいに学校まで走らずゆっくり歩いてこれたよ~!」


 「はぁ・・いつもぎりぎり過ぎるんだよね。まあよかったよかった」


 今日は学校に行く日。とはいえ騎衛隊に行くときよりは少しだけ遅い時間まで寝られるため、学校に行く日は少し体が楽な気がする。

 彼女は入学当初、席が近かったことから話すようになった。そこでお互い地元を離れ一人暮らしかつ家も近いことがわかったことなどもあり仲良くなり、学校では基本的に一緒にいる。


 

 私はこの学校に通うために実家を出て地元を離れた。

 この学校は4年制で、1年が前期と後期に分けられている。今は3年目の後期の終わりごろにあたる。


 私の場合はここで主に人のこころの(ことわり)、例えば成長過程における変化やその性格特性、また人の記憶の特性や五感から得られる情報による感覚の特性など、様々なことについて学んでいる。他にも医学について学んでいる人たちや、それを支えるためにどうするべきか学んでいる人たち、薬学について学ぶ人たちなど、様々な分野をこの学校では学ぶことができる。

 このような学校は高等教育学校と呼ばれる。こういった高等教育学校に行くには各地域に存在する12年間の義務教育学校に通ったうえで入学試験に合格しなければならないが、義務教育学校を卒業してすぐに職に就く人々が半数以上であるため、高等教育学校自体は国内でもある程度栄えた地域にしか存在しない。さらに高等教育学校によって学ぶことのできる分野が異なり、私の場合は地元のあたりに高等教育学校がなかったことはもちろんだが、人のこころについて学ぶことができる高等教育学校を探した結果、地元からかなり離れたこの国の中心都市まで来ることになった。


 まあそれを狙ったところはあるんだけどね。


 実家に、地元にいてもろくでもない大人になるような気がしてならなかったし、まあ・・・そうだよね。


 アインは授業全体の成績がいつも良いし私もたまに教えて(助けて)もらうことがある。

 彼女と出会って3年近く経つわけだが、彼女が友人ってかなり恵まれていると思う。


―――――――――――――――――――――――――


 「リィ、お昼なんだけど、ちょっと先生のとこにいかなきゃだから先お昼食べてて~!!」


 「わかった~~!」


 午前の授業が終わり・・・といっても3年目にもなると授業が少なくなってくるので今日はお昼前の授業の一つと午後の授業が一つあるだけなんだけど・・・、お昼休みもいつもアインと過ごしているから、今日は少し一人で過ごすことになるみたいだ。まあアイン優秀だし。・・・・なんでいつも私といてくれるのかいよいよわかんない気持ちにもなるな・・・。

 お昼ご飯はいつも午前の授業を受けた教室でアインと一緒に食べているから、アインが帰ってくるまで待ってても別にいいんだけど・・・。アインが先に食べててというなら先に食べるか・・・。お昼ご飯を食べたらアインと一緒に食べようと思っていたお菓子があるから、それを一緒に食べようかな。


 「てか試験範囲聞いたか~?俺ちょっと厳しいかも~、単位落としそ~~」

 「わかる、俺もちょっと自信ないわ~」

 

 先ほどまで一緒の授業を受けていただろう男子たちが話している。

 学期末には試験がある。1年目や2年目と比べると試験の数は少ないものの、年を経るごとに内容がより難しくなっているため、1つの試験を乗り越えるのがかなり大変になってきている感覚はある。自分も今度の試験のためにもうちょっと頑張らないと危ういと・・・思う・・・。


 え、さっきの男子たちと目が合ってしまった。ええ、なんかこっち来たし、えぇ・・・・。


 「まあ君はアインさんがいるから今回の試験も余裕だろ?いつも授業が始まるぎりぎりに教室に滑り込んでるし、あー今日は珍しく違ったんだっけ?」

 「いつもアインさんに教えてって泣きついてるよな、うらやましいね、アインさんがいなかったらどうなっていたことやら」


 嘘じゃん、仮にも人のこころについて学ぶ人たちがそういう話し方するもんなの・・・?


 「あはは・・・その通りかもね・・・・。アインには頭が上がらないよ・・・・」


 「やっぱ君もそう思ってるんだ、へぇ、こんなのがアインさんと一緒にいるってどうなの」

 「3年間もよくそれでやってこられたよね、4年目はどうするの?さすがに卒業研究はアインさんに助けてもらうわけにはいかないってのにさ」


 何が彼らを突き動かして私の心をちぎろうとしてくるんだろう、3年間何を学んできたんだ・・・??

 アインにたくさん助けてもらったことは事実だけど、一度理解したことはある程度覚えていられるし、彼らのように人の心に負の干渉をしかねない発言がもたらす影響なんて・・・わかりきってるのに・・・、いや、わかってるからこうやって攻撃してる・・・??そんな使い方なんて・・・。


 「何、リィになんか恨みでもあるわけ?」


 「アイン・・・。」

 

 気づいたら私の横にアインがいた。いつ・・・どこからどこまで聞いたんだろう。


 「い、いや、ただアインさんにとってこいつの存在は良くないだろうと思って・・・」

 「こいつはアインさんのいるところにどこまでもついてきますよ、たいして何もできないくせに」


 わ・・・アインを前にしてもなおその姿勢なんだ・・・消えたくなるな・・・。


 「リィには勉強を教えることもあるけど、教えるからより自分の理解が深まることもあるし、ありがたいと思ってるよ。そもそもリィは基本的に一人で勉強できるし、一回理解したら忘れないんだよね。・・・どこかのいつも再試くらってる人と比べてね」


 「なっ・・・・」

 「それは・・・」


 確かに1年目と2年目、そして3年目の前期も。同じ授業の時は先生から再試だと言われている人たちのなかに彼らがいたような・・・気もする・・・。そういうの、あまり見たり聞いたりするもんじゃないと思って気にしてなかったけど・・・。


 「私リィのこと面倒だとか嫌だとか思ったことないから。くだらない足の引っ張り合いをするくらいだったらさっさとどっかいってくれる?」


 「チッ・・・。」

 「・・・行くぞ。」


 彼らどっか行っちゃった・・・びっくりしたな・・・。


 「・・・リィ、大丈夫?」

 アインが顔をのぞきこんでくる。

 「アイン・・・大丈夫、ありがとね・・・」

 ・・・でも。

 「ごめん・・・アインにあんなこと言わせちゃった・・・。彼らに何されるか・・・。」

 私は彼らに何をされようと、たぶん大丈夫・・・だってそうやって育ってきたから。というかただああやって言葉で攻撃してくるようなのだけだったら何も問題はないけど・・・人としては問題か。・・・何の話?


 「ははっ」

 ・・・えっと、アインはなんで笑って?


 「学校生活も含めて3年間リィと一緒に頑張ってきたのに、あんな言い方されてるのに腹が立ってきちゃって、ちょっと強く言っちゃった!、人のこころについて学ぶ人間として失格かな?」

 

 「アイン・・・」


 「もーーやめやめ!結局リィもお昼まだじゃん!早く食べよ?」


 「アイン・・・。・・・あー、今日はアインと食べようと思ってお菓子持ってきたんだ・・・。」


 「やった!ありがとうリィ!さ、いただきます!」


 ・・・アインは本当に、私にはもったいない友人だな・・・。

おやつとかデザート、午後眠くなるのわかっててもあるとちょっとうれしいです。

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