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衝撃


「ご迷惑をおかけし申し訳ありません。みなさんお揃いでありがとうございます。」


 病室にて。彼女はベッドから上体を起こした状態で自分達を迎えた。


「まだ寝ているべきではないか?無理をしないでくれ」


「ゴートンさん・・・大丈夫ですよ。このくらいの怪我、家での訓練では日常茶飯事ですから。お気遣いありがとうございます。」


「はぁ・・・普通娘にそんなになるまでやらせるかね・・・、まあそんな気もするが・・・」


「マレディア家は血も涙もない、と。」

「ルイ、流石にそれは失礼すぎないか?」

「ロイ、私はこの現状に少々苛立っていますからね、特にそこの木偶の坊に」

「もはやただの八つ当たりじゃねぇかよ・・・」


「・・・。」


 ルイの苛立ちはもっともだ。たとえ彼女がこのような怪我をよくしていたとしていても、一刻を争う事態であったことは確かだし、しかも危害を加えたのが自分のような身内の人間だったというのもあるだろう。


「ふふ・・・ルイさんがそんな感じになるの珍しいですね、ロイさんも」


「な、君ねぇ・・・」

「ルイがおかしいだけだよ、僕はいつも通りだよ?流石にリィデアちゃんが心配だけどね〜」


「まぁルイ、そのくらいにしておきなさい。怪我人は早く休むべきだ、本題に入ろう。我々がいないとできない話というのは何なんだね」


「・・・すみません。ありがとうございます。まず・・・今回の怪我は本当に大丈夫です。・・・むしろミカエラさんには申し訳ないことをしたと思っています。ああでもしないと私たち3人・・・いえあの2人がどうなるのか心配だったので・・・あの2人はまだ()()()()にいますか?」


「そうだな・・・騎衛隊にて預かっている。まだ取り調べを受けているか何かしているだろう。事件が起きた場所が場所だけに厳重に扱われているはずだ。」

「厳重も厳重に、何もない無機質な部屋に通されているんじゃないかなあ、手足を縛って、猿轡して〜っといけない、冗談冗談、自害できないようにはしてあるだろうけどね」

「ロイ」

「あはは、リィデアちゃんが無事だったから安心しちゃって、ごめんね?」


「いえ。あの2人は全てなんとかなるまでそれこそ厳重に守ってあげてください。それから・・・ここからが皆さんをお呼びした理由でもあります。時間がありません。彼らの家はもはや隣国のために動くことを強制されています。あの2人が私を連れ去る、もしくは殺すことに失敗したということはもちろん、何の間違いかで2人のうちどちらかが隣国のことなどを漏らしたとバレると彼らの家族は隣国によって亡きものにされてしまいます。」


「それが君がミカエラに斬られた理由かね」


「そう・・・ですね。あの2人についていくのは何の問題の解決にもならないですし・・・ましてや死ぬのも。何とかしてこの機会を利用してあの2人を止める必要がありました。とは言っても覚悟を決めたつもりなのにぐずぐずしてしまって。そこにミカエラさんもルイさんとロイさんが視界の端に映って。・・・とはいえちょっと深く斬られてしまいましたね、加減ができずごめんなさい。ミカエラさんのせいじゃないんです、本当に」


「リィデア・・・」


「ははは、さすがマレディア家の人間だな、本当に父親のあいつに似てきたなあこれは。ミカエラ君、してやられたな、すべて彼女の計算だ、気に病むのを止めるこったな」


「そう、言われても・・・」


「これが私にできる最善なんです。・・・その、これからのことについてなのですが、まずはあの2人の家族を保護すること、そして彼らの後ろにいる隣国の人間を捕まえなければなりません。これらを皆さんにお願いするしかないと思っています。」


「なるほど。それで君はその隣国の奴の大体の目星なんかはついているのだろうか」


「私の家は海に面していて交易が盛んです。もちろん隣国との関わりもあるのですが、今回捕まえてほしい人間はその隣国の人間で、自国の人間に対してもですが、この国の人間を使って人身売買を行なっている組織です。先日父と兄がその拠点の一つを叩いて捕まっていた人々を保護し、国に帰すことができたのですが、当たり前ですが組織の幹部らから恨みを買ってしまったようで、手始めとして1人でのらりくらりと生きている私に矛先が向いているようです。」


 病室が静まる。彼女は他人の心配をするより自分の心配をするべきではなかろうか。


「以前・・・あいつにリィデア君を頼むなんて言われたから珍しいなとは思ったが・・・それでよく無事だったな・・・というか家を出てから今日までずっと君は危険な状況に晒されていたのではないか?」


「それは・・・そう・・・ですね。そこをあの2人が止めてくれていた、とでもいうのでしょうか。家を出てからの3年間、刺客と遭遇することはあって逃げたとして、同じ刺客と遭遇することはなかったんです。私が始末した訳でもないのに、です。」


「そうか・・・」


「だから、彼らとその家族をなんとか隣国の組織から救ってください、お願いします。」


「わかった。ルイ、ロイ、行くぞ。・・・ミカエラ、お前はここで留守番だ。まあ謹慎処分だとでも思っておけ、形式上必要だからな、例外も例外だが。それと、次は彼女に傷一つつけるなよ」


「はい、ゼオバルド部隊長」


「・・・私は戻るよ。イベントの後始末やらなんやらがあるからね。レティ含め広報部の皆も君のことを心配していた。時々様子を見に来るが、全てが落ち着いたら皆に声をかけてやってくれ、よろしく頼むよ」


「ありがとうございます、ゴートンさん」


―――――――――――――――――――――――――


 それぞれがそれぞれの役割を果たすために帰り、病室に沈黙が流れる。

 いくら彼女が平気だと言っても、頭が真っ白になってしまう。それもそのはず、彼女を斬った時の衝撃が鮮烈に記憶に焼き付いている。


「・・・ミカエラさん、ごめんなさい」


「君が謝る必要など・・・」


「・・・あの時、ミカエラさんが来てくれて、本当に嬉しかったです。本当に、安心しました。」


「リィデア・・・」


「それと、演習、本当に素敵でした。見惚れていたらいつの間にか終わっていて・・・。ちょっぴり悔しいのでまた見せてくれますか?」


「・・・。」


「ミカエラさん?」


「・・・君が、無事で良かった・・・本当に・・・っ!」


 ぼやける視界の中彼女を見れば、彼女は自分が心配だとでもいうように眉尻を下げ、両腕を自分に向かって広げている。

 自分はおぼつかない足取りで彼女の元へ向かい、そして彼女の傷に障らないよう、できる限り優しく彼女に触れる。


「ミカエラさん、泣きすぎです、」


「誰の、せいだ、と・・・!」


「本当にすみません・・・」


 そう言って彼女は自分の両手を取った。何かと彼女の目を見れば。


「ミカエラさん、大好きです」


 

 先ほどとは全く違う意味で、頭が真っ白になってしまった。

 涙はまだ止まらない。




必死に生きていたら更新がここまで遅くなりました・・・

今後もなんとか食らいついていくつもりなので忘れないでください・・・

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